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読了しました。なんて歪で美しい関係性なんだろう…。ないこがまろにキスを落とす瞬間、あの優しい声で「処理しろ」と命じる温度差にゾクゾクしました。まろが「全部わかってる」と自覚しながらなお狂喜している構図も、怖いくらいに丁寧で。ラストの「待たせたら怒られる」で子供みたいに慌てるのが、もうね…。続きが気になります!
⚠️注意⚠️
・微キャラ崩壊
・マフィア/裏社会パロ
・R18G(グロテスクな表現含)
・青▶︎▶︎▶︎▶︎♡ 桃
・狂気的な表現
…などを許せる方のみお進み下さい!
第1話 『狂気と狂嬉』
side:桃
湿った夜の匂いが鼻をつく。裏路地の街灯がチラチラと明滅し、石畳の上にふたつの影を歪に映し出していた。
「……ひ、ひぃっ…!頼む、助け…っ」
足元で這いずり回り、泥と血にまみれて命乞いをしているのは、新興組織の幹部だった男だ。
数日前から「共同事業の出資」だのなんだのと美味い話を持ちかけ、俺の懐に潜り込もうとしていた男。目的は当然、俺の後ろにあるマフィアの莫大な資金と権力。顔には「金が欲しい」と浅ましい下心が書いてあった。
世の中の人間は、どうしてこうもわかりやすいんだろう。
俺は崩れ落ちた壁に背を預け、靴の先で転がる男を冷ややかに見下ろす。胸の奥には何の感情も湧かない。ただただ、退屈だった。
「……なぁ、ないこ」
ヌッと影が動き、耳元でねっとりとした甘い声が響く。
返り血を頬に浴びたまま、まろが俺の隣にすり寄ってきた。手に握られたナイフからは、ポタリと赤い雫が滴っている。
「この男さぁ、ないこに触ろうとしてたよな?俺、めっちゃ腹たっててん……殺してええやろ?」
まろの瞳は狂気で揺れている。
俺の返事ひとつで、この男の命がどうとでもなることを理解し切った顔だ。
まろは俺のことが好きでたまらないらしい。狂おしいほどの愛と執着。それがあるからこそ、俺に寄ってくる害虫を勝手に察知しては、こうして嬉々として掃除してくれる。
俺はまろに恋愛感情なんて一切ない。
だけど――この狂犬は、あまりにも使い勝手が良すぎる。
「そっか」
俺は柔らかく目を細め、いつもの優しい笑顔を浮かべてまろの髪に手を伸ばした。血の匂いが鼻をつくけれど、そんなのはどうでもいい。
指先で乱れた髪を撫でてやると、まろの喉が興奮でかすかに鳴るのが分かった。
「俺のために、綺麗にしてくれる?」
「…当たり前やん」
「ありがと。……じゃあ、後処理よろしくね」
俺はまろの頬に手を添え、あえて愛おしそうに唇を寄せた。
ほんの少し、触れ合うだけのキス。
これだけで、この狂犬は俺のために喜んで人を殺し、地獄へだって落ちてくれる。実に安上がりなコントロール方法だ。
唇を離すと、まろの瞳は完全に蕩けきっていた。
「…〜っ!ほんと、ずるいわ…」
まろは荒い息を吐きながら、歓喜に震える手でナイフを握り直し、怯える男へと振り返る。
「……聞こえたか? ないこが『処理しろ』って言ったんや。お前みたいな汚い手で金目当てにないこに近づく奴、一滴の血も残さず消したるわ」
背後で聞こえ始める惨劇の音を背に、俺は一度も振り返ることなく歩き出した。
靴底が血の混じった水たまりを叩く乾いた音が、惨劇の夜に低く響く。
背後からは肉が裂ける不快な音と、男の情けない悲鳴。まろがどれほど残酷に、そして恍惚とした表情でナイフを振るっているか、見なくても容易に想像がついた。普通の人間なら吐き気を催すような地獄絵図も、俺にとってはただの背景音に過ぎない。
