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ゼイン・オルヴァンside
廊下の石床を踏みしめる足音が、規則正しく響く。
今日の任務は特別ではないが──いや、正確にはボス、ラフレン・ヴォワ様に呼ばれた以上、特別なものだ。
数週間前に桃影のサーカス団に参謀として加わって以来、この廊下も、団の本拠地も、すべての空気に緊張を感じる。
だが、ボスのいる部屋に近づくにつれ、胸の奥に、知らずに熱がこもる。
ゼイン(戦場とは違う……しかし、ここに立つと、また別の戦いが始まる気配がある。)
扉の前で一度深呼吸。
扉を開けると、視界に飛び込んできたのは──ラフレン様だった。
桃色の髪と瞳、軍服とピエロ衣装が絶妙に混ざったような不思議な姿。
部屋全体が、ラフレン様の存在で柔らかく、しかし不思議な空気に包まれている。
ラフレン「お、ゼイン! よく来たね〜!」
ラフレン様は笑顔で手を振る。口調はゆるく、しかし一言ひとことに重みがある。
ゼイン「ラフレン様……お呼びでしょうか。」
俺は背筋を伸ばし、整った声で返す。
このときばかりは、参謀としての真面目な自分しか出せない──戦闘時の荒々しい自分は封印だ。
ラフレン「うんうん、今日はね、ちょっと面白いことを考えていてさ。」
ラフレン様は部屋のあちこちを見渡し、まるで空気を楽しむかのように歩き回る。
ラフレン「いや〜、ゼインにはいつも任せっぱなしで申し訳ないね。ほんと、助かってるよ。」
ゼイン(こんな言葉を、直接聞ける日が来るとは。)
胸の奥で少し熱くなる。
ラフレン様への忠誠は、日々増す一方だ。
前の参謀は裏切った。俺は絶対に、そんなことはできない。
ラフレン「さてさて、今日の用件なんだけどね……」
ラフレン様は椅子に座りながら、でも身体はゆるく揺れている。
ラフレン「今日開催される**魔宴会議**に、ゼインも参加してほしいんだよね。」
ゼイン「……魔宴会議、ですか?」
俺は少し身を乗り出す。
正直、名前は聞いたことがあるが詳細は知らない。前任の参謀がすべて取り仕切っていたためだ。
ラフレン様は楽しそうに笑う。
ラフレン「うんうん、説明は移動しながらでいいかな。ゼインにはちょっと歩きながら感じてもらおうと思って。」
その言葉の隙間に、やはりこの人らしい気まぐれと余裕を感じる。
ゼイン「承知しました。では、早速。」
俺は立ち上がり、ラフレン様に従う。
この瞬間、参謀としての緊張感と、戦好きな自分の昂ぶりが、胸の奥でじわじわと混ざり合う。
ゼイン(この人のためなら、何だってできる。どんな戦場でも。)
ラフレン様の後ろ姿を追いながら、俺は心の中で誓う。
今日の魔宴会議。
必ず、完璧に補佐する──いや、それ以上の働きを見せてやる、と。
廊下を歩く足音が、静かに反響する。
ラフレン様は俺の横を歩きながら、ふわりと楽しそうに語りかけてくる。
ラフレン「まずね、ゼイン。魔宴会議っていうのはね、僕たち**宝淵九帝**が集まる集まりなんだよ。」
ゼイン「宝淵九帝……?」
俺は少し身を乗り出す。戦場ではなく、こうして説明を受けるのも悪くない。
ラフレン様は片手をふわりと動かし、まるで空気を描くかのように話す。
ラフレン「うん、宝淵九帝っていうのは、全世界の魔族の中で最も強い魔神9人の総称みたいなものかな。」
ゼイン(魔神……力を持った魔族の究極形か。)
俺の胸の奥で、自然と戦闘の血が熱を帯びる。
ラフレン「世界には常に9人しかいないんだ。魔神になるには、今いる9人のうち誰かを倒して成り代わるか、あるいはその誰かが死んだ時に、他の魔神2人以上から推薦される必要がある。」
ゼイン「なるほど……条件は厳しい、と。」
俺は淡々と返すが、内心ではその重みを感じていた。
ラフレン様はにこにこと笑う。
ラフレン「そうそう。で、魔宴会議っていうのは、その9人が集まって近況報告とか情報交換、交流をする場なんだよね。……サボる奴もいたりするけど、これがまた面白いんだよね。」
俺は黙って頷く。話の内容は理解できるが、感情は封じたままだ。
ラフレン「ちなみにね、僕たちはコードネームで呼び合うんだよ。」
ラフレン様の瞳が、ふと光る。
ラフレン「だから、魔宴会議の間は僕のこと、ローザリルって呼んでね。」
ゼイン「……承知しました。」
