「これで僕の勝ちだ。」
「あぁ……。君の勝ちだ。」
「では、ミシマさん。貴方には相応の罰が下されます。覚悟しておいてください。」
「負けは負けだ。私はもうどんな罰でも受けるよ。」
「そうですか。さて、恐らく事が大きくなったので警察も動き出す頃合いです。」
「え?」
「僕は一足先にここから消えることにするよ。」
「ま、待て!自分だけ逃げるって卑怯だろ!!」
「今回のこのモールでの争いには僕はほとんど無関係なんだからね。」
「くそっ!」
「大丈夫近いうちに会えるよリナ君。君が天使創造計画に興味があるならね。」
「………。」
その言葉を残してミカゲは屋上から飛び降りる。後を追うも彼の姿は見れなかった。
「あの人は一体何を知ってるんだ?」
「……なぁリナ。そんなことより私を助けてくれ。」
「あ、わりい忘れてた。」
「立役者にその扱いはクソ野郎すぎるぞ。」
ENをほとんど消費したカナは戦姫フィールド内で大の字になって寝転んでいた。そんな彼女を手に取り肩に乗せてあげる。
「なぁミシマのおっさん。」
「なんだ?」
「あんたこの後どうなるんだ?」
「さぁな?俺にも分からんよ」
「あ、口調が会った時にもどった。」
「ミカゲさんが居たからなるべく粗相のないように心掛けていただけで、こっちの方が話しやすいから元に戻るわ。」
「なるほどね。」
「それよりアンタここを出なくていいのか?ミカゲさんの話だと警察が動く頃合なんだろ?」
「まぁ、出ていったところで後で事情聴取されるだろうしね。」
「ふん。歳の割に先を見据えてるのな?」
「先を見据えてるというより、そうなること以外想像つかないでしょ。」
「違いねぇな。」
「この際だからひとつ聞いてもいいか?」
「あ?」
「天使創造計画は具体的にどんな内容なんだ?」
「……さぁな?俺もミカゲさんから口頭で言われて初めてその存在を知ったんだ。」
「具体的には分からないって言うのか?」
「一つの都市伝説みたいな扱いを受けてるらしい。なので過信はしないようにな。」
「それでもいいから教えてくれ。」
「簡単に言えば、アンタの戦姫のように覚醒を持った戦姫を造り出す計画のことらしい。」
「覚醒を持つ戦姫の創造?」
「覚醒自体どのようにしてスキル入手するのかは不明で、覚醒したから使えるもの。というのが一般的な認識だ。
だが、昔その覚醒の存在に気付いたとある会社が意図的に覚醒を持てないか研究を開始し、その研究の計画名が天使創造計画なんだとさ。」
「何故天使?」
「そこまでは俺も知らない。だが、当時その覚醒を使える戦姫達が覇権を握っていた時代があり、皆まるで天使のような可憐さや優美さを持っていた。
しかし戦姫大戦の内容は悪魔みたいなものが多く、皮肉を込めて『天使の行進』なんて呼ばれてたらしい。」
「なるほどね…。」
「今回のこの行動理由はその都市伝説を確かめるためでもあった。 」
「と言うと?」
「君の戦姫が覚醒を使うから、天使の一人ではないか?という憶測が飛び交ったのだ。
正確に言えば、その天使創造計画で最初の成功例『堕天使』かを確かめるものであった」
「それで僕含めカナを捕まえて戦闘データとかを取りたかったわけか。」
「お前のその戦姫が天使創造計画の堕天使かそうじゃないのか、それはもう調べようがなく真相は闇に葬られたがな。」
「まだ分からないね。」
「ほぉ?」
「オッサンの話を聞いてる感じ、やっぱりあのミカゲって人は何かを知ってる。
そして僕は彼に会うために大会に出ないといけない。あの人は確かに『天使創造計画を知りたいなら、大会に出ること』と僕に告げた。なら、大会に出てその真意を確かめることが出来る。」
「そうかい…。まァせいぜい頑張りな。俺ァもうお前とは関わることは無いし、翌日の朝日を拝めそうにないしな。」
「これだけの大事を起こしたんだからな。ブタ箱行きだろうよ。」
「言われなくてもそのくらい分かる。」
「もしそうなった場合オッサンの戦姫はどうなるんだ?」
「いちばん現実味があるのが回収されて処分だろうな。」
「処分ってことは……」
「スクラップになるか、『アサルトナイト』が消えるかの二択だ。」
「それでいいのかオッサンは?」
「曲がりなりにも俺は戦姫のオーナーだ。愛着があるなしの二択を迫られたらあるに決まってる。
だから、アサルトナイト。お前はここから逃げな。少なくともこの街を出れば簡単には見つからないだろう。」
「!!」
「人間の勝手な都合で共犯させて悪かったな。刑罰はしっかり受ける。が、お前は何も悪くない。悪用した俺が悪い。お前に罪なんてものは無い。現に戦姫を使って生身の人間を襲わせたなんて一回たりとも無いからな。 」
「マスター……。」
「そろそろサツがやって来る。アサルトナイトあんたは早くここから消えな。んでもって俺のことは忘れて、コイツみたいな無計画だが真っ直ぐ進むマスターを見つけるといい」
「………!」
「さぁ!行け!!アサルトナイト!」
「くっ!私は絶対マスターの元に帰ってくる。これは誓いだ!」
「…あっそ。好きにしろよバカ戦姫が」
そう言い放ちアサルトナイトも同じく屋上から飛び降りる。その数秒後屋上のドアが開き警察と思わしき大人が数名流れ込んでくる。その中にアキトの姿があった。
「そこを動くな!戦姫犯罪対策課『カレン』がこの場を仕切らせてもらう。」
「もう既に警察は動いてたみたいだな。」
「……あれ?アキト?お前アキトだよな!?」
「無事だったかリナ!」
「アレが君が助けたいと話していた友人か?」
「そうです!お前勝ったんだな!!」
「激闘の末ね?おかげでカナは疲れ果てて今僕の肩で寝てるよ。」
「なんにせよお前が無事でほんとに良かった!!」
「友人との再開で浮かれてるところ悪いが君たちはこの事件についてこのあとすぐ事情聴取をさせてもらうよ。」
「まぁ…。それはしゃーないから受けるよ俺は」
「断ることなんて出来ないんだから大人しく受けますよ僕も」
「助かる。では先に君たち二人を私が責任もって署に連行する。お前達はミシマを確保しモール内を調べるため応援を呼べ。」
その後、戦姫犯罪対策課のカレンという人に連れられてモールの外に行き、車に乗せられて署まで連れていかれることとなる。
その姿を偶然見かけた一人の女性。
「アキトにリナ?また何か面白そうなことを私抜きで……」
そう一人つぶやき、彼らの後を追う。
こうしてモール内の戦争は幕を閉じる。だがそれは、彼の運命の序章に過ぎない……。
コメント
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ぎりぎりテノコン期間内に壱章完結させました。