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「まだ緊張しているのか? よければ、これを飲むといい」
備え付けの小型冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルが取り出され、車内にそんなオプションまであることに驚かされつつ、「ありがとうございます」と受け取った。
水をごくっと一口飲むと、少しだけ強張りがとけたようにも感じて、
「あの、今日はリムジンなんですね?」
話のとっかかりにと、傍らに座る彼へ何気なく問いかけた。
「ああ、私は必要ないと断ったんだが、周りから、新社長に就任した沽券を示すべきだと言われて、仕方なくな。目立つことこの上なくて、あまりいいものでもないだろ」
薄っすらと眉間にしわを寄せ、彼が苦笑を浮かべる。
「そう、だったんですか」
自身で望んだことではなかったんだと思うと、この人は若くしてKOOGAという大企業のトップに就いたことで、こんな風にいつもプレッシャーを押しつけられてきたのかもしれないとも感じられて、ふと背負った重責はいかばかりなんだろうと、にわかに胸が痛むようだった……。