俺は背筋を伸ばし、礼を尽くす。
ラフレン「あとは取り決めもゆるくてね、『覆面は禁止』とか、『魔神の本名を呼んではいけない』とか、その程度を守ればだいたいどうにかなるんだよね。」
ラフレン様は肩をすくめて笑う。
ラフレン「面倒なことは嫌いだからね。なるべくシンプルに、楽しくが僕らモットーだよ。」
説明を聞きながら歩いていると、廊下の奥に大きな扉が見えてきた。
ラフレン「大広間についたね。そろそろ迎えの者が来るはずだから、それまで待っててね。」
俺は自然に背筋を伸ばし、静かにラフレン様の後ろ姿を見つめる。
ゼイン(この人の側にいるだけで、何か戦場のような昂ぶりを感じる……)
大広間の扉を前に、俺は無言で拳を握った。
このあと待つのは、どんな会議なのか──戦場とは違う、しかし決して侮れない場所だ。
大広間の静寂を裂くように──
突如、壁そのものが歪み、巨大な扉が現れた。
重厚な音を立ててゆっくりと開く。
そこに立っていたのは、メイド服を身に纏った存在。
だが、人ではない。
滑らかに動いてはいるものの、関節のつなぎ目は明らかに人形。
陶器のような肌に、ガラス細工のような瞳。
人形「お迎えにあがりました。どうぞこちらへ。」
声は人と変わらない。
だが近くで見るほど、作り物だと分かる。
ラフレン様は楽しそうに微笑み、そのまま扉へ向かう。
ラフレン「行こっか、ゼイン。」
ゼイン「はい、ラフレン様。」
扉をくぐった瞬間、世界は真っ暗になった。
足音だけが響く虚無の空間を、しばらく進む。
やがて──光。
視界が開け、大きな円形の部屋へと出た。
中央には巨大な円卓。
その周囲に、九つの椅子が配置されている。
色は、時計回りに、
赤、青、黄、緑、黒、ピンク、紫、オレンジ、白。
ラフレン様は迷いなくピンクの椅子へ向かい、腰を下ろす。
俺はそのすぐ後ろに立つ。
ゼイン(……やはり、席は固定か。おそらく強さの順番で格付けされているのだろう。)
…となると、ラフレン様は6番目。
ラフレン様でさえ敵わない相手が5人もいる。
すでに六つの席には、魔神たちが座っていた。
ラフレン様が楽しげに紹介を始める。
ラフレン「まずは赤がルベリオスだよ。宝淵九帝をまとめてる存在だね。」
赤髪に黒い瞳の男。
穏やかで柔らかな雰囲気を纏っている。
ラフレン「青はサフィニオン。頭脳派で冷徹な策士だね。」
濃い青髪の男は、こちらを一瞥しただけで視線を戻す。
ラフレン「黄色がシトリオン。元気いっぱいで無邪気な子だよ。」
明るい黄色の髪の少年のような男が、にこにこしている。
ラフレン「緑はエメルヴィア。アラニア王国の女王様だね。」
美しい緑髪、魔族の王家の証である赤い瞳。
そして──驚くほど小柄だ。
どう見ても160cmには届かない。
それでも、漂う威厳は本物だった。
ラフレン「黒はアレギア。無口で読書好き。」
黒髪の男は、今も本を開いたまま。
ラフレン「オレンジはアンヴァル。場を明るくするムードメーカーだよ。」
オレンジ髪の男が、にやにやと笑っていた。
紹介が終わると、場は一時静まる。
……が。
アンヴァル「今日も一人で読書〜?モテないぞ〜⭐︎」
アンヴァル様がアレギア様の肩をつんつん。
アンヴァル「無視とか冷たすぎない!?傷つくんだけど♡」
アレギア様は眉をひそめるが、無言でページをめくる。
アンヴァル「ねぇねぇ〜!反応してよ〜⭐︎」
つん、つん、つん。
──次の瞬間。
アレギア様の影が蠢き、そこから黒い刀が出現。
一閃。
アンヴァル「うわっ!?ごめんって♡」
アンヴァルは軽やかに後退し、刃は壁へ直撃。
ズガン、と音を立てて深い傷が走る。
エメルヴィア「……やれやれ。」
エメルヴィア様が静かに手を掲げる。
エメルヴィア「修復しますね。」
淡い光が広がり、壁は一瞬で元通りになった。
その様子に、誰一人驚かない。
ゼイン(……日常なのか。)
アンヴァル様は少し距離を取りながら笑う。
アンヴァル「今日はこのくらいで許してあげる♡」
アレギア様は舌打ちし、再び読書へ戻った。
ラフレン様がくすっと笑う。
ラフレン「もう一人来る予定なんだけどね。それと、もう一人本当はいるんだけど……ほぼ毎回来ないから、最初から欠席扱いなんだよ。」
なるほど、と俺は心の中で納得する。
こうして、残りの席が埋まるのを待つことになった。
