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放課後
軋む鉄製の重い扉を押し開けた
うねるような冷たい夕方の風が、俺の前髪を激しく吹き抜けていった。
見上げた空は、燃えるような鮮やかなオレンジ色。
錆びついたフェンスの向こうには、街並みを赤黒く染め上げる広大な夕焼けのパノラマが広がっていた。
「兄さん」
フェンスに寄りかかって遠くを眺めていた直哉が、扉の音に気づいて勢いよく振り返った。
ただその姿を目に収めただけで、静かな屋上に
ドクン、ドクンと、自分の心臓の音がうるさいくらいに鳴り響き始める。
「……早いな、お前。どんだけ待ってたんだよ」
「兄さんに呼び出されたんだよ?1秒でも早く来ちゃうに決まってるじゃん」
直哉はそう言って、いつものように目元をふにゃりと和らげて少しだけ笑った。
夕陽の逆光を浴びて、色素の薄い髪が黄金色にきらめいている。
そのどこまでも愛おしそうな笑顔を見るだけで、胸の奥がぎゅっと、苦しいくらいに締め付けられた。
俺は小さく深呼吸をしながら、直哉の目の前
あと一歩で身体が触れ合うほどの距離までゆっくりと歩いていき、そして足を止めた。
「……」
「兄さん? どうしたの、そんなに神妙な顔して」
言わなきゃ。
わざわざあいつをここに呼び出して、逃げないと決めたんだから。
ここで言わなきゃ男がすたる。
そう自分を鼓舞するのに、いざ直哉の真っ直ぐな瞳に見つめられると
羞恥心で喉がキュッと詰まって言葉が出てこない。
こんなことを自分から口にするなんて、恥ずかしすぎて死んでしまう。
俺が言葉に詰まって俯くと、直哉は俺の緊張を察したのか
少しだけ困ったような、気遣わしげな表情を浮かべて眉を下げた。
「あのさ、兄さん。もし言いづらいことなら、無理に今話さなくても───」
「俺、お前のこと……ちゃんと、好きだから」
「……え」
直哉の優しい言葉を遮るようにして、気づけば言葉が口から飛び出していた。
完全に勢いだった。
だけど、一度決壊した心の堤防は、もう止めることなんてできなかった。
「最初はさ…距離感バグすごくて、言うことは全部重すぎるし、本当に意味わかんねぇ奴が家に来たって思ってたけど」
「あはは……」
「でも……っ、お前がいないと、なんか全然落ち着かねぇし。気がついたらお前のことばっかり考えてるし」
顔が、耳の先までカッと熱い。
全身の血液が沸騰して、今すぐ爆発してしまいそうだ。
死ぬ。恥ずかしすぎて本気で死ぬ。
「お前がクラスの他の女子と楽しそうに話してんの見るのはクソむかつくし…クッキー受け取った時なんか、俺だけじゃないのかよって、いつも断るじゃんって嫉妬して頭がおかしくなりそうだった…っ!」
直哉は、言葉を失ったように黙り込んだまま、ただ真っ直ぐに俺を見つめていた。
その瞳に宿る熱があまりにも純粋で、強すぎて、今すぐ回れ右をして逃げ出したくなる。
だけど、もう絶対に逃げないと決めたんだ。
「だから……っ!」
俺は自分の制服のブレザーの裾を、爪が白くなるほどぎゅっと握りしめ
涙目で直哉をにらみつけるようにして言い切った。
「お前のこと……一人の男として、ちゃんと、俺だって好きなんだよ」
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