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北実side
次の日の朝、俺たちは街を発ち、いつもの王都へ戻ることになった。
行きと同じく馬車。
違うのは、全員がすっかり気を抜いていることくらいだ。
米太「昨日のオーク、思ったより歯応えあったよな!」
嗣行「いや、あれは数が多かっただけだろ。」
米太「でもさ〜」
あちこちで会話が飛び交い、笑い声が混じる。
森を抜けた安心感もあって、馬車の中は妙に賑やかだった。
そんな中、エイラがふと思い出したように口を開いた。
エイラ「そうだ皆さん、念のため確認させてください。」
その声に、自然と視線が集まる。
エイラ「体に異常はありませんか? 髪や目の色が変わったり、羽が生えたり……何か、普段と違う点はないですか?」
一瞬、馬車の中が静まった。
米太「Feather!?」
廉蘇「生えてねえよ。」
南実「目もいつも通りだと思うけど…」
各々が冗談交じりに答えていく。
結果として、全員──特に異常はなかった。
エイラ「問題なさそうですね。」
エイラはほっとしたように頷いた。
エイラ「実は、勇者として召喚される際、ごくまれに体質が急激に変化する方がいるんです。見た目だけでなく……成長が極端に遅くなり、ほとんど不老のようになった例も過去にはありました。」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に引っかかるものがあった。
北実(……成長が遅くなる。時間が、ずれる……?)
引っかかることはあったが、考えをまとめる前に、馬車は王都の門をくぐった。
冒険者ギルドで依頼完了の報告を済ませていると、聞き覚えのある声がした。
?「お、ちょうどいいところに!」
振り向くと、そこにいたのはいつか強くなる隊の四人だった。
バルド「今からダンジョン行くんだけどさ。」
バルドが親指で奥を示す。
バルド「一緒にどうだ?」
エイラ「いいですね!」
エイラは即答だった。
エイラ「実戦は何度あっても困りません!」
レイヴン「……はぁ。」
レイヴンは露骨に面倒そうな溜め息をつく。
レイヴン「まぁ、断る理由もないか。」
結局、誰も反対はしなかった。
北実(昨日の違和感は、まだ消えないけど。)
今はそれより、目の前の戦いだ。
俺はギルドの出口を見ながら、無意識に拳を握っていた。
王都から少し離れた場所に、そのダンジョンはあった。
初心者向け、とはいえ外観はそれなりに物々しい。
岩肌に口を開けた入り口からは、ひんやりとした空気が流れ出していて、これから潜る場所が“危険区域”であることをはっきり主張していた。
米太「ここか!」
レイヴン「懐かしいな…」
そんな会話をしながら、全員で入り口へ向かう。
……が。
係員「すみません、そこの方はちょっと。」
係員の声に、足を止められたのは──レイヴンだった。
レイヴン「……あ?」
レイヴンが面倒くさそうに振り返る。
係員は慣れた様子で書類を確認し、ため息混じりに言った。
係員「あなた、過去にこのダンジョンで内部構造を一部破壊していますね。」
レイヴン「……ああ。」
係員「その件で、ここは出禁になっていますので。」
一瞬、沈黙。
零王「ダンジョン壊したんね!?」
空斗「初心者向けで!?」
太希「やっぱりか……」
周囲から小声が飛ぶ中、レイヴンは特に反論もせず、肩をすくめた。
レイヴン「…不可抗力だ。」
係員「不可抗力でダンジョンは壊れません。」
きっぱり言い切られて、さすがのレイヴンも黙る。
レイヴン「…じゃあ、俺は外で待ってる。」
そう言って、レイヴンは一冊の少し分厚い本をどこからか取り出して読み始める。
レイヴン「終わったら呼べ。」
エイラ「…では、我々は中へ行きましょうか。」
エイラが仕切り直すように言う。
こうして、レイヴンを入り口に残し、
勇者メンバー、エイラ、そしていつか強くなる隊の面々で、俺たちはダンジョンの中へ足を踏み入れた。
石の床を踏みしめる音が、静かに響く。
北実(初心者向け、か。)
