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潤🧫👾
#ファンタジー
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雨が降っていた。
静かな雨だった。
城の庭園に咲く椿の花弁を、
静かに濡らすよう な雨。
「……雨、嫌い」
少女はぽつりと呟いた。
白い石の回廊に立つ少女の名は
九条 鈴風(クジョウ スズカ)。
「何故ですか」
背後から落ち着いた声が響く。
振り返らなくとも分かるその声の主は、
幼い頃から自分を守ってきた近衛兵
黒崎 隼人(クロサキ ハヤト)。
鈴風は答える。
「だって、なんだか悲しくなるんだもの」
すると隼人は少しだけ笑って見せた。
「雨が降らなければ、花は咲きません」
俯いたまま言った。
「…そうかも知れないわね」
庭に咲く椿の花を見る。
赤く、静かに咲く花。
その時だった。
城の外から
何かが落ちる音がした。
ドサッ。
鈴風の肩が小さくはねる。
「どうかしましたか」
隼人には聞こえていないのだろうか。
「何でもないわ」
「もう部屋に戻るわね
ありがとう、雨なのに」
鈴風は先刻の音の正体を
確かめようとしていた。
回廊を抜け、
庭を走り、
城の裏へ向かう。
そして____
花畑の中、椿の木の下で
1人の少年が倒れていた。
黒い髪。
傷だらけの体。
しかし
少年は鈴風を見ると
にやっと笑って見せた。
「……悪い」
「ちょっと」
「匿ってくれない?」
「……は、?」
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