ゼイン(……これが、世界最強の魔族たちの集まりか。)
戦場とは違う。
だが、ここに漂う圧はそれ以上だ。
俺は静かに、ラフレン様の背後で気を引き締めた。
しばらくして──
俺たちが通ってきたあの扉が、再び音もなく開いた。
白い光を背にして現れたのは、一人の男。
真っ白な髪。
真っ白な服装。
そして、紫がかった瞳。
クオーツィア「いや〜遅れた遅れた!」
軽い調子で手を振りながら歩いてくる。
ラフレン様が笑う。
ラフレン「お、クオーツィアも来たね!」
男──クオーツィア様は、空いていた白い椅子へどさっと座る。
クオーツィア「いや〜途中で面白そうな雲見つけちゃってさ!あれ絶対ドラゴンの形だったよ!」
誰も反応しない。
これで、サボり魔を除けば全員集合。
ルベリオス様が口を開こうとした、その瞬間──
再び。
ギィ……と、扉が開いた。
空気が一変する。
そこに立っていたのは──
紫の髪に、深い青の瞳。
貼り付けたような薄い笑みを浮かべた男。
一瞬、誰も声を出せなかった。
アレギア「……これは幻覚か?」
アンヴァル「夢だね⭐︎」
クオーツィア「ありえないでしょ…」
宝淵九帝の数人が本気で疑っている。
それほどまでに、ここに現れるはずのない存在。
男は悠然と歩き、紫の椅子に腰を下ろした。
アメリオス「いやぁ、久しぶりだね諸君。相変わらず元気そうで何よりだ。」
皮肉たっぷりの声。
そして視線を巡らせ──エメルヴィア様に止める。
アメリオス「やあ、久しいね。少しは成長したかい?」
一拍置いて、くすりと笑う。
アメリオス「……いや、たいして変わっていないかな。」
エメルヴィア様の笑顔が、ほんのわずかに引き攣った。
エメルヴィア「お久しぶりでございます、アメリオス様。相変わらず……お元気そうで何よりです。」
声は丁寧だが、空気は明らかに冷えている。
ラフレン様が楽しそうに拍手する。
ラフレン「うわぁ、本当に来たんだ。珍しすぎて記念日だね!」
そして俺に聞こえるように紹介する。
ラフレン「紫がアメリオスだよ。頭は切れるけど協調性ゼロ、約束は守らないし会議はサボる常習犯なんだよね。」
アメリオス「ひどい言いようだな、ローザリル。…まあ、事実だが。」
アメリオス様は肩をすくめる。
アメリオス「今回はちょっと面白そうな匂いがしてね。気まぐれさ。」
ゼイン(……この男が、ほぼ来ない魔神。)
しかも、ただ者ではない空気。
これで──九席すべてが埋まった。
ルベリオス様が静かに立ち上がる。
ルベリオス「……では。」
柔らかな笑顔のまま、場を掌握する声で告げる。
ルベリオス「宝淵九帝、全員揃ったようだな。これより、魔宴会議を開催しよう。」
重苦しくも、どこか異様に楽しげな空気が満ちる。
俺は無意識に喉を鳴らした。
──ここから先で語られる内容は、きっと世界を揺るがす。
そんな予感だけが、確かにあった。
円卓の中央に、淡い光が灯った。
ルベリオス様が指を軽く鳴らすと、宙に魔法陣が広がり、揺らめく映像が浮かび上がる。
ルベリオス「今回の議題は──勇者だ。」
光の中に現れたのは、ダンジョンを進む勇者たちの姿。
戦鎚が振り下ろされ、双剣が舞い、スキルや剣撃が交差する。
ルベリオス「しかも今回はただの勇者じゃない。」
映像が切り替わり、二人並んで戦う場面になる。
ルベリオス「──伝説に記された双子の勇者だ。」
一瞬、空気が止まった。
ラフレン様が目を輝かせる。
ラフレン「え、あの双子!?ほんとに来たんだ……すごいねぇ。絵本の中の存在かと思ってたよ!」
アンヴァル様が椅子の上で身を乗り出す。
アンヴァル「マジで!?すげぇすげぇ!!⭐︎双子で魔王倒したやつでしょ!?やばくない!?♡」
アメリオス様は薄く笑ったまま、腕を組む。
アメリオス「ほう……なるほど。」
映像では、仲間たちが次々と魔物を倒していく。
ルベリオス「そして見ての通り、仲間も異常な戦力だ。」
ルベリオス様が淡々と続ける。
ルベリオス「伝説では──」
光の色が少し暗くなり、古い壁画の幻影が映る。
ルベリオス「六百年前、人魔大戦において双子の勇者が魔王を討ち取り、世界に平和をもたらした存在とされている。」
その瞬間。
円卓の端のほうで、わずかに空気が歪んだ。
誰も何も言わない。
だが──
上位4人の表情が僅かに硬くなった。
胸の奥がざわつく。
ラフレン様は気づかない様子で楽しそうだ。