──油断はしない方がいい。
そう思いながら、俺は暗がりの奥を見据えた。
石造りの通路を進み始めると、待ってましたと言わんばかりにいつか強くなる隊が前に出てきた。
バルド「よーし、まずは説明だな!」
一番前を歩きながら、バルドが胸を張る。
いかにも先輩という態度だ。
バルド「このダンジョンは三層構造だ。広さはそこそこ、分岐も多いが迷うほどじゃねぇ。難易度は初心者向け……とはいえ、油断したやつからやられるタイプだな。気を抜くなよ!」
豪快な声が通路に響く。
実際、歩いてみると天井も高く、足場も安定している。確かに入門用って感じだ。
ソフ「次、俺〜」
すぐ後ろから、ソフがひょいっと手を挙げた。
ソフ「出てくる魔物は、ゴブリンとか、コボルトとか、基本よわいけど、たまに数で来るからさ〜、囲まれないようにすんのが大事だぞ!」
説明はゆるいが、言ってることは一応ちゃんとしている。
間抜けそうに見えて、経験はそれなりにあるんだろう。
ロッカ「あとあと! アイテムの話するよ!」
突然、ロッカが横から割り込んできた。
ロッカ「ここね、宝箱がちょこちょこあるんだよ。中身はポーションとか、使い捨ての魔道具とか! あと、たま〜に変なの入ってる! 前に俺、意味わかんない光る石拾った!」
ユスティナ「ロッカ、説明が雑すぎです。」
すかさずユスティナがフォローに入る。
ユスティナ「正式には、このダンジョンでは回復薬、解毒薬、簡易武器強化スクロールなどが入手可能です。初心者の方でも扱いやすい物が多いので、積極的に回収して問題ありません。ただし──」
そこで一拍置いて、ユスティナは少しだけ声を低くした。
ユスティナ「宝箱に擬態した魔物も確認されています。開ける前の確認は、必ず忘れないでください。」
ロッカ「そうそう、それそれ!」
ロッカがうんうん頷く。
北実(……役割分担、妙にできてるんだな。)
先輩風は強いけど、説明はわかりやすい。
エイラも満足そうに頷いているし、他のみんなもちゃんと聞いていた。
バルド「ま、こんな感じだな!」
バルドが振り返ってニッと笑う。
バルド「実地で覚えるのが一番だけどな。」
ダンジョンの奥から、微かに何かが動く気配がした。
説明通りなら、そろそろ最初の魔物だ。
俺は自然と、武器に手を伸ばしていた。
しばらく進んだところで、前方の曲がり角から、がさがさと嫌な音が聞こえてきた。
バルド「……来るぞ。」
そう低く言ったのはバルドだ。
次の瞬間、薄暗がりの奥からゴブリンが数体、武器を振り回しながら姿を現した。
バルド「ほらな! 俺の勘、当たっただろ!」
バルドはやたら誇らしげに笑う。
バルド「俺のスキルはな、ここが危ねぇってのを感じ取れるんだ。攻撃とか罠とかな!」
そう言って前に出る。
バルド「……たまに外れるけどな!」
北実(本当にたまになのか…?)
突っ込む前に、ソフが剣を構えながら軽い調子で続けた。
ソフ「じゃ、俺もいくわ。俺のスキルは、致命傷受けそうになるとさ〜、なんか偶然が重なって助かるんだよな〜。」
日向「運がいいってことですか?」
日向が確認すると、
ソフ「まあ、そんな感じ! でも致命傷じゃないと普通に当たる!」
注意点が致命的すぎる。
その時、ゴブリンの一体がソフに斬りかかる。
危ない、と思った瞬間、足元の石にゴブリンがつまずき、刃は逸れた。
ソフ「ほらな!?」
ソフがドヤ顔で親指を立てる。
ロッカ「じゃあ次!」
ロッカが前に出て、両手を広げる。
ロッカ「相手を弱くするんだよ! 一応!あと、効果の強さは毎回ランダムだけど!」
…一応で発動するな。
ロッカがウキウキでスキルを発動させ、ゴブリンたちの動きが鈍くなった……ように見えたが、同時にロッカ自身もふらっとよろけた。
ロッカ「あ、また自分にもかかったかも!」
ユスティナ「ロッカ、下がってください!」
ユスティナが即座に声を上げる。
そのユスティナは、控えめに手を掲げた。
ユスティナ「私のスキルは、ほんの少しですが仲間の体力を回復できます。」
淡い光が走り、前に出ていたバルドの傷がわずかに癒える。
