いつもの待ち合わせ場所に居ない。
でも、これは予測済み。
多分…アイツはまだ学校に居る。しかも…ドコに居るかも分かる…。
私は校舎裏へ行った。
すると、案の定キヨが座り込んでいた。
「はい」
キヨの前にさっき自販機で買ったレモンティーの缶をさしだす。
ビックリしたキヨはいきなり現れた腕の主を見る。
「…伊夜か…サンキュ」
素直に受けとるキヨ。
「おごり。…120円貰うのもなんだし…」
「ノド乾いてた。…でも…俺的にはホットが良かったな…」
「売り切れ。文句あるなら返しなさい」
「いや。飲むよ」
少し微笑んだキヨ。
ガチャッ、プシュッ…
缶をあける私達。
北風がふく。…もうすぐ冬かな…折角、秋になったばかりなのに…
やはりホットが良かったな…と思いながらボーッとしていると、キヨが話はじめた。
「…ココさ、信子と初めて会ったトコロなんだ…なんか懐かしい…」
「知ってる。…信ちゃんから聞いたよ」
「…そっか…」
また沈黙…
相変わらず北風はピューピュー吹く。
今度は私が話はじめた。
「…キヨにとって…信ちゃんはどんな存在?」
「…恋人でないことは確か。でも友達ってのも違う…」
「…信ちゃんの事…好き…?」
「…分からない」
頭を抱えるように顔を伏せるキヨ。
「そういうことを真剣に考えたことが無かった…でも…信子には好きっていう感情は無かったと思う…」
「…そっか…」
また沈黙。
「ならさ…」
私がまた言う。
「私は?恋愛感情、ある?」
一番聞きたいこと。
するとキヨは、ある意味予想どおりの答えを言った。
「…わかんねぇ…」
…だろうと思ったよ。
「なんで分からないの?」
「うーん…うまく言えないけど…」
キヨは困ったように頭をかきながら言う。
「なんか伊夜って、今まで会った女に居ないタイプなんだよ。それに、今まで真面目に好きとか考えた事無いし…恋愛感情ってのが、どういうものか分からない…」
「じゃあ…私と別れたい?まだ1週間過ぎてないけど…」
「いや…それは違うって分かる。多分、ここで別れたらこの先ずっと後悔する…」
「…そっか…良かった…」
「…はっきりしないヤツで悪いな…」
「なんとなく分かってたから良いよ。キヨって、意外と手際悪そう」
「…そうだな…カッコ悪いな…。伊夜は…信子の事…気にしてるのか?」
「さあ…。ビックリはしたけど、それほどじゃないかも」
「そっか…」
日が落ちるのが早い。辺りはもう薄暗い。
「ねぇ、キヨ…」
「うん?」
「あたしたちさ…」
立ち上がる私。
「これでカップルって言えると思う?恋してる訳?」
「さあな…」
キヨも立ち上がる。
「良いんじゃねぇ?俺らみたいなのも、きっと世の中には必要だ」
「…そういうもん?」
キヨを見上げる私。
「おそらく」
ニカッと笑うキヨ。
ま、いっか。こんなカップルでも。
私はキヨの事好きだもん。
うう〜ん…と大きくのびをするキヨ。
小さなあくびが出た私。
「伊夜、帰るか?」
「うん。帰る」
カップルなのか何なのか、結局曖昧に終ったけど…こんなのもアリかな…と思った、秋の放課後。
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