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_彼は、ひどく安らかな表情を浮かべ眠っている。
「…」
光輪は消え、彼は意識を落としたようだ。
ぜんこぱすもまた、能力は完全に解け、メテヲの対角でただ眠っている。
「メテヲさん!!!」
二人はメテヲのもとに駆け寄った。
館の瓦礫が足に刺さったりはしているものの、幸い命に別状は無い様子だ。
_きっと、きっとそうだろう。
_頭からは血を流し、到底無事だとは思えないが。
「…メテヲさん、ごめん。」
「…無理させちゃったよね、本当にごめん。」
ガンマスは悲しそうな表情でメテヲを見つめた。
_勿論、館の崩壊も少しは悲しい。
だが、それよりも_メテヲにまた、体を張らせてしまった事に悲しみを覚えた。
降り出した雨が、この場にいる全員を感傷に浸らせ、どうしようもない無力感と悲しみが襲った。
先程まで命を削りあっていたことが噓みたいに今は静かだ。
2人がタヒんでしまったのではないか?なんて考えが頭に浮かんでしまうほど、静かでどうしようもない。
教会の鐘もなりやしない。壊れてしまったのだから当たり前だ。
「…ごめん、なさい…」
御茶屋は涙を雨に溶け込ませ、震え声で謝った。
「私が…無力で、弱いから…」
「だから…メテヲさんにばっかり無理、させて…」
ガンマスは、そうつぶやく御茶屋を静かに止めた。
そして、首を振った。
「…違うよ、メテヲさんを立ち上がらせたのは、御茶屋だからさ。」
「…でも…」
「わたしは…ずっと…」
「弱い、それなのにずっと…」
「ううん、御茶屋は強いよ。」
「…」
2人は雨に濡れた、それなのに全く、動くことはない。
_雨以上の無力感が目の前に広がっているのだから。
雨と2人分の血が混じり合い、2人から流れる血は、乾くことを知らなかった。
それはペンキのようにじわりと広がって、ただ2人の下に、水たまりを作った。
それは、永遠に残る景色になるだろう。
_少なくとも、今ここに立つ、2人の記憶の中には。
___
「……」
「…」
Latteと八幡宮は、絶えず降り続く豪雨の前に立っていた。
_脱出は成功した。
封鎖は案外脆いものであった。
八幡宮は、改めて聞いた。
「…本当にいいんだよね?」
Latteはすぐに頷いた。
「…もう、覚悟はできてる。」
「どうなったって、いい。」
「……わたしは、走るって決めた。」
八幡宮はそれを聞き、楽しそうに笑ってみせた。
「はは、それでいいよ。むしろ…こんなに面白い人がいると思わなかった。」
「…Latteさんと出会えて嬉しいよ、私は。」
八幡宮は灰色の空を見やった。
「…この場所は、つまらなすぎるからさ。」
「…研究室をもらったとはいえ、レイラーさんとは関われないし、なにより研究が進まないんだよね〜。」
能天気そうな八幡宮に、 Latteは呆れ顔で聞いた。
「だから着いてきたんです?私に。」
「そうそう。」
八幡宮はそう言って楽しそうに笑った。
「…ね、Latteさん。」
「…なんだか、冒険物語みたいじゃない?」
虹花 ありさ @て い ふ
7,178
うp主
48
#学パロ?
「そうかなぁ。」
「…いや、そうなのかも?」
Latteはしばらく考えた。
耳を覆ってきそうなほど強く響く雨音が、2人の前に進まんという心に警告を出す。
だが2人は動じなかった。
八幡宮は空へ、手を伸ばした。
その手が雨に濡れ、白衣の袖を濡らそうとなお、それをやめることはない。
「…私は、止まらないよ。」
そう呟くと、伸ばした手を下ろし、いたずらっぽく笑った。
「…言ってみたかったんだよね〜、こんなセリフ。」
Latteは子供っぽい八幡宮を意外に思いつつ、ため息をついた。
_だが、Latteもまたこの場では”同類”といえる。
「…私も止まるつもりはないかなぁ。」
「だって…」
Latteは少し考えた。
「…謝りたいやつがタヒんで、手遅れ になったら…元も子もないし。」
必死に理由付けをするLatteに、八幡宮は笑いかける
「それだけじゃないでしょ?」
八幡宮は聞いた。
それに対しLatteは、困ったように笑った。
「…そう、それだけじゃないよ。」
「……私が、動きたいって思った。」
「私が………決めた。」
2人とも、傘を持っている訳ではなかった。
きっと明日明後日とこんな調子では風邪をひいてしまうかもしれない、それが常だ、濡れたら風邪をひく、昔からそう言われてきた。
_だが今は、雨に濡れあうことも悪くないだろう。
_2人は共犯者なのだ。
そう認識しているから。
泥臭い欲望に縋り付きたいと心から願ったのだから。
いっそう強まる雨に、2人は動じなかった。
2人は歩いた。
もう服はびっしょりと濡れて、足取りは重くなる。
水たまりに思いっきり足をつけて、ズボンも靴も中まで染みるほど濡れて汚れている。
だが、それでも_今は、止まりたくない。
2人は歩く。
歩き続ける。
雷が鳴ろうと、雨が強まろうと。
雨に、Latteの涙が混じりあった。
_今自分が、動いているという実感がある。
(…うれしいなぁ。)
(…一生、ここで止まってると思ってたのに。)
(私の足って、こんな簡単に動くんだ。)
Latteは自分の現状に、高揚感を初めて覚えた。
そして同時に、安心感を覚えた。
この瞬間を一緒に歩いてくれる人がいるというのは、あまりに心強いものだ。
「あぁ…」
「…よかったぁ。」
_そんなLatteの呟きは、灰色の雲へ向かって、煙のように昇っていった。