ユスティナ「大きな回復はできませんので、無理はなさらず。」
北実(全体的にクセが強いな……)
とはいえ、弱体化したゴブリン相手に、この人数だ。
勇者メンバーも加わり、あっという間に数体を倒し切った。
最後の一体が倒れると、四人は揃って胸を張った。
バルド「な? 俺たちに任せときゃ安心だろ!」
ソフ「完璧な連携だったよな〜」
ロッカ「弱体化、今回はいい感じだったでしょ!」
ユスティナ「皆さん、お怪我はありませんか?」
ものすごく自慢げだ。
エイラ「すごいですね!」
エイラが素直に拍手すると、さらに調子に乗る。
北実(……悪い人たちじゃないんだけどな。)
その後も進むにつれて、敵は何度か現れた。
基本は勇者メンバーが対応し、時々いつか強くなる隊が前に出ては、スキルを披露して満足そうにしている。
そうして、階段の前に辿り着いた。
バルド「次の階層だな。」
バルドが言う。
石段の先は、さらに暗く、空気も重い。
北実(初心者向け、とはいえ……)
俺は一度、周囲を見渡してから、階段へ足を踏み出した。
階段を下りきると、空気が一段と湿っぽくなった。
壁に生えた苔が淡く光っていて、さっきの階層よりも明らかに奥だと分かる。
南実「雰囲気変わったね!」
南実が軽く言う。
南実「ここからちょっと強くなる感じでしょ!」
その直後──
低い唸り声と共に、影が動いた。
ゴブリンより一回り大きい個体。
筋肉質で装備もましになっている。
その後ろから、犬のような顔つきをしたコボルトが数体飛び出してきた。
国雲「上位種アルね!」
国雲が腕の小手を鳴らす。
国雲「でも初心者向けだし余裕アルよ!」
日向「油断は禁物ですよ。」
日向が刀を抜く。
戦闘は一気に始まった。
俺は戦鎚を振り上げ、突っ込んできたゴブリン上位種の胴を真正面から叩き潰す。
鈍い衝撃と共に、巨体が壁まで吹き飛んだ。
米太「Nice smash!!」
米太が叫びながら銃を連射しつつ剣に持ち替える。
米太「Next!行くぜ!」
コボルトが飛びかかるが、嗣行の大剣が横薙ぎに払われ、一撃でまとめて倒れる。
嗣行「数は多いが脆いな。」
廉蘇「だな。」
廉蘇が大鎌で残りを刈り取る。
廉蘇「雑魚に毛が生えた程度だ。」
その横で、
ロッカ「ほらほら〜」
ロッカが手を振ると、魔物の動きが鈍くなる。
ロッカ「今日いい感じじゃない?」
バルド「今の当たりだな!」
バルドが笑い、
バルド「危険感知もさっきから冴えてる!…冴えてない時の方が多いけど。」
ユスティナが小さく回復を入れ、ソフは相変わらず運だけで致命傷を回避していた。
結果、魔物たちはあっという間に全滅。
南実「楽勝だね〜」
南実が笑う。
確かに、苦戦するほどじゃなかった。
さらに進み、三階層へ続く階段が見えてきた時だった。
冒険者1「助けてくれ!!」
冒険者2「誰か!誰か、蘇生魔法使える人はいないか!?」
必死な叫び声が響いてくる。
階段の脇に、数人の冒険者が倒れ込むように集まっていた。
その中央には、動かない仲間が横たわっている。
冒険者2「もう時間が……」
冒険者3「無理だ、蘇生なんて使える奴いるわけ……」
諦めが混じった声。
その時、エイラが静かに前へ出た。
エイラ「私が行きます。」
エイラは迷いなく遺体のそばに膝をつき、両手を重ねる。
淡く強い光が広がった。
詠唱は短く、動きも淀みない。
次の瞬間──
冒険者4「……う、あ?」
倒れていた冒険者が息を吹き返した。
冒険者1「生き返った……!?」
冒険者3「本当に蘇生した!?」
エイラは立ち上がり、何事もなかったように微笑む。
エイラ「間に合ってよかったです。」
息一つ乱れていない。
その冒険者パーティーのリーダーらしき青年が深く頭を下げた。
リーダー「ありがとうございます……俺たち、結成したばかりで……ここ初心者向けだし、一階二階が楽だったから油断して……三階層のボスにやられました…」
震える声で続ける。
冒険者2「でも……こいつが宝石病じゃなくて、本当によかったよな……」
南実「宝石病?」
南実が首を傾げる。
南実「なにそれ?」
