私、カテリナがあの娘を拾ったのは帝国では珍しい雪の降り積もる日でした。今思えば、本当に気紛れだったのです。同じことが起きてももう一度拾うとは思えません。
それから一週間後、目覚めたシャーリィに対する第一印象は、不気味な娘でした。絶望して泣きわめくでもなく、無表情で淡々と状況を咀嚼して政府ではなく私を頼ろうとするのは驚きました。
確かに大貴族による大事件、政府の関与を疑うのは無理もありませんが、それに僅か九歳の幼子が思い至る事が異質でした。この子は明らかに違う。私は直感しました。途轍もない面倒事を招くような気もしましたが、何よりもこの子の将来を見てみたい。そう思い、私はシャーリィを引き取ることに決めたのです。
共同生活が始まると、まず驚いたのは家事スキルの高さ。貴族のお嬢様である以上期待はしていませんでしたが、そこらの使用人を嘲笑うかのような完璧さを示したのです。恥ずかしながら私は不得手なのでこれだけでも助かりました。勝手に私室を掃除されるのは困り者ですが。
そして、シャーリィは常に無表情ですが瞳には激しい感情が渦巻いていることも分かりました。言葉の端々からも、シャーリィは感情表現が致命的に下手なだけだと分かります。何より、自分に敵対する存在を認識すると笑顔になる癖があるのです。最初は家族の仇に。掃除では黒い悪魔などの害虫に。そして、後に敵となる黄昏の蜥蜴相手にもそうでした。
子供とは思えないくらい頭が回り、そして時には年相応の反応も示す。幼さゆえか素直でこちらが教える知識をどんどんと吸収して試行錯誤してそれをものにしていく。孤児院で使ったサブマシンガンにも並々ならぬ興味を示していましたね。贔屓目かもしれませんが、この子は化けます。或いは、暗黒街の歴史に名を残すような存在になるかもしれません。ただ、定期的に面倒事を持ち込むのは止めて欲しいです。マーサは見ていて飽きないと言っていましたが、当事者からすれば疲れます。主に精神的に。
最近良い友人が出来たのは良いのですが、この子がまたシャーリィの火付け役になることもあります。昨日など、実験と称して爆薬で花火を作ろうとして危うく教会が吹き飛ぶところでした。全く、目の離せない世話の掛かる娘です。
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