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絶対辰哉
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深「照、セックスしようか」
その瞬間、時は止まった。
は? え、なに言って……?
深「聞こえてる? おーい、ひーちゃん?」
深澤のふわりと浮いたような和やかな声が、今は痛く心に突き刺さる。
岩「ご、ごめんなさっ……」
深「そういうのいいから笑。ほら、しよ? 照の好きなセックス」
深澤は強引に俺の腕を引いて立ち上がらせ、俺をベッドへと再び投げ捨てた。本来なら深澤に抵抗することのできる力は持ち合わせているものの、どうにも恐怖で力が抜けてしまい、見かけだけになった筋肉は機能しなかった。
ベッドに倒れ込んだ俺にまたがるように座り込んだ深澤に「脱いで?」と命じられて、俺は少しためらってから大人しくトップスとインナーを脱いだ。あれだけパフォーマンスの一環として露出しているから人に身体を見られることなんて慣れているはずなのに、なぜだか肌が火照って仕方がなくて、あ、こいつのこと好きなんだったと自覚した。
俺の腹筋をしなやかで綺麗な深澤の指がなぞって撫であげていく。体脂肪がないせいで直接くる感覚が鋭すぎて、俺は思わず声を上げそうになり必死に唇を閉ざした。そんな俺を見て「ははっ」と乾いた笑いをこぼす深澤。俺、このまま抱かれるのかな。
下の方でカチャカチャと音がして急いで目を向けると、深澤にベルトが抜き取られているところだった。
深「腰、浮かせて?」
岩「っ、ふっか」
どれだけ名前を呼ぼうとも、もう届かなかった。
黙ったままの深澤を見て大人しく腰を上げると「いい子」と甘ったるい声で言いながら深澤は俺のズボンと下着を脱がせた。まさか下着まで脱がされると思っていなくて面食らっている俺を見て、深澤は含みのあるように笑った。
深「恥ずかしい? んなわけないよね。見ず知らずの男の人に抱かれまくってるんだから」
岩「……や、だぁ、……やめて、っ」
深「痛くしないよ。大丈夫。そもそも、あんな場所行こうとしてたんだし、後ろ、もう慣らしてあるでしょ」
そう言って深澤は俺の後孔に指を突っ込んだ。好きなやつの指が中に入っている。その事実だけで気持ちが良かった。ぐにぐにと中をまさぐられて思わず腰が揺れる。中に入れておいたローションがぬちぬちといやらしい音を立てた。
突然、前立腺をぐっと押されて、抑えていたはずの声が堪らず漏れ出した。
岩「っあ゛……!?♡」
深「ふはっ、ここ? きもちーの」
岩「っ゛っん゛っん、むりっ、だめぇっ……♡」
自分のちんこが徐々に熱を持って頭をもたげてくるのを感じた。駄目だと脳では分かっているのに、ふっかの手で与えられる快楽がどうにも心地良くて、まるで麻薬のように俺の全てを毒した。
トントンとリズムよく叩かれたり、ぐーっと長くじんわりと押されたりして、限界がどんどん近づいていく。なんで、なんでこいつ、こんな男の中の扱い慣れてるんだよ。先程のホテルの機械に苦戦していた深澤の姿が脳裏にぼんやりと思い浮かぶ。どうにも不釣り合いな行為に思いふける余裕なんて、もう俺には残っていなかった。
深「ひかる」
甘い声。甘い瞳。それらが全て、綺麗な作り物だとしても。
岩「……抱いて」
俺も、お前も、壊れてしまうとしても。
◇
岩「あ゛っ、んっん、きもちっ、ん゛〜っっ゛♡」
深「ははっ、腰揺れすぎね? 俺も気持ちいいよ」
岩「っぅ゛〜っ、あんっ、んぃ゛っっはぁっ゛っん」
あれからどのくらいの時間が経ったのだろう。優しく時間をかけて孔を広げられて、ゆっくり丁寧に挿入されて、それから激しく熱を打ち付けられて。どんな、誰としたセックスよりも気持ち良い。手を伸ばしてキスを求めると軽く口付けてくれたり呼吸も奪うような深いキスをくれたり、その緩急に俺はどんどん溺れていって。気がつけばこいつにトロトロに蕩けさせられてしまっていた。