国雲「それにこの蘇生魔法?も初めて見たアル。」
国雲も腕を組む。
エイラは静かに頷いた。
エイラ「では、順に説明しますね。」
少し間を取ってから話し始める。
エイラ「まず、蘇生魔法です。これは一度亡くなった方を生き返らせる魔法で……使える人はとても少なく、消費する魔力も膨大です。そして、発動には条件があります。まず遺体が残っていること。そして、死後二十分以内であること。このどちらかが欠けると、成立しません。」
皆、息を呑む。
エイラ「…次に、完全蘇生魔法です。」
エイラの声が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
エイラ「これは……死後どれだけ時間が経っていても蘇生できる魔法です。体の一部──骨の欠片ひとつと、その方が生前大切にしていたものがあれば発動できます。ただし、必要な魔力量は桁違いで……一般の方では発動どころか耐えることすらできませんし、そもそも存在が伝説であるとされています。」
その目は、どこか遠くを見るようで。
まるで──憧れているみたいだった。
誰も口を挟まなかった。
エイラは気を取り直すように続ける。
エイラ「最後に宝石病です。これは、人が死の間際から徐々に体が宝石へ変わっていく病気です。亡くなると完全に宝石となり、その状態では蘇生魔法や完全蘇生魔法は使えません。」
エイラ「また、刻まれる模様はその人の魔力量によって異なり、とても美しいため……皮肉にも『世界一美しい病』と呼ばれています。そして、宝石として高値で取引されてしまうこともあります。時には宝石店の商品に混ざっていることすら……」
場が重く沈んだ。
南実「……最低だね。」
南実がぽつりと言う。
冒険者の一人が苦笑した。
冒険者3「だから、こいつが宝石病じゃなくて本当に助かったんだ……」
エイラは静かに頷いた。
エイラ「本当に、よかったですね。」
エイラ「さて。」
エイラが階段を見る。
エイラ「次は三階層です。ボスがいますので、皆さん気を引き締めてください。」
南実「了解!」
南実が双剣を回す。
国雲「準備は万全アル!」
国雲が拳を鳴らす。
俺は戦鎚を握り直した。
北実(初心者向けでも、油断はしない。)
勇者メンバーは隊列を整え、
三階層へと足を踏み出した。
三階層へ降りた瞬間、空気が一気に重くなった。
天井は高く、広い空間が続いている。
たいまつの光が揺れて、影が不気味に伸びていた。
南実「ここが本番って感じだね。」
南実が軽く肩を回す。
南実「でも、まだ余裕でしょ!」
その言葉通り、すぐに魔物が現れる。
牙を剥いたオークが二体。
その後ろには、杖を持ったゴブリンシャーマンが魔法陣を展開していた。
清雨「後衛がいるアルよ!」
清雨が叫ぶ。
日向「任せてください!」
日向が一気に距離を詰め、刀でシャーマンの詠唱を断ち切る。
直後、廉蘇の大鎌がオークの脚を刈り取り、嗣行の大剣がとどめを刺す。
米太「Too easy!!」
米太が笑いながら銃をしまう。
残りのオークも、俺の戦鎚でまとめて吹き飛ばした。
空斗「この階層も楽勝だね〜」
陸斗「気を抜くな。この先に他より少し強い生物がいる。おそらくボスだろう。」
空斗がにこっと笑い、陸斗がおさめる。
その後も、オークや強化されたゴブリンたちが次々現れたが、
苦戦する場面は一度もなかった。
ロッカ「ここ、こんなに簡単だったっけ……?」
ロッカがぽつりと呟く。
ユスティナ「いや、あの人たちが規格外なだけですね……」
ユスティナが遠い目をする。
やがて、大広間に辿り着いた。
玉座のように積み上がった岩の上に、
通常のゴブリンの倍以上の体格をした存在が座っている。
金属の装飾を身につけ、巨大な棍棒を握った──
愛蘭「ゴブリンキング……!」
低く唸り声を上げ、こちらを睨みつけてきた。
南実「ようやくボスだね。」
南実が楽しそうに言う。
俺は戦鎚を構え、南実と目を合わせた。
北実「南、合わせるか?」
南実「もちろんでしょ!」
次の瞬間──
南実が俺の背中を掴み、全力で放り投げた。
南実「いっけええええ!!」