ラフレン「へぇ〜、世界を救った英雄かぁ!物語通りなら、今回も派手な舞台になりそうだね!」
アンヴァル様は完全にノリノリだ。
アンヴァル「ヒーロー復活って感じじゃん!!⭐︎これは盛り上がるでしょ〜!!」
アメリオス様はくすりと笑う。
すると突然──
クオーツィア「ねえねえ。」
軽い声が割り込む。
椅子の上でくるくる回りながら、楽しそうに言う。
クオーツィア「実はさ、この前この子たちが悪魔召喚してたんだよね。」
一同の視線が一斉に向く。
クオーツィア「だから割り込んで会ってきた!」
ラフレン様が目を丸くする。
ラフレン「え、会ったの?」
クオーツィア「うんうん!」
クオーツィア様はにぱっと笑う。
クオーツィア「めちゃくちゃ面白いやつらだったよ〜!強いし、うるさいし、なんかキラキラしててさ!」
アンヴァル様が大興奮。
アンヴァル「直接会ったの!?ずるくない!?⭐︎どんな感じだった!?イケメン!?強そう!?♡」
アメリオス様は興味深そうに目を細める。
アメリオス「ほう……実物を見た者の感想か。それは価値があるね。」
ルベリオス様は腕を組み、静かに言った。
ルベリオス「双子の勇者が現れた、しかもこの時代に。」
映像の中で、双子が並んで立つ。
ゼイン(伝説の再来……)
だが先ほど見えた、あの微妙な空気。
ゼイン(伝説には、表に出ていない真実があるのか…?)
円卓を囲んだまま、魔宴会議はそのまま議論の時間へと移っていった。
勇者の戦力。
成長速度。
仲間の異常な適応力。
それぞれの応用力があり、かつ強力なスキル。
映像を止めたり再生したりしながら、細かな点まで確認されていく。
ルベリオス「正面から敵対する存在ではないな。」
ルベリオス様は淡々と言う。
サフィニオン「だが、放置するには力が強すぎる。」
シトリオン「利用価値は高いよねぇ〜!」
ラフレン様は軽い口調で笑う。
ラフレン「世界の厄介事を勝手に片付けてくれる存在、って考えたら最高じゃない?」
アンヴァル様が勢いよく頷く。
アンヴァル「わかるわかる!!⭐︎魔王関連とか、全部勇者に投げちゃえば楽じゃん!♡…ま、もともと魔王に手出しするつもりないけど⭐︎」
アメリオス様は肩をすくめる。
アメリオス「ただし──制御できれば、の話だ。英雄は往々にして思い通りには動かない。」
クオーツィア様は机の上に寝転がりながら言う。
クオーツィア「でもさ〜、操ろうとしたら絶対面白いこと起きるよ!」
ラフレン「めっちゃ見応えありそうだよね!」
ラフレン様が楽しそうに笑う。
議論はしばらく続き、結論らしい結論は出ないまま──
ルベリオス「ま、今日はこの辺でいいだろう。」
ルベリオス様の一言で空気が緩んだ。
魔法陣が消え、円卓の中央がゆっくり暗くなる。
すると壁際から、いつの間にか料理が並び始めていた。
豪華な肉料理、色とりどりの果実、魔力が漂う酒。見慣れないワショクという料理もある。
自然と食事会の流れになる。
アンヴァル「うわ、これ絶対うまいやつ!!⭐︎」
アンヴァル様が即つまみに行く。
クオーツィア「食べ物あるなら最初から言ってよ〜!」
クオーツィア様も飛びつく。
ラフレン様は楽しそうにそれを眺めながら、
ラフレン「会議よりこっちの方が本番だよね!」
と笑った。
だが──
アメリオス様は一口も手をつけず、立ち上がる。
アメリオス「さて、興味深い話は聞けた。もう十分だ。」
薄笑いを浮かべたまま、扉へ向かう。
アメリオス「勇者の行く末が動き出して、また気が向いたら来よう。」
そう言い残し、扉の向こうに消えた。
少しして──
エメルヴィア様が静かに席を立つ。
エメルヴィア「申し訳ありません。用事が残っておりますので。」
アレギア様も本を閉じ、無言で立ち上がる。
二人は扉の向こうへと消えていった。
残ったのは、完全に騒がしい組。
アンヴァル「ねえローザリル〜!さっきの勇者の映像もう一回見せてよ!!⭐︎」
ラフレン「いやそれより、この肉めちゃくちゃうまいよ!!」
クオーツィア「どっちも同時にやればいいじゃん!」
ラフレン様が笑いながら魔法を指先に灯す。
映像が浮かび、食事が飛び交い、完全に宴状態。
クオーツィア様は椅子の上で踊り、
アンヴァル様は料理を奪い合い、
ラフレン様はそれを見て大爆笑している。
ゼイン(……本当に、魔神の集まりなのか?)
