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kaede🍁
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これは、最近演技が話題になっている目黒と阿部が主演で共演した神様の恋の物語。
❤️💙と💛💜も映画に出ます。
村の外れ。
山へ続く道の途中に、小さな家があった。
そこで阿部は一人で暮らしていた。
物心がついた頃には、もう一人だった。
父も母も知らない。
捨てられたのか。
それすら分からなかった。
それでも生きてきた。
藁を編んで籠や草履、縄を作る。
それを村人に渡して、少しの米や野菜をもらう。
裕福ではない。
冬になれば寒さで指が動かなくなることもある。
それでも困った時には、村人が食べ物を分けてくれた。
だから阿部は、この村が嫌いではなかった。
ここ数年。
村は不作に苦しんでいた。
春になっても作物が育たず、夏は雨が少ない。
秋の収穫もわずか。
そして今年の冬。
村の蓄えは、とうとう底が見え始めていた。
その日。
阿部は日が沈む少し前に家へ戻った。
「……寒い」
かじかんだ手を息で温めながら戸を開ける。
その瞬間、違和感があった。
甘い香り。
花のような。
木のような。
嗅いだことのない匂い。
家の中には誰もいない。
それなのに部屋の真ん中。
小さな香炉から細い煙が上がっていた。
「誰か、入った……?」
ゆっくり近付く。
その時。
急に身体が重くなった。
「……え」
足に力が入らない。
異常なほど眠い。
「なに、これ……」
壁へ手を伸ばす。
でも届かない。
膝から崩れ落ちる。
最後に見えたのは、香炉から立ち上る白い煙だった。
次に目を開けた時。
寒かった。
頬に冷たい風。
背中には硬い地面。
起き上がろうとして、動けないことに気付く。
手首と足首。
縄できつく縛られている。
「……何?」
声が震えた。
周りには村人たち。
見慣れた顔。
米を分けてくれた人。
寒い日に火鉢へ当たらせてくれた人。
藁を高く買ってくれた人。
みんな阿部を見ていた。
けれど誰も目を合わせない。
「……どうして」
答える人はいなかった。
阿部の身体には見慣れない白い着物。
髪にも飾りが付けられている。
周囲には灯り。
供物。
酒。
米。
乾いた野菜。
そして古びた祭壇。
そこで、ようやく分かった。
これは祭りではない。
儀式。
ずっと昔。
誰かが話していた。
土地が枯れた時。
雨が降らない時。
作物が育たない時。
山に棲む神へ供物を捧げる。
それでも駄目なら。
最後は。
人を捧げる。
神様に生贄を捧げれば村は救われる。
そんな昔話。
「……俺なんだ」
小さく呟く。
誰も否定しなかった。
怖い。
当然怖かった。
死ぬのかもしれない。
何をされるのかも分からない。
逃げたい。
助けてほしい。
でも、縄を引きちぎろうとはしなかった。
村人たちは苦しかったのだろう。
子どももいる。
老人もいる。
食べ物がなければ、みんな死ぬ。
自分は一人。
家族もいない。
守るものもない。
だから選ばれた。
きっと、そういうこと。
悲しかった。
ずっと良くしてくれていた人たちだったから。
誰か一人くらい、嫌だと言ってくれたのだろうか。
差し出したくないと。
そう言った人はいたのだろうか。
聞く勇気はなかった。
やがて儀式が終わる。
一人、また一人。
村人がその場から離れていく。
誰も阿部に声をかけなかった。
最後の足音が遠ざかり。
阿部は一人になった。
冷たい冬の夜。
雪が少しずつ落ちてくる。
阿部は静かに目を閉じた。
これから死ぬのだろう。
それなら。
せめて苦しくなければいい。
そう思った。
その時。
雪を踏む静かな音。
阿部がゆっくり目を開ける。
祭壇の向こう。
一人の男が立っていた。
美しい。
最初にそう思った。
夜のように深い紺色の着物。
黒い髪。
白い肌。
端正な顔。
人間とは少し違う。
見ただけで分かる。
あれが神様。
男はゆっくり阿部へ近付く。
阿部は動けない。
目を逸らすこともできなかった。
目の前で神様がしゃがみ、阿部の顔をじっと見る。
怖くて身体が震えた。
それに気付いたのか。
神様はほんの少し笑った。
「かわいいね」
優しい声だった。
だからこそ余計に怖い。
神様が阿部の頬へ指を伸ばす。
冷たいと思っていた。
でも、触れた指は不思議なくらい温かかった。
「気に入った」
楽しそうに阿部を見る。
「飼いたい」
阿部は目を見開いた。
飼う。
人に使う言葉ではない。
