気づいたらされていた恋の宣戦布告。
自分の思いがよく分からない。私は紅君のことを好きになったのだろうか。
もし、そうだとして私はどうしていけば良いのだろう。
感情は複雑になっていく一方である。
クラスメイトや朔君、ましてや紅君には絶対に言えない内容を私はLINEで葵ちゃんと話していた。
「まだ、あんまり頭が追いつけてないよ…」
「気持ちは分かるわよ」
「いきなり宣戦布告されるだなんて、夢にも思わなかった」
「人生で宣戦布告されること現代じゃそうそう無いと思うわ」
葵ちゃんは共感するような励ますような文章を送ってくれている。
しかし、思い返せば葵ちゃんもサポーターとか言い出して結構ノリ気だった気がするのは気のせいだろうか。
「…一つ聞くわ 」
その一文を見た瞬間、私の身体に何か大きな衝撃が走るのが分かった。
マリーちゃんと同じ秘密を解き明かすような雰囲気を画面越しに感じる。
「紅君の事、好き?」
指が固まり、身体が震える。手汗で手が濡れているのが分かるし紅君の事を考えるたびに胸の奥が脈打った。
恐る恐る文字盤を操作する。
「分からない。けれど」
そう文を切って送り、一呼吸置いてから心の奥に隠れていた想いを綴った。
「好きかもしれない 」
送った瞬間思わずスマホを落とした。ベッドだったからスマホは無事だったけれど、私自身はそれどころでは無かった。
「じゃあ、質問するわ」
「質問?」
「紅君の事が好きか調べる質問」
どうやら葵ちゃんは感情の正体が分からない私の想いを調べるらしい。
不安なのか期待なのか。はたまた好奇心なのかは、この際どうでも良かった。
「よくある質問だけど…紅君と話してて胸がドキドキしたりする?」
恋愛でドキドキというワードは必ずと言って良い程出てくる。昔読んでいたあの漫画だって、日曜日にお母さんが毎週見てるリアルなオトナの恋愛ストーリーだって出てくる。
振り返る。私は紅君と話す時いつもどう思って、何を考えて話していただろうか。
夏に染まる体育館で紅君は何と言っていた?
「藤花」
その一言に私はどれだけ翻弄されていた?
隅で静かに行きていた私にとって、あの日から積極的に話してくれる紅君は私にとって青天の霹靂であり、同時にそよ風のような心地良さが私の中で巡っている。
二人で話していると、いや二人だけじゃなくても何故か紅君以外の声が聴こえなくなる。
別に耳が悪いわけじゃない。何かにそれ以外の音を遮断されているよな感覚なのだ。
何故聴こえないのか熱で少しショートした頭で考えてみる。
「…あ」
一つの結論に至って、 点と点が一気に繫がっていく。脳は妙にスッキリした。
「してる…紅君と話す時、ドキドキしすぎて葵ちゃんとか朔君の声が聴こえない時があるくらい」
「なるほどね。…偶に二人の世界に入るのはそういうことだったの」
葵ちゃんの返信に驚く。もしかして傍から見るとかなりあからさまだったりするのだろうか。
「もう一つ質問させて」
「うん」
周りからどう見られているか聞きたかったけれど、先に葵ちゃんからの質問に答えることにした。
「紅君の事、もっと知りたい?」
「知りたい」
私はすぐ返信した。これはずっと前から思っていた事だからだ。色々な事を知りたくて日常会話で様々な質問をしてきた。
ある時は好きな食べ物や嫌いな物を聞いたし、ある時は家族構成やバレーボールを始めた理由だった聞いた。
紅君を構成する要素を聞けて満足していた私は確かにここにいる。
「藤花ちゃん。私の予想が正しければきっとその想いは恋だよ」
「…恋」
「そう、恋」
恋と聞いた私に衝撃が走ることは無かった。むしろ元々そこにあったかのように胸にストン、と落ちてきた。
「私、紅君の事好きだったんだね」
「自覚した?」
「多分…した。もしかしたら今度顔をあわせる時、緊張しちゃうかも」
「出来るだけいつもどうりにしましょう。変に距離を取ると紅君に嫌われたと思われちゃうから」
「うん。アドバイスありがとう」
「良いわよこれくらい。もう遅いから寝ましょう」
「そうだね。おやすみ」
「おやすみ(。-ω-)zzz.」
葵ちゃんの可愛らしい顔文字に顔が少しほころびつつスマホを閉じた。
明日は部活は無いけれど早く寝ないと、と思い私はベッドに潜り込んだ。
「…紅君」
誰も居ない静まりきった夜の部屋で私の声だけが木霊していた。
「好き」
考えるだけで早まる鼓動を忘れるように強く目を瞑って外から聞こえる蝉の鳴き声に集中することにした。
恋心。考えれば考える程絡まりそうな想いを抱えて私はきっと紅君と向かい合う。
紅君は私の事をどう思っているのだろう。
求められずにはいられない夏の日差しのような焦がれた感情が身を焼いた。
この夏、君に恋をしました。
コメント
8件
まってました!!!!!✨ 葵ちゃんまじナイスゥゥゥウ!!!ようやく2人が両思いに! 夏休み辺りから追ってきた私にとっては、こんなに進展してくれるなんて嬉しい!! 朔くんと葵ちゃんは、どうやって2人の恋を正就させるのだろうか、、、 次回もめちゃくちゃ楽しみです!!✨投稿お疲れ様です!🍵
読んでくださりありがとうございます。作者のぬんです。 とうとう藤花が恋心を自覚しました。これでようやく本当の両思いになれましたね。ちなみに葵は冷静なようで物凄く焦っています。次の話は葵が朔に相談し、二人による二人の恋を成就させる為の闘いが始まります。 お楽しみに!