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雲雀side
渡「さっむ」
風「⋯帰るか」
渡「⋯ん」
さっきまで、暑かったのが
落ち着いてきて急に寒くなる。
そりゃ、2月だもんな。
2月に海なんか来るやついねぇって話。
渡「じゃ」
バスに揺られ駅について、背を向けた。
⋯はず。
だけどグルンっと体を回され、目の前に奏斗。
風「なに1人で帰ろうとしてるの?」
渡「は?いつもそうじゃん」
風「いつもは、ね。でも今日からはさ、
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎雲雀、俺の彼女じゃん?
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎送ってくに決まってるよね」
⋯彼女。
渡「⋯俺、女じゃねーんだけど」
風「うん。でも、 俺にとっては
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎1番大切にしたい 彼女なわけ。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎何かあったら俺生きてけない」
渡「てかなんで俺が彼女なんだよ」
風「え?違うの?俺、彼女?」
俺が縦に顔を振らない事を分かってて
言ってきやがる。
まじでずりぃやつ。
風「かわいい。雲雀は俺に守らせて」
渡「⋯俺、可愛げ無いけどいいの?」
風「んー?俺とって雲雀は可愛いの。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎みんなが分かんなくたって
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎俺だけが分かってたらいいの」
渡「⋯そういうもん?」
風「そういうもんよ」
一人で歩いてた帰り道。
それが2人で歩く帰り道になる。
誰かいるっていいもんかも。
徐々に家に近づいてきて、
あぁもう終わりかなんて寂しく思っていれば
目の前からクソでかい声。
四「たらいー!!」
渡「うわ」
最悪すぎる。
タイミング。
ちょうどセラおの家から、
あのバカップルが出てきたとこだった。
俺を見つけた、アキラがニコニコと
俺にめがけて走ってくる。
その瞬間に肩をグッと奏斗側に
引き付けられる。
渡「うおっ」
風「⋯誰?」
チラッと奏斗を見れば、
嫉妬なのか怒ってるのか
よく分からない表情をしてる。
セ「アキラ!邪魔しちゃダメ」
俺が、説明しようとしたとこに
ちょうどセラおが来てアキラを止める。
四「だって!ほら!
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎2人で歩いてくるから!つい!」
セ「でも、ダメ。ごめんね雲雀」
渡「いや⋯。あ、こいつ、幼なじみのセラフ。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎でその隣がセラフの彼女のアキラ」
風「⋯幼なじみ。彼女⋯?⋯え?!」
渡「ふはっ!すんげぇ顔」
目の前に俺らと一緒で
男同士で付き合ってるやつを
目の当たりにしたからか
すんげぇ顔で驚いてる。
目とか飛び出んじゃね。
風「だ、だって、ほら、ね?」
セ「うちのアキラがすみません。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ひばとは何も無いんで
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎安心してくださいね」
そうセラおが言うと
「あ、いえ、お似合いですね」なんて
奏斗はキョドってて。
四「俺も、セラ夫しか興味ないから
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎安心して!」
アキラはなんか惚気け始めたし。
セ「⋯ひば、良かったね。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎その花⋯いいですね」
そんなアキラを連れて、
セラおが俺らの横を通り過ぎる時
ボソッと言ってくる。
花?
あ、これ⋯なんか意味とかあんのかな。
セ「じゃあ、ほらアキラ行くよ」
うるさいバカップルが通り過ぎて行って、
俺の家の前。
渡「ごめん、なんか」
風「んーん、でも嫉妬はしたかなぁ。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎俺以外の男と一緒にいた訳でしょ?