犬。
猫。
鳥。
そういう動物に使う言葉。
ああ。
そういうことか。
妙に納得した。
神様にとって、人間なんてその程度なのだ。
供物。
生贄。
気に入れば飼う。
飽きれば捨てる。
これから動物のように扱われるのかもしれない。
首輪を付けられるかもしれない。
言うことを聞かなければ殺されるかもしれない。
それでも阿部は抵抗しなかった。
「……分かりました」
神様が首を傾げる。
「怖くないの?」
怖い。
ものすごく怖い。
でも、それを言ったところで何も変わらない。
阿部は静かに言った。
「お好きにどうぞ」
神様の目がわずかに細くなる。
「何をされても?」
「……はい」
「殺されても?」
阿部の指が震えた。
それでも。
「村が助かるなら」
そう答えた。
神様はしばらく阿部を見つめていた。
まるで理解できないものを見るように。
そして突然、阿部の身体を抱き上げた。
「……っ」
縛られたまま。
阿部は神様の腕の中。
「面白いね」
耳元で声がする。
「……何がですか」
「君」
神様は雪の降る山の奥へ歩き始める。
「名前は?」
「……阿部です」
「あべ?」
確かめるように呼ばれる。
そして神様は少し笑った。
「今日から」
阿部は息を止める。
「俺のものね」
優しい声。
穏やかな笑顔。
それなのに逃げられない。
そう本能で分かった。
阿部は何も答えず。
神様の腕の中で、雪に消えていく村を見つめていた。
どれくらい運ばれていたのか分からない。
阿部は、いつの間にか眠っていたらしい。
身体を揺らされて目を開ける。
「起きて」
あの神様の声。
目の前には大きな門。
その向こうに立派な屋敷。
辺りは薄い霧に包まれている。
「ここは……」
「俺の家」
神様が何でもないことのように言う。
「結界の中だから」
「結界……」
よく分からない。
ただ、村からかなり遠くへ来たことだけは分かった。
神様は阿部を抱いたまま屋敷へ入る。
長い廊下。
広い部屋。
綺麗な柱。
人間の家とは明らかに違う。
それなのに不思議なくらい静かだった。
神様は一つの部屋へ入ると、阿部を床へ下ろした。
「……っ」
冷たい。
冬の冷気を閉じ込めたような床。
阿部は身体を縮める。
神様は手首と足首の縄を解き始めた。
長く強く縛られていたせいで、手首は赤くなっている。
「痛い?」
「……大丈夫です」
神様は何も言わず、縄をすべて解いた。
「待ってて」
それだけ言って部屋を出ていく。
阿部はその場から動けなかった。
身体は冷え切り、足にも力が入らない。
少しして神様が戻ってきた。
腕の中に何かを抱えている。
「……?」
そのまま阿部の膝へ渡された。
小さな子犬。
「え……」
阿部が子犬を見る。
神様は何も説明せず、また部屋を出ていった。
「……待って」
声をかけても振り返らない。
襖が閉まる。
阿部は子犬を見る。
まだ生まれて、それほど経っていないように見える。
そして震えている。
「……寒いよね」
阿部自身も歯が鳴りそうなくらい寒かった。
でも子犬の身体はもっと冷たい。
「大丈夫」
何が大丈夫なのか、自分でも分からない。
それでも胸へ抱き寄せる。
着ているのは薄い白装束。
布団も火鉢も上着もない。
食べ物も水も。
寒さを凌ぐものすらない。
阿部は少しだけ理解した。
あの神様は、自分を本当に動物のように扱うつもりなのだ。
だから同じように犬を一匹与えた。
そういうことなのかもしれない。
「……君も」
子犬の背中を撫でる。
「飼われてるのかな」
子犬は小さく鼻を鳴らした。
阿部はできる限り、その身体を腕の中へ包む。
「何か……」
屋敷の中を探せば、何かあるかもしれない。
立ち上がろうとする。
「……っ」
一歩踏み出しただけで膝が崩れた。
もう歩けない。
寒さと疲労。
何も食べていない。
儀式の前に吸わされた香。
全部が身体に残っている。
阿部は子犬を抱いたまま床へ座り込む。
「ごめんね」
小さな声。
「俺、何もしてあげられない」
子犬が阿部の胸へ顔を埋める。
「寒いよね」
「俺も寒い」
少し笑おうとした。
でも、できなかった。
このまま誰も来なければ死ぬ。
自分だけではない。
この子犬も。
「……嫌だ」
初めてそう思った。
村のためなら死んでもいい。
神様に好きにされてもいい。
そう思っていた。
でも腕の中に守らなければいけないものが一つできただけで。
死にたくなくなった。
「君は……」
震える手で子犬を撫でる。
「生きたいよね」
答えはない。
視界が滲んだ。
「ごめんね」
涙が一つ落ちる。
「俺じゃ」
