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中央から外れたところ、そこに
アリスがいた。
エミリーは新しいシャンパンを取ろうとしていた。すると近くにいた桜が声をかける。
「いつもよりハイペースですね」
「そ?」
「ええ。あぁそうか、いつもは“シンデレラ”なんてオシャレなものを飲んでましたっけ」
「たまによ!ウォルトがお気に入りのカクテルだしね」
「それもそうですね。」
「桜は?何か飲む?」
「いいえ。私は少し休憩しようかと」
「疲れたもんね。私も靴、疲れたかも。フィナーレまでの体力残しで少し休もうかな。一緒に着いてくよ。」
「そうですか。なら、あそこのベンチまで」
「ええ」
歩いていくうちに人混みに囲まれた。
「うわっ!」
そしてエミリーは人混みをお得意の我を通して突っ切る。
「あれ?桜ー!桜?どこー!」
桜がどこかへいってしまったのだ。キョロキョロと周りを歩きながら探す。するとドスンと誰かにぶつかった。よそ見をしていたために誰とぶつかったのかも分からず、相手は吹っ飛んでいる。
「ah!sorry!!大丈夫?手を、」
「お構いなくエミリー」
「,,,,,,アリス」
アリスがそこにいた。
「人が多いものね。もう少し調整したらどうかしら」
「,,,,,,生憎アルフレッドには友人が多いから」
「それもそうね。果たして友人なのかは分からないけれど」
「,,うん」
少しエミリーは下を向いていた。だが、決心したようにアリスの方角をはっきりと見つめ直した。
「アリス!謝りたかったの!」
「,,,,,,なあに?」
「ずっと、ずっとアリスを避けてきたわ。アルフレッドについてきたからって、アルのせいにしてしまった。ついてきた私の責任なのに。」
アリスは黙ってエミリーを見つめていた。
「髪を短く切ったのも私の決断だったのよ。ずっと伸ばし続けること、このくせ毛をストレートに伸ばし続けることはアリスを、イギリスをずっと真似していることと同じだと思ったから。いつまででも姉離れできてないって思われてしまうから」
「,,そう」
「,,,,,,ずっと、連絡しなくてごめんなさい」
「気にしてないわ」
「怖かったの」
「私が?」
「いいえ、嫌われることが。もうとっくに嫌われてたはずなのに」
「,,,,,,エミリー、よく聞きなさい」
アリスは静かな声で、とても冷静だった。エミリーはギュッと目をつぶった。
「謝りたいのは私の方なのよ」
「,,,,え?」
「連絡しなきゃいけないのは私の方だった。独立したばかりで不安なあなたたちを思いやらなければならなかったのは私達よ。」
エミリーはアリスを見た。
「悲しかったわよ、そりゃあね。あれだけ可愛かった子がいきなり髪を切ってくるわ、出ていくわ、それに姉妹じゃなくなったみたいで寂しかったわ。いつまででも姉離れなんてしなくてよかったのに」
「,,,,,,ははっそんな不貞腐れたような顔、初めて見たよぅ,,,,」
「しっ失礼ね」
ポロポロとエミリーは涙を流し始めた。
「あれ、なんでだろ、ごめんね。ちょっとまってて」
アリスは一気に近づいて涙をハンカチで拭く。あまりにもその力が強すぎてエミリーの鼻は少し赤くなっている。
「泣き虫、ワガママ、大食らい、それと、優しい子。ほら変わってない」
「ホテルでのこと、ごめんね。咄嗟に酷いことを言ってしまった。」
アリス、あのね
〈今更なんの用なの〉
,,,,あのね、聞いて欲しいの。その、パーティのことでね
〈言ったでしょ。私はアーサーと一緒にいるのよ。これまでもそうだったじゃない〉
,,,,うん、そうだよねごめん
〈これまでと変わらないわ〉
うん
〈だからこの話はもう、なかったことに〉
,,,,,,,,うん
〈,,,,,,,,,,,,ごめんなさい〉
「,,,,もうそろそろ泣きやみなさいよ」
「うーん,,,,どうだろ目が赤いからどうにもなんないや」
「どうせ暗いからバレやしないわよ。ほら、あなた達の上司が来たじゃない。アルも一緒よ」
「ほんとだ」
「行ってきなさい」
「,,,,待っててくれる?」
「もちろん。あの時と違って今はちゃんと時間をとっててあるんだから」
「ふふっありがと!」
「大好きよ!アリス!!」
アリスの中でまだ小さいときのエミリーがアリスに向かってそう言ってきたのを思い出した。途端に目頭が熱くなってズッと鼻をすする。
そのときにポンと優しく頭になにかがのった。
「,,,,今更なに」
「,,,,,,,,体調が改善されたから来ただけだっての。悪いか?」
「ここまできたなら来なくて良かったのに」
「そっくりそのまま返してやろうかって言いたいところだが,,,,まあ上手くいったんだろ」
「,,,,そんなとこね」
「,,,,,,,,俺たち、つくづく似てんだな」
「勘違いしないでよ。私までまゆげが太くなるじゃない」
「兄上たちに言っといてやろうか?」
「あらどうぞ?少なくともスコットは私の味方よ。」
「クソっ、なんでだよ,,,,」
「,,,,まあ、ありがとアーサー」
「どーいたしまして」
2人の目線の先にはかつての妹弟。
独立したことは寂しかった。それは2人の本音でもある。だが、それと同時に誇らしいとも言えただろう。
独立記念日フィナーレを祝う花火はある2人の関係性の新たな出発を祝っていた。