テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
部屋には窓がなかった。
正確には、あったはずの場所が塞がれていた。
日帝は目を覚ました瞬間に、それを理解した。そう監禁されていたのだ。
空気の流れ、音の反響、光源の位置――冷静に状況を把握する癖は、こんな時でも役に立つ。
「……拘束はない。鍵は外側……か」
声に出して確認する。
自分が落ち着いていることを、むしろ不自然だと感じながら。
「さすがだな」
聞き慣れた声が、背後からした。
ナチスは壁際に立っていた。
銃も刃物も持っていない。ただ、逃げ場を完全に計算した配置。
「……説明しろ」
日帝は静かに言った。
怒りも恐怖も、声には乗せない。
ナチスは少しだけ目を伏せる。
「……お前が消えそうだった」
それは答えになっていない。
だが、日帝は続きを待った。
「俺の知らないところで、勝手に消耗して、
俺の手の届かない場所で壊れる気だっただろ」
ナチスの声は低く、抑えられている。
抑えきれなかった感情の残骸だけが滲んでいた。
「だから、ここにいる」
日帝はゆっくりと息を吐いた。
「これは監禁だぞ?」
事実確認。感情評価はしない。
「……そうだ」
ナチスは否定しなかった。
「お前を守るためだ」
「守る方法としては、最悪に近い」
「分かってる」
即答だった。
迷いのない声が、逆に危険だった。
ナチスは一歩近づく。
「でも他に選べなかった」
日帝はナチスを見つめた。
冷静な瞳。その奥で、ほんのわずかに揺れる警戒。
「お前は、俺を信用してないのか?」
「違う」
ナチスの声が震えた。
「信用してるから、閉じ込めた」
日帝が言葉を失う。
「お前は合理的だ。
目的のためなら、自分を切り捨てる選択をする」
ナチスは距離を詰め、日帝の前に立つ。
「だから、俺が選択肢を奪った」
それは独占だった。
愛情と呼ぶには歪みすぎている。
「……ナチ」
日帝の声は、相変わらず落ち着いている。
「お前は、自分が何をしているか理解してるのか?」
「してる」
これも即答だった。
「片思いだってことも、
お前が俺を選ばないことも、全部分かってる」
ナチスは微かに微笑んだ。
「それでも、離すよりマシだ」
沈黙が落ちる。
日帝は逃げようとしない。
叫びもしない。
それが、ナチスをさらに縛った。
「ここにいる間は、安全だ」
ナチスは言い聞かせるように続ける。
「俺が全部管理する。 任務も、接触も、判断も」
日帝は目を伏せた。
ナチスは日帝の前に膝をつく。
命令ではなく、懇願に近い姿勢で。
「俺の世界にだけ、いてくれ」
日帝はしばらく考えたあと、静かに言った。
「お前は、壊れかけてる」
「お前のせいだ」
その言葉を、日帝は否定しなかった。
監禁は始まりでしかない。
これは保護ではなく、執着の形をした檻。
ナチスの片思いは、
もう戻れないところまで来ていた。