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機械音声に誘われるまま、建物の中へと足を進める。廃墟のようなこの場所に、おびただしい数のトラップが仕掛けられているのは知っている。
…もうあんな目はごめんだな。
とある曲がり角を過ぎたところで、後ろから銃を突きつけて声をかけられた。
「君が来るなんて、どういう風の吹き回しかな。ネガリシハム。」
丁寧な口調をして、人の頭に拳銃を突きつけるのが好きな奴だ。
「いいのか、ボス直々に出迎えなんて。」
「…君はどうせでかい用事がある時しか来ないだろう?」
「…あんたんとこの新入り、表の世界から何かとくすねているらしいじゃねぇか。」
「はは。やっぱり見逃してくれないよね。」
「でも、君になにか不都合があるようには思えないなぁ……?」
「ははっ。あれもこれも上からの指示だよ、パンサー。ボクがそんなめんどくさいことすると思うかい。」
そう、最近できた裏の世界での政治ってやつ。
「この世界もあの忌々しい表の世界のようになってしまうのかいシハ。」
ボクにそんなものは効かないと知っていながら、より強く銃を突き立てる。
「そういう事になるな。あんたはどうするんだ…いや、P&Rはどうするんだ、なあ。」
「じゃあ上に伝えてくれ、シハ。」
「俺たちはお前らを潰すと…な。」
「…わかったよ。」
これはまずいことになったかも知れない。
仮にもP&Rと……
ボクが渋々協力している悪魔たちがぶつかるなら、ボクもタダじゃあ済まないだろう。
これだから多集団行動は嫌だよねぇ…。
あぁ、ホント…厄介なやつ。
「伝えておくよ…パンサー。」
『パンサー』そう呼ばれる度に何処か違和感がある。私はそれではない、それは、先代の……
「…ッ!」
わかっている。今はそれどころでは無い。
奴らを潰すと言った、これは戦争なのだ。
皆を待機させていた部屋の扉を開ける。
「戦争だ。奴らを潰すことにした、何か異論があるものはいるか。」
「……」
「居ない…か。総員、準備に取り掛かれ!」
「「「「はっ!!」」」」
…待ってろよ、あのクソ悪魔共…。
P&Rの力を見せてやる…!
プルルルルルルル…プルルルルルルル…プル、
ガチャ…
「もしもし…こちら悪魔立憲…」
「おい!!…P&Rと戦争になっちゃったけど!?もうどーすんのアンタら…!?」
「なんだシハか!!心配するなシハ!!最強の俺が絶対なんとかしてやるさ!!」
なんとかする云々の問題じゃねーだろこの脳筋!!戦争だぞ?!
「政治する気あんの??戦争だぞ戦争…!」
「こちとらP&R側にアンタらに付いてるってバレてんだよ、もっと人を上手く使えよ!」
「大丈夫だ!シハ!!俺が付いてる!!!」
「不安要素しかねぇよ!勝てばいいってもんじゃないんだよ!いいからお前以外のやつに電話変わってくれ!!」
「シハは照れやだなぁ!!今変わるぞ!!」
こいつもうダメだ……。
「…シハか。うちの息子が迷惑かけたな。」
「あぁ、どうも…。どうやら表の世界からくすねてるのも事実でしたし、なんとかしようとしたら戦争吹っかけられましたよ…。」
「……まずいな。」
「…今回で降りますからね、ボク。」
「シハ…待ってくれ、きっと我々がこの世界を統治すれば世界はより良く…」
「黙れ。」
「…!?」
「あのな、ジジイよく聞けよ。この世界に堕ちてくる奴なんて一割たりとも居やしねーんだよ…。ボクが協力したのだって面白い奴を探すための足掛かりでしかねぇんだ。」
「悪魔は本来そういう奴だよなぁ…!」
ガチャン!!
ボクが電話を切るとほぼ同時に声が聞こえる。
「…ネ…ガリシハム!!!」
!?ッ…
「ハジメく、」
ハジメくんが異様なほど殺気立っているのがわかった。そして…、
その白衣と靴を濡らす赤いものが、ナナシくんであったことも…!
あ、やばいことしちゃった。これ、取り返しのつかないことをしちゃったんだな。
先に戦争を起こしたのは、ボクの方か。
ハジメくんは、左手に古びた拳銃、右手に数本の薬品入りのアンプルを持ってこちらへ向かって来る。
ハジメくんがしたいのはきっと…
バァン!!
警告とばかりにボクの足元を目掛けて撃ってきた。
「動くなァ!!ネガリシハム!!」
いつもの冷静なハジメくんらしさが、どこにも残っていない。…これが、人間の感情…?
「いいか、ネガリシハム…!俺は今から空馬をさらう!」
「!ノゾムくんに何をッ!」
バァン!!
「お前が全部悪いんだ…ッ!!」
ハジメくんの手にあったアンプルが全てこちらへ飛んで来る。
ボクは…ボクはどこで間違えたのだろうか。
パリン…
意識が…遠…のく……。