テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「おい土方さん、退子さんから預かり物でさァ。……読み終わったら、あまりの熱さに鼻血吹いて死なねーように気をつけるこった」
総悟は執務室に現れるなり、一枚の紅色の便箋を土方の机に放り投げました。
そこには、総悟が昨夜、退子の震える手を無理やり握って代筆させた(という名の捏造)、「最凶のラブレター」が収められていました。
土方は正座し、神聖な儀式のように震える手で封を切りました。
そこには、山崎の地味な筆跡を絶妙に
「可憐で不慣れな女文字」に擬態させた、総悟による悪魔の文章が並んでいました。
「土方さん。昨日は夢のようなひと時をありがとうございました。
……あの日、柳の下であなたの唇を指で拒んでしまったこと、一晩中後悔して胸が痛み、眠れませんでした。
本当は、あの指先越しに、あなたの熱い吐息を……もっと深く感じていたかった。
武士としての凛々しいお姿と、時折見せる少年のような瞳……。
次にお会いする時は、もう、指で遮るような真似はいたしません。
あなたの影に、溶けてしまいたい――。 退子より」
土方十四郎、臨界突破
「………………ッッッ!!!!」
読み終えた瞬間、土方の顔面はマヨネーズどころか火山の噴火口のように真っ赤に染まりました。
「指先越しに熱い吐息を感じていた」
「影に溶けたい」……。
奥ゆかしいと思っていた退子さんからの、予想外に大胆で情熱的な告白。
「退子さぁぁぁん!! 俺もだ! 俺も影どころかマヨネーズの海に一緒に溺れてぇぇ!!」
土方は咆哮しながら、便箋を胸に抱きしめてゴロゴロと畳の上を転げ回りました。
その横で、総悟は無表情のまま、その「副長の無様な狂態」をしっかりとカメラに収めていた。
(……ククク、かかりやしたね。これでもう土方さんは退子さんの毒に当てられて、[[rb:再起不能 > リタイア]]でさァ)
一方、廊下でその叫び声を聞いていた山崎は、顔を覆ってしゃがみ込んでいました。
「……総悟さん、何書いたんですか。副長の叫び声が、これまでに聞いたことないくらい気持ち悪いんですけど……。あと『影に溶けたい』って、俺、そんなこと一文字も言ってませんからね!?」
山崎の抗議も虚しく、土方はすでに
「退子さんとの婚礼の儀」
を妄想し始めていました。
「山崎ィ! 今すぐ江戸で一番高い簪を買いに行くぞ! 退子さんに、俺の熱い想いへの『返礼』をしなきゃならねぇ!」
「仕事してくださいよ、副長ォォォ!!」
もはや止める術などは無い状態で、
総悟のプロデュースした「退子」という幻想に、真選組副長の理性が完膚なきまでに叩き潰された瞬間でした。
コメント
1件
ああもう、今回も最高でした……!(笑)土方さんの「影に溶けたい」でここまで悶えるとは思わなくて、読んでるこっちまで照れました。山崎が巻き込まれてるのも好きポイントで、地味に抗議してるのに全然通じない感じが切なくて笑える。総悟の悪魔のような笑顔が目に浮かぶし、まさかの簪買いに行く展開、次どうなるんですか!?🤍