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雲雀side
そして、大学1年の6月。
恐れていたことが起きた。
渡「⋯はよ、奏斗」
キャンパスに入っていく奏斗に挨拶をすれば
風「⋯あの、誰ですか?」
俺の事を全く覚えていない奏斗が
そこにはいた。
渡「いや⋯ごめん」
あまりにも怯えて俺を見るから思わず
俺はその場から走って逃げた。
奏斗が俺を完全に忘れて、半年。
風「ひば~!!」
渡「KNT」
俺らは親友になった。
あの後、逃げた俺を何故か追いかけてきて。
風「友達になってください!」
なんてバカでかい声で言ってきて。
渡「はは!⋯いいよ、友達なろうよ」
俺の事忘れても、奏斗は奏斗のまま
変わらなかった。
好きになってみせる。
なんて言った手前離れるにも離れられない。
俺が、奏斗のこと好きすぎるから。
ただ、俺の事を「ひば」呼びに戻ったのは
ちょっとキツかった。
だから、俺も『KNT』に戻した。
奏斗⋯いやKNTはほんとに
俺の事ひとつも覚えていなかった。
高校が同じってことさえも。
そんなKNTを見て、
今楽しそうにしてるKNTを見て。
渡そうと思ってた、
KNTからの手紙も渡せずにいる。
なんか混乱させそうで。
何より、俺が今楽しいから。
付き合ってなくたって、好きじゃなくたって。
もう、奏斗の隣にいれるならいいや。
そう思っていた。
渡「次の授業、さぼろーぜ」
風「ひば~、単位落とすよ?」
渡「そう言っていつも着いてくるのは誰だよ」
風「はは、僕」
高校の時と変わらないサボり癖。
このままでもいいって思ってる俺の悪あがき。
高校の時みたいにサボったら
思い出すんじゃね?っていう淡い期待。
忘愛症候群。
調べたら、思い出すことは無い。
そう書いてあったけど、思い出す。
奏斗なら。
そんな変な自信が俺にはあったから。
そんな俺の期待も、儚く散っていく。
大学1年の2月。
興奮気味のKNTが俺に報告してきた。
「彼女が出来た」と。
一気に世界が暗くなった気がする。
俺の事をすきになる。
そう思ってた。
信じて疑わなかった。
彼女、って言っても、女じゃなくて男。
風「ひばは、偏見持たないと思って」
なんて、嬉しそうに報告してきて。
持たねぇよ。
だって俺とお前付き合ってたもん。
渡「⋯そう⋯だな。おめでと、KNT」
それだけ言って、KNTの顔も見ずに
走って逃げた。
あいつの彼女、
俺より遥かに可愛げあるやつじゃん。
ああ、やっぱり可愛げある方が
いいよな⋯とか思ったら涙が止まらなくて。
思うがまま走って、着いた場所はセラおの家。
インターホンを押せば「⋯はい」と
出てくるアキラ。
渡「⋯あ、アキラ⋯ごめん」
2人の邪魔をしないようにって家には
入らず 背を向けるとアキラに腕を掴まれる。
四「たらい」
そのまま家に入れられて、リビングに入れば
セ「アキラ?なんだった⋯って、ひばり?!」
キッチンで何かを作っていた
セラおが俺を見て驚く。
そりゃそうか。泣いてんだもん。俺。
四「何⋯があったの」
そんなアキラの声に、
奏斗との思い出とか忘れられたこととか
彼女が出来たこととかブワッで思い出して
子供みたいに泣きじゃくる。
その間、アキラもセラおも2人で
俺の背中を摩ってくれていた。
しばらくして落ち着いて、
コトっとコーヒーを出してくれたセラお。
セ「聞いて⋯いい?」
俺の目の前に座り、
優しく聞いてくるセラおにひとつづつ
話していく。
1年記念日の日、奏斗から別れようと
言われたこと。
忘愛症候群だということ。
だけど、別れる選択はしなかったこと。
忘れられてしまったこと。
親友に戻ったこと。
⋯そして、彼女ができたこと。
全部、全部、覚悟してたこと。
なのに、どうしてか涙が止まらなくなる。
四「⋯たらい。辛かったね」
何故か俺より泣いてるアキラが
俺を抱きしめる。
渡「ははっ、なんでアキラが、泣いてんだよ」
四「だって⋯辛すぎるじゃん。たらいっ⋯」
うん。辛い。
めちゃくちゃ辛いし苦しい。
渡「だけど⋯さ、俺が決めたことだからさ」
好きにさせてやる。なんて言ったくせに、
逃げてごめん。
ごめん。
アキラに抱きしめられている間でも
思い出すのは、奏斗のこと。
やっぱり抱きしめられるのは奏斗が良くて。
思い出すほど、辛くなるって分かってんのに。
落ち着いた俺はセラおの家を出て、
自分の家に戻った。
そして、部屋に戻れば見える俺と奏斗の写真。
いつだかに撮ったふたりの写真。
幸せそうに笑う奏斗と、それを見て笑う俺。
幸せそうだな⋯。
ごめん。奏斗。
もう少しだけ待って。
そしたら、ちゃんと諦められる気がする。
次の日から俺は、奏斗と居ることを辞めた。
会わないようにしていた。
逃げた日からメッセージは沢山来てたけど、
読むことも無くブロックをした。
これで、これで、俺は奏斗から卒業する。
今すぐになんて無理だけど。
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