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎今まで。めっちゃ嫉妬!」
いや。そんなはっきり「嫉妬」なんて
言ってくるやついるんだ。
渡「⋯ごめん。でも、今俺、
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎てか結構前から奏斗のことしか
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎見えてないから」
風「⋯?!はぁ⋯やばいって。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎爆弾。可愛すぎ」
俺の前で頭を抱える奏斗。
渡「⋯なに?大丈夫?」
風「oh⋯⋯無意識。大丈夫、
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎そのままの雲雀でいて。じゃあね」
ボソボソと何か言っていたけど、
聞き返す前に挨拶をして
来た道を戻っていった。
家に入ってすぐ震えた携帯を
見るとセラおからで
【あなたを愛します】
とだけ送られてきていた。
⋯は?どういう⋯あ!
これ!アネモネっだっけ⋯?
その意味?花言葉っての?
そういうこと?
なんか直ぐに確認したくてその勢いで
奏斗にメッセージを送る。
【あれ!あなた愛します。そういうこと?!】
送ってすぐ奏斗から返ってくる。
【大正解。よろしくね、雲雀】
なんかずりぃんだよ。
やることが。
もっと好きにさせんなよ。
今の俺は幸せでいっぱいで、
ずっと続くって思ってた。
だけど、すぐそこにこの幸せが崩れてしまう。
そんな理由。
この時の俺に分かるはずもなかった。
奏斗の彼女⋯になって、1年。
相変わらず仲良くやってる。
特に学校で過ごすことに
何か変わったことはないけど。
ただ、ひとつ変わったことと言えば
周りのやつらに俺らが付き合ってることが
知られてるってことくらい。
付き合ってからというもの、
何故か俺は嫉妬するようになって。
女に騒がれてるのが見るの嫌で
不貞腐れて勝手に一人で帰った時に
馬鹿みたいに怒られて。
理由聞かれて、
話せば「いってくれりゃあ、いいのに」
なんて笑って次の日には
「俺、彼女いんだよね」って言してて。
「誰?!」って騒ぐ周りに、
俺の事抱き寄せて「雲雀」なんて
言ってみせた。
「えぇー?!」なんて騒ぐ周りに、
恥ずかしさを覚えた。
けどそれ以上に嬉しくて。
それから、あんま女が騒ぐこともなかった。
騒ぐやつは騒いでたし、
直接俺に別れてなんて言ってくるやつもいた。
正直その時は、男同士だし。
なんて考えて「別れよ」なんて口走って
くそ喧嘩したし。
割とその辺のカップルと
同じようなことをして 1年を過した。
⋯あ、ちなみにクラスは一緒だった。
付き合う時に花を貰った俺は
なにかあげたくて、
半年記念日?に似合いそうな
ブレスレットを プレゼントした。
俺にセンスってものは無いから、
あのバカップルを連れて買いに行った。
そしたら、なんかそれに嫉妬してた。
⋯可愛かったな。
俺がプレゼントしてから、
肌身離さずそれをつけていた奏斗。
⋯そう、肌身離さずつけていた。
だけど、ここ数ヶ月ブレスレットを
つけていないことの方が多くなった。
俺が言えば「あっ、ごめんごめん」って
思い出したように付ける。
そして最近は上の空ってことが多い。
ほら、今だって。
渡「奏斗!ねぇ、奏斗」
呼んでるのに、振り向かない。
パシパシっと叩くとようやくこっちを向いて
「どした?」って優しく聞いてくる。
渡「いや、なんか上の空だったから」
風「はは、ごめん」
そう言いながら俺の頭を撫でてくる。
1年記念日だぜ?今日。
もっと、なんか笑っていたい。
そう思ったのに空気は重くなっていく一方で。
2人で決めてた。
1年記念日はここでお祝いね。と。
告白され、告白したこの海。
同じ場所に立って、プレゼントを渡そう。
そう思って歩いていれば急に立ち止まる奏斗。
渡「⋯なに」
繋いでいた手にグッと体重が掛かり、
ふらつく。
風「⋯雲雀」
そして俺の名前を、
泣きそうなそんな顔をして呼ぶ。
風「別れよ」
聞きたくなかった言葉。
一生聞くことがないと思っていた言葉。
それを今、言われた。
しかもここで。
渡「なん⋯で」
風「好きなやつ⋯出来たんだよ。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ごめんな、じゃあ」
だったら。
だったら、なんでそんな泣きそうなんだよ。
おかしいだろ。
気づけば奏斗の手を引いて、
歩いてバスに乗って俺の家まで来ていた。
その間何度か名前を呼ばれた気がするけど、
知らない。
渡「⋯ん」
玄関を開けて奏斗を家に入れる。
ほんとに好きなやつが出来たなら、
俺の腕振りほどくらい出来たはず。
それをしない。
そういうことは、何かある。違う理由が。
「おかえり」なんて笑ってくる母親を
スルーして自分の部屋に奏斗を連れていく。
風「⋯たい、痛いって、雲雀」
自分の部屋について、冷静になって。
痛い。という奏斗の手をバッと離すと
少し赤くなっている手首。
渡「⋯ごめん」
風「んーん、大丈夫。俺こそ、ごめんな?」
眉を八の字ににして、困ったように笑う。
その瞳は泣きそうなのかうるうるしていて。
何がお前をそうさせてる?
