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「ねえ、フィナ。この4日間なにしてたー? 私は食べ歩いてたけど」
先輩に聞かれてふとまたこの数日間の事を思い出して泣いた。
「えっ? なに? どうしたの? ごめん、なにがあったの? てかフィナって泣くの⁉︎」
散々泣いたからいまのは残り汁程度だったけど、確かに涙腺がおかしくなっているみたい。
「何か知らないけど、フィナもちゃんと泣けるんだねー。お姉さん安心したよー」
まあ、確かに今までのわたしはダリルいわく、アホの子だったんだろう。そりゃそんな子が泣き出したらびっくりするよね。
「んー、新しい弓を買ってきたの。でね、聞いて。ちゃんと真っ直ぐ飛ぶようになったんだよ!遠くの的も当てられる!」
ダリルの店の練習場は大きくないけど、裏口から出れば細い道があって普段は誰もいない。他に出入り出来る建物もなく通りへ抜ける通路の端2箇所を塞げば直線300mの射的練習場が出来上がる。そこでウサギ大の的を置いて練習していたのだ。
「じゃあさ、明日はいつもの狩場にいこう。そこでお姉さんが見てあげるよ!」
街の西側にずっと行けば海があるが、もちろんそれだけではなく、整備された道と草原に林と森がある。今日はこの草原でウサギを狩ることにした。
「よし、じゃああれを獲ろうか」
そうして先輩が示した先には150mほどのところにウサギが一羽。草を食んでいるところだ。
「まだ遠いから、静かに……?」
「やれるよ」
そう言って、放つ。散々練習して身に付けた技術はさすがに一晩寝たくらいでは忘れてはおらず、速さに魔力を注ぎ込んだ矢はその腹に正確に突き立った。
「すっご……なにがあったらそんなに変わるのさ」
「わたしエルフだからさ。師匠に出会えて教えてもらったらこうなっちゃった」
舌を出してぶりっ子ポーズしたら舌をひっぱられた。
とはいえわたしが凄くなったとしてパートナー解消とはならない。そもそも獲物を探すのに1人より2人。2人いれば状況に合わせていくらでもやりようもあるのだから。
それからしばらく狩り続けて12羽の成果になった。
豊富な魔力を蓄えたトレントの素材は魔道具の材料として高値で売れると言われ余剰分をギルドに卸してずいぶんと儲けたわたしには微々たる金額ではあるけど、いまは単純にこの成果が嬉しい。
その帰り道──夕日に赤く染まる草原でわたしたちは遠くに狼の群れを見つけた。数は7匹。その中に1人の人間の姿をみる。
どういう状況なのか、わたしたちはお互い声を発さずに様子を見る。
その人間は剣を構えており落ち着いた様子だ。だからこそ、こちらも慌てて助けに入ったりしない。
先に動いたのは人間の方。1匹にめがけ振り下ろす青い軌跡が走ったかと思うと狼が崩れ落ちる。そこに背後から飛び掛かられたけど、振り向きざまに一閃。滑るように横薙ぎ、突き、回転して駆け抜けて右、左。
瞬く間に決着し、顔をあげた剣士がこちらに気づいて一礼してきた。