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撮影が始まってから、数時間が経過した。
スタジオ内には、規則的なシャッター音と、お洒落なラウンジミュージックだけが響いている。
私はモニターを見つめながら、モデルさんの表情をチェックしていた。
けれど、意識の半分は、どうしても違う方向へ向いてしまう。
視線の先には、モデルの肌を丁寧に整える御子柴さんの姿。
「……うん、いい。ライト、もう少しだけ右から当ててもらえますか?」
御子柴さんが、照明スタッフに穏やかに指示を出す。
その声は低くて心地よく、騒がしいスタジオの中でも不思議とよく通った。
彼は本当に、仕事に対して誠実だ。
モデルさんの緊張を解くために見せる柔らかな微笑みも、
パレットを見つめる瞬間の、鋭く真剣な眼差しも。
(……プロの仕事って、こういうことを言うんだな)
普段、男の人を「格好いい」と思う余裕なんてなかった。
でも、目の前で自分の美学を形にしていく御子柴さんの姿は、
認めざるを得ないほど、眩しかった。