しばらく好き放題ふざけた後。
ラフレン「じゃ、そろそろ帰ろっか。」
ラフレン様が満足そうに伸びをする。
ラフレン「ゼイン、行くよ。」
ゼイン「はい…ローザリル様。」
胸に手を当て、深く頭を下げる。
こうして、騒がしかった魔宴会議は幕を閉じた。
だが──
勇者という存在が、この世界の歯車を確実に狂わせ始めていることだけは、誰の目にも明らかだった。
闇の通路を抜け、気づけばそこは桃影のサーカス団の本拠地だった。
歪んだ廊下。
天井に揺れるランタンの光が、壁に奇妙な影を落としている。
ラフレン「ふぅ〜、やっぱり自分の城が一番落ち着くね。」
ラフレン様はくるりと振り返り、楽しそうに笑った。
ラフレン「魔宴会議、どうだった?ゼイン」
ゼイン「想像以上でした。」
俺は背筋を伸ばしたまま答える。
ゼイン「宝淵九帝の方々は個性が…非常に強烈で。」
ラフレン「でしょ?」
ラフレン様はくすくす笑う。
ラフレン「まともそうに見えるの、ルベリオスとかサフィニオンくらいだよ。」
ゼイン(…その2人が一番読めない存在ですが……)
ゼインは心の中でそう付け足した。
廊下を歩きながら、ラフレン様は指を組んで天井を見上げる。
ラフレン「でもさ、勇者たち──思った以上に面白そうだったね。」
ゼイン「はい。戦力だけで言えば、国家級です。」
ゼイン「特に双子の勇者とその連携は、異常とも言える完成度でした。」
ラフレン「うんうん。」
ラフレン様は楽しげに頷く。
ラフレン「強いし、仲間想いだし、物語の主人公感すごいよね。」
少し間を置いて──
まるで散歩のついでのような軽さで、こう言った。
ラフレン「今度、戦ってみたいな。」
俺の足が一瞬止まる。
ゼイン「…ラフレン様?」
ラフレン「いや、殺すとかじゃなくてさ?」
ラフレン様は笑ったまま手を振る。
ラフレン「純粋にどれくらい楽しい戦いになるのか、気になるだけ。」
戦闘狂じみたゼインの胸が、わずかに高鳴る。
ゼイン「……もしお相手になるなら、かなりの戦闘になるかと。」
ラフレン「それもいいじゃん。」
ラフレン様は目を細める。
ラフレン「派手で、綺麗で、最高のショーになりそうだ。」
本拠地の大広間に戻り、二人は並んで腰を下ろす。
ラフレン「宝淵九帝ってさ。」
ラフレン様はぽつりと言う。
ラフレン「仲間って言えば仲間だけど、いつ敵になるかもわからないんだよね。」
ゼイン「……はい。」
ラフレン「それは勇者も同じだよ。敵になるか、味方になるかは僕たちの動き次第。」
軽い口調なのに、その言葉だけはやけに重かった。
ラフレン「だからこそ、楽しいんだけどね!」
俺は深く頷く。
ゼイン「私は、ラフレン様の選ばれる道に従います。」
ラフレン「頼もしいなぁ。」
ラフレン様は満足そうに笑い、立ち上がった。
ラフレン「さて、今日はここまでにしよっか。また面白い動きがあったら、その時に考えよう。」
ゼイン「承知しました。」
こうして──
魔宴会議の余韻を残したまま、桃影のサーカス団の夜は静かに更けていった。
だが、
ラフレン様の「戦ってみたい」という一言は、
これから起こる嵐の前触れのように、確かに空気に残っていた。
to be continue
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