この作品はいかがでしたか?
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※兄ちゃん目線
(あれ、寝癖が…)
脱衣所で着替えていると、自分の髪にぴょこんと一束立っている寝癖に気づく。
これ、アイロンじゃないと直らないかなぁ…出すの面倒だな。
…と思いつつ、寝癖がここまで目立つと困るので、嫌々棚に手を伸ばす。
「…あ、あった」
温度は220度。ストレートアイロンで、自然になるように伸ばす。
…あれ、上手くいかない…
「…まあ、いいか。」
洗面台に掛けてある歯ブラシと歯磨き粉を手に取る。かけすぎたかな。まあいいか。しゃこしゃこと歯を磨いていると、向こうから小さな声が聞こえてきた。
「にいちゃ、?どこにおるん…?どこ…?」
変な夢でも見たのだろうか。若干かすれている泣き声の持ち主は、俺を探している。
「伊織ー。ここだよ、俺。洗面台。」
そう呼ぶと、伊織の足音が速くなる。数秒後、鏡に映る潤んだ目と目が合った。
伊織の目から、涙が溢れる。
「兄ちゃん…!」
ぎゅうっと抱きつかれて、身動きが取れなくなる。
「どうしたの。変な夢見た?」
「にいちゃんと喧嘩する夢、…俺捨てて、兄ちゃんどっか行って」
「うん」
「目ぇ覚めたら、にいちゃんおらんくって…ぐすっ…ほんとに、どっか行ったんかと思って…っ」
「そっかそっか…大丈夫、ここにいるからね」
「ゔっ、ゔぅ……にいちゃ」
「なーに?」
「はぐ、して…?」
「…ちょっと待ってね、歯ブラシ口にくわえたままなんだ」
かわいい。こんなにかわいい子手離すわけないじゃないか。
口をゆすぐ。なるべく手早くやったつもりだけど、それだけの間でも可哀想に思えて申し訳なかった。
「できた…?」
「できたできた。ほら、おいで」
「んむ…」
まだぐずっている。慰めのつもりでぽんぽん背中を叩くと、それに応えるように抱き締められた。寝起きでもさらさらの髪の毛が触れてくすぐったい。
「…兄ちゃん」
「はあい」
「兄ちゃんは、俺のこと…捨てへんよね……?」
もう…捨てないって。大丈夫だよ、伊織。
ずっといっしょ。離さない。
「…捨てないよ」
「…本当やな?……なら、好きって言うて……?」
「大好き…」
気分が落ち着いたのか、伊織はにこりと笑う。「こっち」と連れられたベッドに俺は押し倒される。伊織は俺の身体の上に跨り、寝転んだ。
「落ち着く」
「落ち着くの?俺のお腹の上。」
「拍動の音…とくとく聴こえる」
「そんなに?」
「ん…」
「赤ちゃんみたい」
「……そや。手、貸して」
「どうぞ。何するの?」
伊織は起き上がって俺の手を取ると、胸辺りに当てた。
一定のリズムで刻まれる心臓の動きがよく伝わる。
「分かる?」
「分かる…けど、どうしたの?」
「…生きとる、俺」
─伊織はたまに、不可解な行動をする。それは、決まって情緒が不安定な時で、こうやって当たり前のことを誇らしげに教えてくれたり、猫みたいにやたらすりすりしてきたり、すきすき言いながら色々な所を甘噛みしてきたり。まあ、そこがかわいいんだけど。
「ほんとに、伊織は気まぐれだね」
「だって…兄ちゃんのことすきやもん」
「なに、その変な理由」
可愛いなあ。
俺だけにしか聞かせてくれない、この声も。
ふとした時にぽうっと赤くなる顔も。
本当は、大好きだったこの子を壊してやるのが目的だったんだけどな。
今となっては、丁寧に、丁寧に扱いたくて仕方なくなってしまった。
すぐ壊れてしまいそうな伊織の、白くてすべすべの頬に触れる。
「にいちゃん…?」
「…俺だけの、伊織」
それが嬉しかったのか、頬に赤が差したように頬を赤くして柔らかな笑みを浮かべる伊織。俺の腕に優しく触れて、
「はあい」
と、俺に似た返事をした。……なんと愛らしい。
「…ふたりだけで、ずっと一緒にいてくれる?」
「もちろん、そうに決まっとるやろ」
ああ、もう。ひとつひとつの仕草が嫌なほど可愛らしい。中毒になってしまいそうだ。
「離さない。俺の身体こんなにしたのは、兄ちゃんやからな?」
「そうだね」
「…もっかい、好きって言って」
「愛してる」
本当に、恋人になれたらいいのに。俺らは結ばれない性だけど、まあ、綺麗事みたいなことで言えば─愛の量においては、他の奴らよりも重くて多い自信がある。
伊織。
…ずっと、そばにいてね。
あとがき
書きたかったやつです
こいつらに関してはアナザーじゃなくてもこんなことしてます
更新遅いけど連載がんばろうね廉×伊。
コメント
4件
多分みんな思ってるビジュじゃないと思うんで なんでもおkだよーって人以外は 好きなCPで妄想するのもいいかも知れませぬ なんでもおkな人は落描き部屋見るなりして ビジュを確立させようね (ちなみに兄ちゃんの方はビジュ未確立)
アナザーじゃなくてもこれか!凄いな