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菜津/natsu
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「…すみません、話しすぎてしまいましたね…。」
メテヲは心から申し訳なさそうな顔をしていた。
だが御茶屋は、優しく笑った。
「…仲間の皆さんのこと、…メテヲさんは…愛してたんですね。」
メテヲは、御茶屋の労いに思わず涙を流しそうになる。
_罪人として、一生償うつもりだったメテヲにとってそれは_メテヲの傷口に創膏を張るようなものであったから。
_それはメテヲにとって、突然のことだったからだ。
メテヲは、自身の能力が暴走したことを忘れていたのだ。
だから本当に被害者なのか、それともメテヲが加害者なのか、わからなかった。
メテヲは罪悪感に何度も潰されてしまいそうになった。
「…もしメテヲが本当に被害者だったら…どうしよう?」
メテヲは、そう呟いてしまう。
あ、と思う。
_静寂が流れた。
心電図の音が、無機質な部屋に響く。
「…えっと、」
1分ほど経つと、御茶屋はそれを破るように、聞いた。
「…どういうこと…です?」
御茶屋から出た、唯一の絞り出すような声だった。
メテヲはしばらく考えるが、それをはぐらかすように笑った。
「…いや、なんでもない。」
いつのまにやら夜も更け、土埃のような街と、世界から星ぼしを隔絶するかのように広がる雲が、ここから見えるであろう星空を台無しにする。
「…皇のお方が心配致しますので、私はこれで失礼します。」
「…あ、うん…。」
メテヲは、なんとも言えない、少し悲しそうだが、疑念も残った、複雑な目を御茶屋に向けていた。
「また会いましょう、メテヲさん。」
御茶屋は扉の前で、深々とお辞儀をした。
「ま、また?」
御茶屋の言葉に驚き、しばらく固まってしまう。
メテヲは困惑したまま、心電図の音だけが響く、ひどく無機質で、静寂な部屋に取り残された。
____
御茶屋は、1人で夜空の下を歩いていた。
(…うーん、私はリィン・システムを持ってはいるけど…宣教師からは、夜は危ないから気をつけろ、って言われてたっけ。)
御茶屋にはメテヲのような能力はない。
能力そのものには、個人差があるものなのだ。
(…こんなこと考えるくらいだったらさっさと帰って…)
その瞬間だった。
「動くな!!」
御茶屋に向け、そう叫ぶ声が男の声が聞こえる。
そう叫ぶ男は、御茶屋に銃口を向けていた。
「…えっ」
御茶屋はそれに驚くと思わず固まり、夜空の下で薄緑の髪が風に吹かれる。
「着いてきてくれるっつーならお前は殺さないでやる。」
「……」
御茶屋は止まり、少し震えていた。
(…ど、どうしよう?)
(…リィン・システム持ちだってバレても、バレなくてもまずいかも…)
「答えろよ。」
男は圧をかけ、向けていた銃口をそのままに、ゆっくりと2歩近づいた。
今、2人の距離は1メートルもないだろう。
「ついて行くか、行かないかくらいよぉ!!」
そう言って更に男は近づく。
ジリジリとした、砂が舞っているかのような空気が、冷え込んだ風と共に頬をかすめる。
どうしたらいいのか、分からない。
(ど、どうしよう…)
(一般人だって勘違いされてるよね…)
御茶屋は、嫌そうに答えた。
わかりました、着いて__
その瞬間だった。
「Memento Mori。」
その言葉が、どこかから聞こえてくる。
「…え?」
気が付けば、男の体に、青い炎が1つ、燃えていた。
「な、何!?」
おかしな現象に、御茶屋すら驚いてしまう。
思わず逃げ出しそうになる、だが男の胸あたりで燃える炎が、男の後ろに立つ、長い髪の、仮面と骨飾りを身につけた女が見えた。
「…え?…なに…?」
御茶屋はずっと困惑し、何が起こっているのか本当に分からない様子だった。
「…あ゛…嘘、だろ…」
着る服を焦がし、皮膚を焦がし、男の胸で燃える炎は、どんどんと穴を開けるかのように心臓まで手を伸ばそうとしていた。
「…しに、がみだ…」
男は、力が抜けたかのように倒れ込んだ。
「嘘、嘘だ…そんなこと…」
男の声は掠れ、先程まであった威圧感のある男は、もういない。
「皇の…くせに…こん、な… 」
全身を覆い尽くす炎が、女の姿をはっきりと青く照らす。
女はこちらに、ゆっくりと近づいてきていた。
女の目は怪しげに光っている。
まるで陽に照らされた深海のような瞳だ。
黒髪のロングが風に揺れて、まるで魚のようにたゆたっていた。
男は声も出せなくなり倒れると、焦げきった痕のみが残っていた。
御茶屋は驚いたような顔をした。
灯りを持っていた目からそれは失われ、元に戻っていく。
「あの〜、大丈夫です?」
女は、優しくこちらに話しかけてきた。
「あ…ありがとうございます…!」
御茶屋は感謝を述べ、頭を下げる。
「えっと…どうして助けてくれたんですか?」
「あー…」
女は少し答えづらそうにしていた。
「あのー、なんというか…」
だがまるで言葉を選んだかのように、紡いで答えてくれる。
「私、命の危険がある人がいると、見捨てられなくて。」
「…そうなんですね…!」
御茶屋は目を輝かせながら女の方を見る。
「あの、本当にありがとうございました…!」
御茶屋は女__めめに改めて頭を下げ、帰路について言った_
「…?」
女は一瞬、何か引っかかりがあるかのように御茶屋を見つめるが、すぐに目をそらす。
(…気のせい…ですよね?)
_夜空の下、御茶屋は少しだけ早歩きで帰っていた。
「はぁ…宣教師様のこと心配させすぎたかもなぁ…。」
「怒られ…はしないか…。」
そんなことを考えながら、御茶屋は歩いた。