同時に、南実の能力で俺の体が前方へ一気に加速する。
風を切る感覚。
俺は戦鎚に力を集中させた。
ずしり、と異常な重さが腕に伝わる。
戦鎚の質量が跳ね上がり、
まるで小さな隕石みたいになった。
空中から叩き落とされた一撃が、
ゴブリンキングの頭部に直撃する。
轟音が鳴り響く。
床が砕け、衝撃波が広がった。
ゴブリンキングは悲鳴を上げる暇もなく、
その場に崩れ落ち、動かなくなった。
──沈黙。
南実「……終わりだね。」
南実があっさり言う。
国雲「ボス、ワンパンアル!」
国雲が謎に胸を張る。
ロッカ「いやいやいやいや!!」
ロッカが叫ぶ。
ロッカ「初心者向けの倒し方じゃないでしょそれ!!」
バルド「はは……」
バルドは乾いた笑いを浮かべる。
バルド「毎回思うけど、規模が違うな……」
ソフは地面に座り込み、
ソフ「俺、もう驚くの疲れた……」
ユスティナも苦笑いだった。
ユスティナ「唖然とはしますが……正直、見慣れてきましたね……」
エイラは穏やかに微笑む。
エイラ「流石です、皆さん。これでダンジョンクリアですね!」
壁の奥で魔法陣が淡く光り、攻略完了の合図が響いた。
北実(あっという間だったな…)
俺は戦鎚を肩に担ぎ、仲間たちを見回す。
初ダンジョン──完全制覇。
ダンジョンの外へ出ると、ひんやりした風と一緒に見慣れた姿があった。
入り口の壁にもたれかかり、本を読みながら待っている──レイヴンだ。
…床には数人の盗賊らしきグループがぶっ倒れている。
レイヴン「終わったか。」
顔も上げずにそう言う。
レイヴン「相変わらず早いな。」
北実「いや待て。お前何やったんだ?」
レイヴン「こいつらが暴れてたから静かにさせたまでだ。」
レイヴンはページをめくりながら淡々と返した。
北実(何やってんだこの人……)
…誰も何も言えなかった。
そのまま戦利品を係員に渡し、換金してもらう。
袋の中でチャリンと鳴る硬貨の音に、米太がテンションを上げる。
米太「Money! Money! 今日も大勝利だな!!」
嗣行「うるさい、静かにしろ。」
嗣行が即ツッコミを入れる。
寮へ戻ってからも、熱はまったく冷めなかった。
南実「ゴブリンキング、マジで一撃だったよね!」
国雲「床割れるとか聞いてないアル!」
日和「動画にしたかった……!」
談話スペースは完全に戦果報告会になっていた。
バルド「いやー、俺たちも昔はああやって騒いでたなぁ…」
バルドがしみじみ言う。
ユスティナ「レベルが違いすぎますけどね……」
ユスティナが苦笑する。
しばらくして、ふと俺は気になっていたことを聞いた。
北実「そういえばエイラ。勇者って、最後に召喚されたのいつなんだ?」
エイラは少し考えてから答える。
エイラ「たしか、約七十年前だったと思います。」
南実「七十年……」
南実が目を丸くする。
南実「そんなに前なんだね。」
胸の奥が、またざわついた。
七十年前の子供たち。
図書館の記録。
妙に繋がる数字。
北実(やっぱり、偶然じゃない気がする……)
その空気を切り替えるように、エイラが手を叩いた。
エイラ「そういえば、皆さん。明日は自由行動の日になります!」
米太「自由!?」
米太が跳ねる。
翡翠「ヒスイはいっぱい特訓する!」
翡翠も楽しそうだ。
俺は南実たちと顔を見合わせた。
北実「……俺たちさ。」
俺が小声で言う。
北実「アリシアの五人について調べてみないか?」
南実「資料館、行くってことだね。」
南実がすぐに察する。
日向「賛成です。」
日向が静かに頷く。
国雲「面白そうアル!」
国雲も乗り気だ。
北実(海斗、陸斗、空斗も誘えば、情報を集めやすいな。)
明日は──探る日になりそうだ。
その夜。
騒ぎ疲れた俺たちは、それぞれの部屋へ戻った。
ベッドに倒れ込みながら、今日の戦いを思い返す。
初心者向けダンジョン。
でも、ずっと妙に引っかかる違和感。
七十年前という数字。
北実(あいつらは、やっぱり何かおかしい。)
そう考えながら、意識はゆっくりと沈んでいった。
──明日は、真実に少し近づくかもしれない。
to be continue