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「おはよう、梨花ちゃん」「おはよう……謙太」
目覚ましのアラームで2人同時に起きた。美濃里さんが来た日から一週間経つ。
彼女は女で1人で働いているし、私も仕事の日程と謙太がいない時となるとようやく2日後に合わせることができた。謙太が東京出張である。
こうしている間にお金を変なところで使っていないか、一応ある程度のお金を移動したからもし謙太が気づいたら連絡してくるだろう。
あとその間に鷲見さんにさらにグイグイいかれてないかヒヤヒヤしたし、私はできるだけ鷲見さんに会わないよう気をつけた。
「明後日姉ちゃん来るって?」
「うん」
「……仲良くなったんか」
「ずっとさ、第一印象が強くて……でもよく話してみたらもっと話たくなっちゃったの」
とちょっとふんわり言ってみた。謙太は微笑んだ。
「それは良かった。姉ちゃん、シングルで親も頼りたく無いって言うし、ずっと仲良かった清乃ちゃんが嫁行ってしまってから話せる相手がいなかったんだよ。……弟の僕には男だから女の私の気持ちはわからんって。だから清乃ちゃんと年が近い梨花ちゃんと仲良くなれるのはホッとしたよ」
謙太の下の姉の清乃は結婚する時に会ったのだがすごく存在感を消して何も発せず挨拶もまともにしていなかった記憶。
そして疎ましくて厚かましいイメージしかなかった美濃里さん……。こないだのあの表情。もうあの時すぐ話を聞きたかったけど。
この一週間でそつなく過ごしていたつもり。前のときも前の前のときもそつなくこなしていたけどそれはそれで何になっていていくのか分からない。
ちょっと意識して私以外の事を見ていたら山田課長と大城さんがすごく雰囲気も良くなっていて大城さんが少しメイクや服も少し変わっていた。
前のときもきっと変わっていただろうに自分は気付いてなかった。気づいててもおかしくなかったのに。
一応猪狩課長の直属の部下で私の同期の男性社員がいたから鷲見さんの動向も聞いてみたがただこの会社に接点を持とうとしただけでなくちゃんと仕事はしてるし、互いにメリットのある案件のようだというのは少し余裕が出来た時間で確認ができた。
……他にも同僚の時短パートやママさんになった人たちの働く意識が変わってたし、猪狩課長だけでなく他の同僚と入れ替わり立ち替わりランチをしていろんな方面から話を聞くようにした。
するとやはり猪狩課長は略奪婚という一方的なうわさが回っていたことは前と同じだったが中にはそうでないことを知っていて鈴原専務の横暴さや女癖の悪さを知っている人もいた。
しかし鷲見さんに手を出しているということは誰も言わなかった。多分知らないのだろう。
それらの事実を知らない人たちにシェアすることはやめておいたのだがこのまま知らずに人生を終えて良かったのだろうか、そうでないのだろうか。
いや、反対に知らないままでもいいのかどうか。人生は選択一つで変わってしまうし、知らないことも多いまま進んで終わってしまうのか。こうして何度も繰り返してすべてを知ってしまっているのは贅沢すぎる。
いや、それを最初からできていたらもっとすごいんだろうけどもそれが出来ないから人生は深いのである。
って語ってみた。
今は美濃里さんに会う前にこれからはどうしていくのかしっかり考えなくてはと一人でランチをしている。
仕事も自分の分はちゃんとこなしている。もし謙太が生きたときのルートを考えるとしっかり仕事はしていないといけない。
ミスは許されない。しかも美濃里さんと話すというルートは初めてだからこそ慎重にならなくてはいけない。
また前みたいに謙太が取り乱して自死してしまうことだけは避けなくては。