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監禁されてから日帝の生活は、驚くほど快適に整えられていた。
食事は時間通り。
栄養バランスは完璧で、好みまで反映されている。
怪我をすれば、ナチスが誰よりも早く気づき、誰よりも丁寧に手当てをした。
「無理しなくていい」
ナチスは穏やかな声で言う。
拘束も怒鳴り声もない。ただ、選択肢が最初から存在しないだけ。
日帝は椅子に座り、差し出されたカップを受け取る。
「……何か怪しい薬とか入ってないだろうな」
「当然だろ」
ナチスは微笑む。
日帝は何も言わず、紅茶を口にする。
毒はない。睡眠薬もない。
必要なのは、逃げる意思を削ぐことだけだと、ナチスは理解していた。
「今日もお前のやることはないからゆっくりしとけよ」
ナチスはさらりと言う。
「情報過多はストレスになる。
今のお前には、静かな環境が必要だ」
「……俺の判断じゃない」
「そうだ」
即答だった。
「お前は、自分に厳しすぎる」
ナチスは日帝の前に膝をつき、包帯を巻き直す。
指先は驚くほど優しい。
「だから俺が代わりに甘くする」
甘やかしと管理の境界が、もう存在していない。
「ナチ」
静かな声。
「これは、保護じゃない」
ナチスは手を止めなかった。
「分かってる」
顔を上げる。
そこにあるのは、穏やかで、満たされた表情。
「でも、日帝。
お前は今、今までで一番安全だ」
それは事実だった。
任務はない。危険もない。消耗もない。
ただ、自由がないだけ。
「選択しなくていい生活は、楽だろ?」
ナチスの声は、囁きに近い。
「誰かに使われることも、
自分を切り捨てる判断をする必要もない」
日帝の顎に、そっと指が触れる。
「ここでは、俺が全部決める」
それは支配だった。
だが“君は考えなくていい”という形をしている。
日帝は目を伏せる。
「……もう考えるのは疲れた。どうでもいい」
その言葉に、ナチの喉が小さく鳴った。
「そうだ」
肯定する。
「俺は、お前にだけは優しい」
世界から切り離し、
危険から隔離し、
判断力すら奪って。
それをすべて「愛情」と呼んで疑わない。
ナチスの独占は、完成しつつあった。
居心地が良く、 抜け出そうとする理由を、静かに消していく。
日帝はまだ、
その優しさを拒絶しきれていない。
そしてこの先もこの優しさを拒絶できないだろう。