⚠ ご注意ください
首絞め・暴力表現🈶
「オレのこと殺せると思った?…可愛い、オマエがオレのこと殺せるわけねぇのに。」
鼓膜へ直接触れられるように囁かれる。
あまりの苦しさに空気を取り込もうと口をクパクパと金魚の様に小さく開くが、私の反応を楽しむ様にこちらを見つめるイザナくんのキスに塞がれ取り込むどころか、呼吸はますます押し潰されていく。
『…ふ…っ…ぃ…』
唇から感じる嫌悪感と死への恐怖に涙がポロポロと涙が目の横を進み、床へと流れ落ちた。
物理的な圧迫感と精神的な圧迫感にじわりじわりと押し付けられ、息苦しい。
一目惚れだなんて初めて知った。
そんな素振り感じなかったし、ましてやあんな少ない時間で好意を持たれるなんて思ってもみなかった。
でも、だからってここまでするなんて異常だろう。
好きだからと言って何をしてもいいわけじゃない。
そう伝えたいのに息をすることで精一杯な私の脳は上手く働かず、ただただされるがままになってしまう。
「…なぁ、今○○の頭ン中、オレのこと以外考えられねぇだろ?」
やっと唇が離れたと思ったら、イザナくんの甘い声が耳へ吹き込まれる。洗脳のような囁きとあまりの力の差に抵抗できず、グッグッと一定のテンポで力を弱めたり強めたりを繰り返される。そのたびに心臓を締め付けられるような息苦しさが止まらない。
「苦しいよなァ…?…その顔超可愛い、大好きだよ○○」
その声と共にさらに力が強められ、意識は波が引くように小さくなっていく。もう彼が何を言っているのかもわからない。白い火花がパチパチと視界を囲み、周りの景色が霞んでいく。
もうだめだと瞼を閉じ、意識を手放す覚悟が出来たその瞬間。
パッといきなり締め付けられていた手が自身の首から離れ、やっと圧迫感から解放された。
『ゲホッゴホ…ぉぇっ……』
飛び込んできた新鮮な空気をいそいで吸い込み、同時に激しくせき込む。
肺と喉がピリリと痛みに似た感触と痺れるような苦味が通る。そんな自分自身を安心させるように何度か深呼吸をし、神経を鎮める。しばらくしてなんとか普通に息は出来るようになったが、内部から突き上げられるような恐怖が体を支配し、子犬のようにぶるぶると震えてしまう。
そんな私を申し訳なさそうに見やり、
「あぁわりぃ、手本のつもりだったンだけど…」
やりすぎた、と形のいい顔をにこりと歪めてくるイザナくんにすぅーと背筋に冷汗が通る。
私には無理なんだ。
あの歪んだ笑みに痛いほどそう実感し、瞳に絶望が宿る。
自分の無力さと、逃げられないという恐怖に止まっていた涙が途切れなく流れ落ちる。
絶望と恐怖でもう声も出ない。嗚咽も上げず、ロボットの様に静かに涙を流し続ける私をイザナさんが優しく抱きしめてくる。
その瞬間、いつもと同じあの言葉に表せないほどの嫌悪感がどこからか沸きあがってくる。今すぐにでも突き飛ばし彼から離れたいのに、“暴力”でねじ伏せられ、恐怖に支配された私の体はで自分の体でないように動かない。
『……ひ…っ、…ぃ…』
なのに、嫌な考えと涙だけか斜面を滑り落ちるボールのように段々と勢いを増していき、一向に止まらない。もうここから出られないんだ、イザナくんからは離れられないんだ、と止まることを知らない思考が段々と私を悪い方へと進ませていく。
「そんな泣くなよ、目ェもっと腫れンぞ。」
可愛いけどさ、とイザナくんは淡々と言葉を続け逸らしていた視線を無理やり合わせてくる。恐怖が滲み、歪んだ視界にイザナくんの澄んだ瞳とぶつかる。
「…でもまだ逃げられるって思ってたンだな」
その瞬間、一段と低くなった声と怒りと苛立ちを含んだ声に、見えない矢でも突き刺さったかのようにビクリと身体を大きく震わす。
いつもの不気味な笑みも浮かべず、感情の読み取れない無に等しい表情でこちらを見つめるイザナくんにえっと、えっと。と唇を開けたり閉じたりして伝わるような言い訳を探すが、いきなりのことに気が動転し上手く言葉が見つからない。そんな私をイザナくんはよりいっそ強い力で抱きしめる。触れられた部分が氷に当てたられた様に冷たくなりぞわりと鳥肌が浮き出した。
だって、だって仕方がない。
そう、頭の中で必死に言い訳を巡らせる。
こんな暗く不気味なところ、好きで居るわけがない。早く逃げ出したくてたまらない。
だから─
「“母親”になればさァ…」
「…逃げようなんて思わなくなる?」
そう、いきなり私の腹部当たりを、壊れ物を扱いかのように優しく、大切そうに撫で目を細めるイザナくんの言葉に血も凍るような不気味さを覚える。首を絞められた時よりも、初めて殴られたときよりもずっと比べ物にならないほど強い恐怖が襲う。
『…なに、言って』
絞り出すように出した自分の声が想像以上に弱弱しく、それが余計に段々と不安と恐怖の色を濃くしていく。
どうすればいいの、逃げる?いや、無理に決まってる。
「………なーんて、冗談だよ。」
怯えに染まりガタガタと震える私をしばらく面白そうに見つめると、イザナくんはなにも無かったかのような声色でそう告げ、あっさりと私の腹部から手を離した。
狐につままれたような気がする。そのままポカンとする気持ちのまま固まる体を無理やり動かして距離を置き、自分の体を守るように抱き締める。やっと解放されたという少しの安堵感が胸に詰まるが、触れられた腹部や背筋に張りついた冷えはなかなか引かず、底のない穴に落ちていくような暗くて恐ろしい気持ちが拭いきれない。
「…ぜーんぶ冗談。」
そんな私の耳には、イザナくんが最後に呟いた小さい言葉なんて聞こえるわけが無かった。
続きます♡→1000
コメント
2件
やばい好きすぎる(◜¬◝ )