正常位だから深澤の顔がよく見える。こめかみから伝う汗がキラリと光って深澤の薄い胸元まで伝って落ちていく。……わかっている。こいつが時折、苦しそうな、悲しそうな顔をすることを。それでももう、こんな所まで来てしまっては戻れないから。せめて俺だけは、おどけるように快楽に身を投げた。
二人とも死んだような顔をしてする辛気臭いセックスがあってたまるかよ。
岩「っふっふぅ゛っん゛んぁっぃ゛〜っあっ♡」
深「んふ、ちんこ、ビクビクしてんね? もうイキそう?」
岩「い゛いくっ゛いくぅ゛っぁっは゛んっいく゛いく゛っ〜〜っっ゛♡」
深「っは、いっぱい出たね笑。よしよしひかる。いい子」
こんな優しい、甘いセックスは生まれて初めてだった。最終的にこうなるなら最初からふっかと付き合って、ふっかに俺の”はじめて”あげればよかったな。なんて、本気で思っているのかいないのか、わからなかった。
初めてのセックスは高校の時の教師だった。昔から年上が好みで、話を持ちかけたらすぐにノッてくれた。別に顔が可愛いわけでもない180cmもある俺なんかをなんで抱いたのかは分からないけど。
その後は大学生になってお酒が飲めるようになったらゲイバーに通い詰めた。誘われたら身体を差し出して、いい男がいれば俺から誘った。行きつけのゲイバーで最近常連になったという男に「あんたジャニーズみたいね」なんて言われてから、怖くて行けなくなった。
そして代わりに通うようになったのが今の発展場だった。利用料が取られるから基本ホンモノのゲイかバイばっかりだし、なにより薄暗くて顔もろくに見えないからバレないと思ったのだ。発展場にはいろんな男がいた。上手いやつ、下手なやつ、声がうるさいやつ、やたらキスをせがんでくるやつ、巨根なやつ、身体がきれいなやつ。それでも、心が満たされたことは一度もなかった。「ここから出ない?」と誘われたこともあったものの、気分はいまいち乗らなかった。
なのに、なんでだろう。なんでこんなに、こいつは俺を満たしてくるのだろう。
深「んー? 照、考え事?」
岩「ん゛っ、ごめっ、っあ゛お゛くっぐりぐりっやら゛ぁっ♡」
深「うん、気持ちいいね?笑 中うねうねしてるよ。流石セックス好きなネコちゃんだね」
必死に手繰り寄せたシーツが頼りなく歪んでいく。深澤に突かれるたびに揺れる腰が淫猥にマットレスを軋ませる。顔を濡らす液体が、汗なのか涙なのかもうわからなくなっていた。いや、どっちもか。
深「んっ、そろそろ出る、っかも……ゴムつけてるけど、中で出していい?」
岩「っあ゛っん、いっ、いよっ゛ぁっあっきもちっ、っ゛ん゛♡」
深「っ、ふ、ぅっぁ、っ゛出るっ……!!」
薄い膜越しに、腹の中が生温かくなるのを感じた。ゆさゆさと緩慢な動きで腰を揺すってから深澤は自身を抜いた。途端に訪れる喪失感と冷たさに、脳はじんわりと冷えていった。
さて、俺達は一夜の過ちなんて言葉では片付けようがなくなってしまった。どうするべきなのか。ふっかはどうするつもりなんだろうか。
深澤は口を結んだゴムをゴミ箱に投げ捨てて、無駄にデカいベッドの上、俺の隣に倒れ込むように寝転んだ。そして、笑った。
深「っははっ、あー、もう……どうしよっか」
その声色は、外で遊ぼうとしていたのに雨が降ってきてしまった子供のような、軽快で純粋で頼りなかった。
岩「……どうしような」
もう、どうでもいいだろ。だってもう、俺もお前も、壊れてる。
深「……もう、あんな場所行くなよ」
深澤は俺の頬に指先を沿わせてこぼれた俺の涙を拭ってからやさしい、やさしいキスをした。
岩「……やめろよ笑」
やっと愛されたって、勘違いするだろ。
コメント
4件
好き……、最高でした😭

互いが救われないのに求めてしまうのも、切ない… すごく読み応えがありました🙏🏻
もう勘違いしてもいいよ😭