……本当に、扱いやすい
男を殺す度に見せるあの恍惚とした瞳。俺の言葉ひとつ、触れ合いひとつで命すら投げ出しかねない異常な狂執。
まろが俺を愛していることも、その愛がどれほど歪んで重いものかも、全部知っている。だけど、俺の心は一度だって動いたことはない。
感情なんてものは、相手を操るためのツールだ。
「愛されている」という絶対的な優位に立ち、たまに餌として甘い言葉やキスを与えてやれば、まろは勝手に俺の足元で尾を振り、邪魔な害虫を食い殺してくれる。俺の手を一切汚すことなく、完璧に。
ポケットに手を突っ込み、ほんの少しだけ首を巡らせる。
視線だけで路地裏の暗闇を振り返ると、血飛沫を浴びて歓喜に濡れた目を光らせるまろと視線が交差した。
俺はいつものように、柔らかく、誰からも好かれる笑みを唇に浮かべる。
「……じゃあね、屋敷で待ってるわ」
優しく諭すようなその声に、まろの体がピクリと跳ねるのが分かった。
俺がその場を立ち去り、車へと向かう背中に向けて、まろの荒い息遣いと、獲物を切り刻む刃物の音が一段と激しさを増していく。
(…そういや、仕事溜まってたな)
人間の命がひとつ消えようとしているその瞬間に、俺の頭を占めていたのはそんな心底どうでもいい雑務のことだけだった。
side:青
背中越しに聞こえる、ないこの足音。
濡れたアスファルトを鳴らす規則正しいその音が遠ざかっていくのを、俺は体中の全細胞で感じ取っていた。
「は……っ、はは……っ」
喉から漏れ出るのは、抑えきれない笑いと熱い吐息。
頬に残る、さっきの感触。ないこがくれた、ほんのひと触れのキス。
熱い。痺れる。脳みそが溶けてしまいそうなほどの快楽。
ないこが俺を愛していないことなんて、最初から百も承知だ。
あいつのあの優しい笑顔の裏に、冷徹で何も入っていない空っぽな瞳があることも、俺を都合のいい『犬』として利用していることだって、全部わかっている。
でも、それでいい。…いや、それがいい
ないこに利用される喜び。あいつの冷たい手のひらの上で転がされる快感。
俺以外の誰も、あの冷酷な本性を知らん。俺だけが、あいつの『最高に綺麗で狂ってる』部分を一番近くで見ることが許されている。
「ないこ……ないこ……っ♡」
愛おしくて、愛おしくて、狂いそうだ
あいつのために人を殺すときだけ、俺は『ないこの所有物』になれている気がする。
「……ひ、ヒっ……助け……」
足元で、無惨に切り刻まれた男がまだ浅く息を吐いていた。
ないこに金目当てで近づき、あろうことかその綺麗すぎる肌に触れようとした罪深き害虫。
俺は男の髪をぐっと掴み上げ、耳元で低く、冷ややかに囁いた。
「お前みたいなゴミが、ないこに触ろうなんて百年早いわ」
「頼む……何でも……金でも何でも出すから……!」
「金? ハッ、ないこが欲しいのはな、お前の汚い金やなくて……俺が捧げる『排除』の成果だけなんよ」
ナイフの刃先を男の首筋に深く突き立てる。
男の悲鳴を聴きながら、俺の脳裏に浮かぶのは、去り際にないこが残していったあの甘い声だ。
『……じゃあね、屋敷で待ってるわ』
「〜〜っ、あかん……! 待たせたら、ないこに怒られてまう……っ」
歓喜で手が震える。
早く、早くこのゴミを片付けて、返り血を拭って、あいつの待つ屋敷へ帰らなきゃいけない。
ないこが俺に次の『仕事』をくれるなら、俺は世界中を敵に回してだって、誰の首でも跳ねてみせる。
ドスリ、と最後の止めを刺すと、俺は返り血のついたナイフを胸ポケットに収め、愛しい主人が待つ屋敷へと走り出した。