テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「まぁまぁ、そこにかけてよ。」
八幡宮は真っ白な椅子をもう1つ用意すると、笑顔でその椅子に座るよう促す。
_避難所よりは少しだけ、安心できるような感覚をLatteは覚える。
病院っぽい雰囲気の場所には何度も通ってきたのだ_そのせいか、一瞬でも日常に還ったような感覚だ。
ゆっくり、Latteは椅子に腰掛ける。
「いやぁ、研究室が使える状態じゃなくなってから本当暇で暇で。」
「は、はぁ。」
「…ずっと私は何かを求めてたんだ〜。」
Latteは更に怪訝そうな顔をした。
「まぁまぁ!そんな顔しないで!」
ひょうひょうとする八幡宮を見て、Latteは困ったように問う。
「…なんなんですか、狂ってるんですか…?」
八幡宮は相変わらず笑っていた。
「それ、私の相方にも言われた〜。」
「…あ、相方!?」
Latteは心底驚いた顔をした。
「……えっ。」
そして、素っ頓狂な声を上げた。
「…しかも、有名な人、なんだよ?」
「…!?」
Latteのただでさえ面白かった完璧な程の驚いた顔が更に面白いものになる。
「ふっ、あはは!!ほんと面白いなぁ…。」
八幡宮は心から楽しそうに笑った。
「あー、おもしろ!」
八幡宮はそういうと、一息ついた。
「…ごめんごめん、話を戻そっか。」
「…さて、改めて…私は八幡宮っていうんだ。」
「御前崎研究所で研究を続ける、ただ1人の研究員だよ〜。」
八幡宮はそう言うと、どこからか名刺を出して、Latteに渡してくる。
Latteはそれをじっと見つめると、それを受け取った。
その表情は困惑に染まっていた、だがそんなことは気にもせず、八幡宮は続ける。
「…ここねぇ、ある人から特別に作ってもらったんだよねぇ。」
八幡宮はそう言って、周りを見渡す。
「ファリアっていう、会談とかでサポートをしてくれる人なんだけど。」
「は、はぁ。」
Latteは小さくため息をついた。
「この避難所、地下は地下でも3階くらいで出来てるんだけど、私たちの1 個上の階に彼がいてね。」
「その人も…欠片ではあるけど、プロクティルを持ってたんだよね〜。」
「え、思ってたよりプロクティル持ちっているんだ?」
Latteは疑問に思い、聞いた。
八幡宮はそれに対し、しばらく考えた。
「んー、無理やり適合させたに近いみたいだけどね。」
「…会談でずっと芝居臭い喋り方をしてるけど、あれって代償かなんかなのかなぁ?なんてね。 」
「…会談…」
「…お、会談が気になるの?」
Latteは頷いた。
Latteは言葉を詰まらせながらも、ゆっくりと話した。
「…私、ずっと探している人がいるんだよ。」
「けど、それが誰か、全くわからない。」
_医者以外にこれを話したことは、1度もない。
だが何となく話す気になったのだ。
_リィン・システムを持つのが皇だ、それなら…会談の、細かい所を知る八幡宮になら…
なにか、解決の糸口を示してもらえるかもしれないから。
八幡宮はそれを聞いた途端、心底興味深そうな目でLatteを見つめた。
その目の奥はあまりにも輝いていた、宝でも見つけたかのような目だ。
「…もしかしてさ、”リィン・システム”とか持ってない?」
Latteは驚いた顔をしたのち、ゆっくりと頷いた。
八幡宮の目は更に輝いた。
Latteは聞く。
「…レイラー?って人がテレビで言ってた”ある人”って…」
八幡宮は笑顔で大きく頷いた。
「そう!私だよ私!」
「リィン・システムの根源が気になって、御前崎研究所の研究員を名乗りつつ、リィン・システムの研究をしてるんだよね〜。」
「私ねぇ、先人の遺物にすごく興味があって。 」
「…だからレイラーさんとも繋がれたんだよね。」
「…レイラー…様?って確かに研究を第一にした財閥ですよね。」
「…私の悩みも、どうにかしてくれるんです?」
八幡宮は笑顔で答えた。
「まぁ、完全にどうにかなる…とは限らないけど、なにか策を与えてあげることはできるかも?」
琥珀のような目がこちらを見て、にやりと笑う。
「目、タヒんでるよね〜。」
Latteは驚いて、えっ、と情けない声をあげる。
「…っはは、面白いなぁ、まぁ…目がタヒんでるのは本当なんだけど…からかうとちょっと生気が戻るのが、なんか面白いんだよね。」
何がしたいのか分からない、と言いたげにLatteは八幡宮を見つめた。
台風の目のようにぽっかりとそこだけが晴れた空のような目である八幡宮とは対照に、Latteの紅い目は台風の雲のように濁りきっていた。
_だが。
興味_とうに捨てきっていたはずの感情は、少しだけ_ほんの少しだけ、戻っていくような気がした。
降り続く雨に濡れたかのような感情というものから、雨がほんの少しだけ弱まった気がするのだ。
それが良いことなのか_Latteにはもう分からない。
けれど今は、八幡宮のこと_そして、忘れていたあの人の事も_ほんの少しだけ気になるのだ。
_ドンッ_!!
雷が近くに落ち、途端、雨が降り注ぐ。
だがLatteの口は_止まらなかった。
「…わたし、ここから逃げたい。」
「…記憶の知らない場所に閉じ込められちゃったあの人に謝りたい。」
「っわたし、ずっと…後悔してる、だから…」
Latteは知らぬうちに涙を流していた。
…いつぶりだろうか?こうやって思いを吐き出したのは。
もうずっと閉じ込めていた心を…ただ吐き出した。
八幡宮は、楽しそうに笑った。
そして顔を少し近付けて、改めて問う。
「…いいの?」
_Latteは少し考えた。
だがゆっくりと頷いてみせた。
「…はい。」
「私は…動きたいんです。」
50