俺じゃ、その奥底に潜んでるやつ
解決出来ねぇ?
俺が不安な時とか、喧嘩した時とか、
必ず奏斗は俺を抱きしめる。
優しくギュッと。
そしたら、安心してなんでも
話せるようになる。
奏斗の腕の中って暖かくて、
涙腺だってユルユルになる。
俺がそうしてもらったように、
俺も奏斗に同じことをした。
ギュッと、そっと、抱きしめる。
風「⋯離せ」
渡「やだ」
風「⋯雲雀⋯」
渡「俺は離さない」
力強くそう言うと、奏斗は俺の肩に
顔を埋めて 腰に腕を巻いてきた。
そのまま体重を掛けられるもんだから
そのままベッドに座る状態になって。
奏斗をだっこするような形になる。
顔を埋めたまま、何も言わない
奏斗の背中を優しくぽんぽんと叩けば
ズルっズルっと泣く声が聞こえる。
顔を埋めたまま泣きじゃくる奏斗。
⋯大丈夫。
俺は、何があっても奏斗から離れない。
だから、話して?
奏斗⋯。
風「⋯っ、ひばっ⋯り」
泣きじゃくる声の間に、俺の名前を呼ぶ。
渡「ん?」
風「ひば⋯り」
安心したいのかギュッと力を込めて俺を呼ぶ。
渡「どうした?」
風「ひ⋯ば⋯り」
初めて見る。
こんなに弱ってる奏斗。
風邪で弱ってるとかそういう姿は見てきたけど
こんなに弱々しく泣きじゃくる
そんな姿見たことがない。
よっぽどの事があったんかな。
渡「⋯大丈夫。奏斗、好きだよ」
安心させるように、
こんなんで安心出来るのか分からないけど
伝える。
風「⋯僕っ⋯ぼ⋯く⋯、ね」
渡「うん」
好き。と伝えればゆっくり少しづつ
話し始めた。
風「ひば⋯り⋯が好きっ⋯⋯⋯」
渡「⋯うん」
じゃあなんで別れようなんて言った?
なんて聞かない。
追い詰める気がするから。
風「でも⋯っ、別れなき⋯っ、ダメっ⋯なの」
渡「⋯っ。なんで?」
一瞬心がキュッと締め付けられる。
風「わす⋯っ、れちゃう⋯の」
渡「忘れる⋯?何を?」
風「ひば⋯り、の事⋯っ」
渡「俺⋯のこと?」
泣きながらハッキリと伝えてくれて、
聞き返せばコクコクと頷いた。
どういうことだ?
俺の事を忘れる?
