カナエの死から49日後、蝶屋敷にカナエの遺骨が隠によって届けられ、納骨式が行われた。 しのぶは黒い無印の着物、”喪”に身を包んで納骨を終えれば蝶屋敷に帰り、喪のまま仏壇の前に正座してただ呆然とカナエの遺影を眺めていた。カナエの死後,しのぶの世界は急激に色あせ,食欲は全く持ってわかなかった。自分の意思を言うのも儘ならず、いつも無表情だったカナヲでさえ心配している様な様子が見られた。 しばらく仏壇の前で正座をしていたしのぶの背後からふと声を掛けられた。
「 大丈夫かァ? 」
白髪。身体中には傷。生前のカナエが特に親しげに話していた 風柱”不死川実弥”だった。彼はカナエの生前、死後共に頻繁に蝶屋敷に足を運んでいてしのぶとも面識がある。しのぶはそんな彼の声を聞くと仏壇からくるりと向きを変え、彼に向かい合った。
「…今日、納骨が終わりました。」
しのぶは明らかに気落ちした声で彼に返す。
「そうかィ… 」
不死川は頷き,しばらく しのぶに なんと返したらいいのか 言葉を選んでいるような間を挟み再び口を開いた。
「カナエが殺られたのは上弦だってェ?」
「…ええ、そうです。私はその鬼の姿を見てはいませんが、鴉の報告と姉の言葉から上弦なのだと思います。」
「そうか…、わかった。」
不死川はそう告げるとこう続けた。
「カナエの仇は俺が取ってやる、お前は鬼殺隊を辞めろォ。」
不死川のその言葉はしのぶの中で死ぬ間際にカナエが言った言葉と重なった。
“しのぶは鬼殺隊を辞めなさい…”
カナエが言ったその言葉はしのぶから離れることは無かった。
「貴方も…姉と同じ事を言うんですね」
しのぶは不死川に少し悲しげな、何処か冷ややかな視線を送った。
「それ以上先は口にしないで下さいね、姉は結局 仇の特徴を私に教えました。それが全てです」
「それでも俺は承服出来ねェ。お前は刀で鬼の首すら…」
そんな不死川の言葉をしのぶは立ち上がり遮った。
「…それなら、私は柱になってみせます。もし柱になれたら…もう何も言わせない。」
強く彼を捉えるしのぶの視線を見、不死川は何も返せなかった。それを見てしのぶは続ける
「私の武器は”刀”じゃない”毒”です。もし私が死んでも、決して消える事が無いのが”毒”なんですよ」 しのぶはそう告げ終わると、しのぶは部屋を後にした。 今思えば申し訳ない事をしたと思った。
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