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昼のピザ屋。
今日は少し暇だった。
エリオットはレジの横に立っている。
手には――
アイスクリーム。
バニラ。
チャンスはカウンター席。
コインを指で弾いている。
カラン
カラン
エリオットが言う。
「チャンス」
「ん」
「今日暑い」
「そうだな」
エリオットは幸せそうに言う。
「だからアイス」
チャンスが笑う。
「子供か」
エリオットはにこにこ。
「甘党」
そして一口食べようとした。
その瞬間。
客がドアを開ける。
ガン
ドアが少し強く開く。
エリオットがびっくりする。
手が揺れる。
アイスが傾く。
スローモーションみたいに。
バニラアイスが。
コーンから。
ぽと
床へ。
静かな店内。
白いアイス。
床。
エリオット。
固まる。
完全に固まる。
チャンスが言う。
「……」
エリオット。
動かない。
チャンスがもう一回。
「……エリオット」
エリオットは小さい声。
「落ちた」
チャンス。
「見てた」
エリオットが床を見る。
白いアイス。
少し溶けている。
それから。
エリオットは真顔で言う。
「世界で一番悲しい」
チャンスが吹き出す。
「いや大げさ」
エリオットはしゃがむ。
ショック顔。
金髪の天然パーマが落ちる。
「まだ一口も食べてない」
チャンスが笑う。
「ドンマイ」
エリオットが小さい声。
「……悲しい」
チャンスはポケットからコインを出す。
カラン
指で弾く。
空中で回る。
パシッ
手で受ける。
エリオットが顔を上げる。
「?」
チャンスが言う。
「コイントス」
エリオットが聞く。
「何の」
チャンスは笑う。
「もう一個買うか」
「?」
「俺が」
エリオットが少し驚く。
チャンスが言う。
「表なら」
コインを親指に乗せる。
「俺がお前にアイス奢る」
エリオットが聞く。
「裏は?」
チャンスは肩をすくめる。
「お前が諦める」
エリオットは少し考える。
それから言う。
「投げて」
チャンス。
カラン
コインが回る。
エリオットの目が追う。
パシッ
チャンスが受ける。
ゆっくり手を開く。
エリオットが身を乗り出す。
「どっち」
チャンスは笑う。
「表」
エリオットの目が少し大きくなる。
チャンスが立つ。
「ちょっと待ってろ」
エリオットが言う。
「チャンス」
「ん」
エリオットが近づく。
そして――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが少し前に引かれる。
「……」
エリオットがにこっと笑う。
「ありがとう」
チャンスが言う。
「アイス一個で感謝すんな」
エリオットは真顔。
「重要」
チャンスは笑う。
「分かったよ」
それからドアに向かう。
エリオットは床のアイスを見る。
それから少しだけ笑う。
「でも」
チャンスが振り返る。
「ん?」
エリオットが言う。
「半分あげる」
チャンスが笑う。
「いらん」
エリオットはまた。
ネクタイ。
ぐい
「食べて」
チャンス。
「だからやめろそれ」
エリオットは楽しそうだった。