渡「⋯病気か何か?」
風「ぼくっ⋯ぼく!⋯」
渡「大丈夫⋯落ち着け。俺はここにいるから」
病気なら治療を受けて欲しい。
それでもし忘れてたら1からやり直す。
風「最近⋯っ、物忘れ⋯が酷くて」
少し落ち着いたのか、
言葉がハッキリとしてくる。
顔は埋めたままだけど。
風「全部に、そうっ⋯なのかなって
思ってたんだけど。違くて⋯っ。
雲雀⋯⋯雲雀のことだけ忘れてく⋯」
俺⋯のことだけ。
渡「⋯あ、だからブレスレット忘れてた?」
コクリと頷いた。
渡「⋯それ、治るの?」
1番聞きたいこと。
治る。それだけが聞きたい。
風「治らない⋯だから別れよう⋯」
さっきまで泣きまくってたくせに
ゴシゴシと涙をふいて
俺から離れてこうとする。
渡「治らないって、どう、いうこと」
風「雲雀⋯さ、忘愛症候群って知ってる?」
渡「いや⋯」
風「だよな。俺、それになったみたいで。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎愛してる人のことだけ
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎忘れてくんだって、 だから雲雀のこと、︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎いつか忘れるの俺。 辛いじゃん?雲雀が」
愛してる人のことだけ忘れてく。
俺の事だけ、忘れていく。
だから俺が辛い。
そうじゃない。そうじゃないよ、奏斗。
風「一番辛いの、お前じゃん。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎忘れてく恐怖と闘うんだろ?
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎確かに辛い、けど俺以上に辛いの
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎奏斗じゃないの?」
だから。
だからさ。
渡「完全に忘れるその瞬間まで隣に居させて」
風「それじゃ、雲雀が⋯」
渡「んぁ!もう!ごちゃごちゃうるさい!
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎この病気、愛してる人のことだけ
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎忘れるってことは 奏斗、
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎お前が俺を愛してた証拠になる。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎だから、俺は大丈夫。俺の隣に居て、
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎その瞬間まで」
奏斗のほっぺをギュッと押さえながら言った。
風「いひゃいって⋯ひばり」
ペシペシと俺の手を叩いてくるから離せば
風「今から言うことすげぇ残酷だけどいい?」
なんだよ。
まだあんのかよ。
渡「この病気の治療法。てか治る方法。
それは、愛する人の死。
なんだって⋯雲雀⋯ひ⋯ばり⋯」
自分から残酷って言ったくせに、
また泣き出した奏斗。
奏斗が俺を思い出すのは、俺の死。
クソみてぇだな。
渡「俺、死なねぇよ?死んでから
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎思い出されるとか無理! 嫌すぎる。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎だから、俺はまた1から
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎お前にアピールしてやる。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎好きにさせてやる。大丈夫。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎俺を言じて」
泣き止まない奏斗をあやす。
残酷だな。
悲しいとか悔しいとか、辛い。
そんなのないって言ったら嘘になる。
だけど、一番辛いのは奏斗。
今も、俺を忘れる恐怖と闘ってる。
明日急に忘れるかもしれない。
そんな恐怖と。
だったら、そんな恐怖感じさせないくらい
一緒に居て最後の最後まで
俺で埋めつくしてやる。
結構な時間泣き続けて、落ち着いた奏斗。
風「⋯雲雀」
そう言って渡してきた手紙。
渡「なにこれ」
風「俺がさもし、もうなにも雲雀のこと
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎思い出せなくなったら俺に渡して?」
絶対読まないで。なんて釘を刺されて。
あぁ、これ夢じゃねぇんだ。
用意周到な奏斗に、
もっと早く気づいてたら良かったな。
なんて思って。
風「⋯俺、雲雀が彼女で良かった」
俺の部屋で交わした最後の言葉。
それから、高校を卒業して
俺も奏斗も同じ大学に入学をした。
忘れかける記憶の中、
俺の事がわかる間、
奏斗は「雲雀が彼女で良かった」と
伝えてくれていた。