「助けてあげられない」
阿部は子犬をさらに強く抱きしめた。
せめて最後まで一人にしないように。
身体の感覚が少しずつなくなっていく。
寒いはずなのに。
だんだん、それすら分からなくなる。
「……ごめんね」
最後にそう呟いて、阿部は意識を失った。
次に目を覚ました時。
最初に感じたのは温かさだった。
「……?」
寒くない。
身体が柔らかい何かに包まれている。
ゆっくり目を開ける。
視界に入ったのは、美しい女性の顔だった。
長い髪。
白い肌。
人間とは思えないほど整った顔。
その女性が阿部を腕の中へ抱き込んでいた。
「……起きた?」
少し離れた場所から男の声。
そちらを見る。
また神様。
こちらも息を呑むほど美しい。
男の神様が女性へ言う。
「翔太」
「ん?」
「起きたよ」
翔太と呼ばれた女性の神様が阿部を覗き込む。
「大丈夫?」
阿部は答えられない。
神様が二人。
あの紺色の着物の神様とは違う。
でも同じ。
人ではない。
本能で分かる。
翔太は阿部の額へ触れる。
「まだ冷たいね」
そして少し呆れたように言った。
「めめ」
「世間知らずで」
「人間の扱い方、知らなかった」
「……めめ?」
阿部がかすかに呟く。
誰のことなのか、すぐに分かった。
あの紺色の着物の神様。
翔太はため息をつく。
「犬と一緒に置いとけばいいと思ったんだって」
男の神様も呆れた顔をする。
「冬の部屋に?」
「そう」
「……それは死ぬでしょ」
「だから死にかけてた」
阿部は黙って二人の会話を聞いていた。
理解が追いつかない。
翔太がさらに言う。
「めめさ」
「人間が犬を食べると思ってたんだって」
「……」
阿部が固まる。
「犬を……?」
「うん」
翔太が阿部を見る。
「お腹空いてると思ったから」
「食べるものとして渡したみたい」
阿部は腕を見る。
今、子犬はいない。
「犬……」
声が震える。
「犬は?」
「大丈夫」
翔太がすぐに答える。
「元気」
「……生きてる?」
「生きてる」
その一言で身体から力が抜けた。
「よかった……」
思わず涙が出る。
翔太が少し驚く。
「自分も死にかけてたのに犬の心配?」
阿部は何も言わない。
「変な人」
でも、その声は少しだけ優しかった。
男の神様が立ち上がる。
「もう寒くないよ」
そう言って襖を開く。
阿部は目を見開いた。
外の景色が変わっていた。
雪も凍えるような風もない。
庭の木々は。
赤。
橙。
黄色。
美しい紅葉。
まるで冬から秋へ戻ったようだった。
「……秋?」
男の神様が頷く。
「目黒が変えた」
「……目黒?」
「君を連れてきた神様」
初めて名前を知った。
「結界の中だけね」
男の神様が庭を見る。
「人間は冬だと死ぬって教えたら」
「慌てて秋にした」
阿部は言葉を失った。
殺すつもりではなかったらしい。
凍えさせるつもりも。
犬も。
食べさせようとしただけ。
それでも怖いものは怖い。
翔太が阿部を見る。
「安心した?」
阿部は少し考え、正直に首を横に振った。
「してません」
一瞬の沈黙。
男の神様が小さく笑う。
翔太も。
「だよね」
と笑った。
その時。
廊下の向こうから足音。
阿部の身体が反射的に強張る。
襖の向こうに、紺色の着物。
阿部を見て立ち止まる。
「……起きた」
最初に会った時と同じ。
綺麗な顔。
でも今は少しだけ困ったように見えた。
「ごめんね」
目黒が言った。
阿部は目を見開く。
神様が人間に謝った。
目黒は少し考えて続ける。
「人間って」
「思ってたより」
「すぐ死ぬんだね」
「めめ」
翔太が低い声を出す。
「そういう言い方やめな」
「……?」
目黒は本当に分かっていない顔をしていた。
阿部はその姿を見ながら。
ようやく少しだけ理解した。
この神様は恐ろしいのではない。
多分。
何も知らない。
人間が寒さに弱いことも。
食べ物が必要なことも。
犬を食べないことも。
怖がることも。
悲しむことも。
何一つ知らない。
それが、恐ろしかった。
コメント
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あああ読んだ読んだ!!😭💕 まずね、阿部が生贄にされて神様のところに連れて行かれる展開、すごく切なくて一気に引き込まれたよ…! 特に子犬を「食べるもの」として渡したって真相、めめ(目黒)の人間に対する無知っぷりが愛おしくて笑っちゃったんだけど、同時に阿部の「死にたくない」って思う気持ちがすごく響いた…。翔太と男の神様とのやり取りもあたたかくて、続きが気になる〜!!🌸