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シスターによって襲撃してきた15人が抹殺され、1人を捕虜にすることが出来ました。ルミを殴った報い、たっぷりと味わってもらいます。
ともあれ、今私はルミと戦利品を漁っているところです。こういった報酬の期待できない仕事では、戦利品を売買することで補填するのが一般的だとか。拳銃、剣、斧等を回収していると、ルミを殴った男性の懐から綺麗な緋色の結晶が出てきました。不思議な感じがして、何より温かいです。
「何だろう?これ」
「シスター、これは珍しいものでしょうか?」
私はシスターに結晶を見せると、彼女は僅かに驚いた表情を作ります。
「それは……珍しいものです。シャーリィ、それは貴女の戦利品としなさい。言い付けを破ったとは言え、戦果には報いがなければいけませんから」
「綺麗ですが、装飾品にあまり関心は持てませんが」
「ただの結晶ではありませんよ。明日、マーサに見せてみなさい。貴女へ相応しい報酬となるでしょう」
「…?はい」
私はシスターの真意を探れませんでしたが、貰えるものは貰っておきます。羨ましそうなルミにドヤ顔を決めて私は作業に戻ります。
翌日、私はシスターに連れられてターラン商会の本店を訪れています。
「はぁい、カテリナ。昨日は散々暴れたんですって?」
「あの程度では暴れ足りませんよ。戦利品の引き取りをお願いします。多少はイロをつけてくれると嬉しいのですが?」
「それは品物次第ね」
マーサさんが自らで迎えてくれて、従業員の皆さんが戦利品の入った袋を持っていきます。幾らになるのかな。そう考えていた私に、マーサさんが視線を向けました。
「シャーリィも頑張ったって聞いたわよ?一人をノしたんですって?」
「股間がお留守でしたので、頭でノックして差し上げただけです。柔らかかったですよ」
「あっはっはっ!やるじゃない。貴女みたいな子供が咄嗟に出きるようなことじゃないわ。」
「ありがとうございます。あっ、マーサさん。此方の鑑定もお願いします。シスターから戦利品として頂いたものです」
私が懐から緋色の水晶を取り出すと、マーサさんは目を見開きます。
「これはっ……過保護ねぇ、カテリナ」
「働きに応じた報酬をシャーリィに与えただけです」
お二人の意味ありげな会話が気になります。これは何なのでしょうか。
「シャーリィ、これはね?魔石よ。炎の魔法が封じ込められてる。だから温かいでしょう」
「魔石」
何と、この掌サイズの水晶が魔石?帝国では滅多にお目にかかれないとお父様から聞いたことはありますが、これが…。
「私個人としてはあんまり魅力を感じないけど、帝国じゃかなりの稀少品よ?」
伝承に因ればエルフは魔法を使えるとか。確かにマーサさんにとっては魅力が低いのでしょうが、帝国にとっては大変貴重なものだと。
「マーサさん、幾らになりますか?」
「そうねぇ、このサイズだと……金貨三十枚くらいかしら」
わーお、予想以上の大金です。いきなり大金持ちになった気分ですが、ちょっと気になります。
「マーサさん、その、これはどうやって使うのですか?」
大金ではありますが、やはり魔法を使えることにも魅力を感じてしまいます。
「簡単よ、その水晶に触れながら火に関連する事を唱えるの。火を出せって言ってみなさい?」
「はい。火を出せ」
そう唱えると、掌の上にある水晶から火が出てきました。ライターみたいです。このくらいなら別に魔石でなくても…。
「あくまでもそれは例よ。こっちにいらっしゃい」
私はマーサさんに連れられて店の裏手にある射撃場に来ました。
「あの的を見ながら唱えなさい。ファイアーボールとね」
「分かりました。ファイアーボール」
そう唱えた瞬間、水晶から大きな火球が勢いよく撃ち出されて的に当たり燃やします。わんだほー。
「これが魔石の力よ。日用品から武器まで何にでも慣れる高い汎用性ね」
「これはすごい」
高値で取引されるわけです。これが安価で手に入るくらい生活に浸透しているアルカディア帝国の強大さを垣間見た気分ですよ。
あっ、でも…。
「何だか色が薄くなったような。暖かみも減りました」
「魔石は封じ込められた魔力を完全に消費すると、ただの石になるわ。それは小さいから、その分減るのも早い」
「なんと」
詰まり価値がなくった!?知的好奇心に従った結果ですが、ショックです。
「そんなに落ち込まない…落ち込んでるのよね…?…貸してみなさい」
はい、落ち込んでいます。私はマーサさんの指示に従い彼女にほとんど力を失った魔石を渡します。
「火の精霊よ、万物に宿る力に再び息吹を」
マーサさんが目を閉じてそう唱えると、魔石を優しい光が包み再び輝きを取り戻しました。神秘的です、興味深い。
「これで使えるわよ。今回はサービスしてあげる?どうする?売る?」
「いいえ、頂きます。売るのが勿体無い」
使い道は幾らでもあります。売るよりも手元に置いておいた方が良いはず。
「貴女ならそういうと思ったわ。魔力が無くなったら、持ってきなさい。そうね、銀貨一枚で充填してあげる。その代わり、今後ともご贔屓にね」
「はい、よろしくお願いします」
何だか大きな借りを作ったような気がしますが、魔石の充填なんて他に頼れる人が居ません。マーサさんなら頼りにしても良いかもしれません。
店内に戻った私達は、商談に取りかかります。うん、ソファーやテーブルまでピンクだ。
「査定結果が出たみたいね……そうね、銀貨四枚でどう?」
「安いですね、マーサ」
「仕方無いじゃない。剣や斧なんてあんまり需要はないし、そもそも粗悪品だもの。銃もライデン社以外の乱造品。むしろ、貴女だから高く見積もりしてるのよ?普通なら銀貨二枚ね」
命のやり取りをして銀貨四枚ですか。世知辛いですね。
「……仕方無い。シャーリィにサービスをしてくれたみたいですし、今回はそれで手を打ちます」
「あら、意外ね?もう少し粘ると思ったのに」
商談中、手持ち無沙汰な私はマーサさんを観察します。組まれた足はしなやかで肉質もある。びゅーてぃふぉー。そして組まれた腕に強調された胸部が自己主張を激しくしています。わんだほー。
「今日はそんな気分ではないだけですよ。シャーリィとも付き合いをお願いしますね」
「もちろんよ。この子、大物になりそうだし。うちとしても贔屓にして貰いたいもの。魔石の件は先行投資よ」
「商談成立ですね」
シャーリィ=アーキハクト9歳夏の日、私は初めての実戦で掛け替えの無い親友、魔石、ターラン商会との繋がりを得ることが出来たのでした。