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夜のピザ屋。
閉店後。
オーブンの火は落ちている。
カウンターに二人。
エリオットとチャンス。
エリオットはフォークを持っている。
目の前には――
ショートケーキ。
チャンスが言う。
「ピザ屋なのにケーキ食ってる」
エリオットはにこにこ。
「甘いの好き」
フォーク。
ぱく
幸せそうな顔。
チャンスが呆れる。
「子供か」
エリオットは言う。
「甘党」
それから真顔で付け足す。
「世界で一番悲しいことは」
チャンスが聞く。
「何だ」
エリオットは静かに言う。
「アイスクリームを床に落とすこと」
チャンスは数秒黙る。
それから言う。
「平和だな」
エリオットはまた。
ぱく
ケーキを食べる。
その時。
エリオットがチャンスを見る。
そして。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが少し前に引かれる。
「……」
「癖」
チャンスは言う。
「分かってる」
エリオットが聞く。
「チャンス」
「ん」
「人生で一番大事なことは?」
チャンスはポケットから何か出す。
コイン。
銀色。
カラン
指で弾く。
空中で回る。
エリオットが目で追う。
パシッ
チャンスが手で受ける。
「これ」
エリオットが首を傾げる。
「コイン?」
チャンスは笑う。
「俺はな」
コインを親指で弾く。
「物事は全部」
カラン
「コイントスで決める」
エリオットが笑う。
「適当」
チャンスが言う。
「合理的」
エリオットはフォークをくわえながら言う。
「じゃあさ」
「ん?」
「俺とここにいるのも」
少し間。
「コイントス?」
チャンスは少し考える。
それからコインを指で弾く。
カラン
エリオットの金髪が揺れる。
コインが落ちる。
パシッ
チャンスが受ける。
手を開く。
エリオットが身を乗り出す。
「どっち?」
チャンスは少し笑う。
「表」
エリオットが聞く。
「意味は?」
チャンスが言う。
「ここにいる」
エリオットが聞く。
「裏は?」
チャンスが肩をすくめる。
「出ていく」
少し沈黙。
エリオットはフォークを置く。
それから。
ネクタイ。
ぐい
チャンスがまた前に引かれる。
エリオットがにこっと笑う。
「よかった」
チャンスが言う。
「まだ決めてない」
エリオットが聞く。
「?」
チャンスはコインを見せる。
「まだ見てない」
エリオットの目が少し丸くなる。
「……」
チャンスが言う。
「でも」
コインをポケットに入れる。
「今日は見ない」
エリオットが聞く。
「なんで?」
チャンスはケーキを見る。
それからエリオットを見る。
「ケーキ食ってる顔」
少し笑う。
「面白いから」
エリオットは少し黙る。
それから。
にこっと笑う。
「じゃあ」
ネクタイ。
ぐい
チャンスが言う。
「やめろ」