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藤本が生み出したバリアの中に閉じ込められた直樹は攻撃を避けるので精一杯で、一方的な戦いが繰り広げられていた。
「おらおらぁっ!」
「うっ!! 」
藤本は手からミコットを支配から解放した時現れた、濁った赤色のオーラを纏って戦っていた。
「くそっ、邪魔だ!」
直樹は背負っていた鞄を投げ捨て動きやすくする。
ミコットがこの中に入ってくるまで、逃げて時間を稼ぐしかない。だけど、入れない場合はどうする?今手加減されていても、体力が尽きれば今度は攻撃から身を守らなければならない。それでも一瞬で破られる。
せめて藤本みたいになにか力を使えれば、自分に戦う力があればなにかは変わるかもしれない。
そこで直樹は自分が持っていることに気づいた。
(ある……!俺にはあの力が!!)
この力をどう使えばいいか分からないが、今はこの力に賭けるしかない。
直樹は藤本の攻撃を避けながら力を引き出すため全身に神経を集中させる。
汗が滲むほど集中した末、直樹の体を蒼色の光が流れるのを感じた。 まだ全てを出し切れていないが、力の出し方が分かれば戦えるかもしれない。
(それまでは、攻撃を避けることにも集中しろ!)
「死ねぇ!!」
藤本の邪悪な色の力が放出され直樹に向かう。
予想外の攻撃手段に直樹は避けられずに攻撃を喰らってしまう。
「があっ!!」
両腕をクロスさせて攻撃を防ごうとしたが、防御を貫通してダメージを食らう。
初めて食らった攻撃は、被弾した部分が焼けるようなズタズタにされるような痛みだった。
「ナオキ!!あの力は暗黒の力、魔王の力が宿る力です!直接喰らい続けると肉体が破壊されます!気をつけて!」
「くっ……分かった!」
(はやくっ……力を……!)
慣れない力を使うのは難しい。思うように力が使えない。どうしてあの時は使えたんだ?どれだけ思い出してみても分からない。
「じっくりと痛ぶってから殺してやる……!」
藤本のオーラが触手のように伸びて複数の方向から放たれる。1つは避けられても、別の方向から来たオーラに当たってしまう。
「かは……っ!ぎ……っ!藤本やめろ!俺の話を聞いてくれ!」
「お前の話を聞いたところでなにも変わらない!大人しくしろ!」
「その憎しみを向けるのは俺だけでいい!だけど、今は違う!この世界をどうにかしないと、誰も救われない!」
「救われるのは俺だけで充分だ!お前には分からないだろ、俺の気持ちが!誰かに見捨てられたら、自分の存在が誰にも気づかれない!生きてる価値なんてないんだ!」
「そんなことっ……がっ!」
背後からの不意打ち。直樹は気づくことも出来ずに攻撃を喰らう。 体から血が流れ出し血だらけになる。全身から痛みが伝わり、視界がぼやけてくる。
(なんで力が使えないんだ……!でろでろでろっ!!このままじゃ……っ!)
だけど体が思うように動かない。どれだけ悩んでも、いくら足掻いても、高い壁が直樹の行く手を塞ぐ。
「うっ……」
「そろそろ限界だな。ようやく、ようやく報われる……!」
直樹と藤本の力は雲泥の差がある。勝負は一瞬で決まった。勝てるわけがなかった。自分のせいだ。力があるのに強くなろうとしないかった怠惰な自己犠牲がこの結果を生み出してしまった。
藤本はありったけの力を込めて直樹にとどめを刺そうとしている。 藤本は直樹の胸ぐらを掴み引き寄せる。
「お前の謝罪なんて要らない、話だって聞きたくない。俺の望みは一つ、お前が報いを受けることだ」
「やめ……っ」
藤本の力がゼロ距離から解放されて強烈な一撃によって直樹は吹き飛ばされて砕けるような衝撃音と共に背中がバリアにぶつかる。
「ナオキーーっ!!」
直樹はバリアに背を打ち付け横に倒れたまま、ぐったりとそのまま動かなくなった。
「は……ははっ!はははははっあ!」
藤本は自分が初めて人を殺したことに、罪悪感のような何かが溢れ笑った。
「ようやく終わった……。いや、まだ始まったばかりだ」
しかし、藤本は直樹に復讐を果たしても自分の中の何かが埋まることはなかった。
「そうだ……!あいつらも、クラス全員殺せば俺は……!」
藤本がその場から背を向けて歩こうとした時、背後から背筋をビリビリと突き刺す強烈な気配を感じ振り向いた。
「……お前のおかげで、ようやくこの力の使い方が分かった……!」
直樹の全身を蒼の光がバチバチと火花のように溢れ出している。
「お前、なんだよそれ……!?」
自分が戦えないなんて本気で戦わないと分からない。なのに逃げていた。直樹は自分は臆病だと痛感した。だから、これからは逃げない。
「ここからは本気でやってやる」
「死にぞこないがよく言う!」
確かに、藤本の言う通り直樹の体は満身創痍の状態だ。 藤本の暗黒の力が押し寄せる。直樹は両手を前に出し暗黒が蒼い光に相殺される。だがダメージは少し食らう。
直樹の力では攻撃を防ぎきれない。
「防いだ……!?」
攻撃を防がれたことに藤本は驚く。
直樹は攻撃を弾き、更に力を引き出す。胸の奥で中途半端に引っ掛かるなにかが直樹に不快感を与える。その不快感をなくすため更に力を引き出す。
そして引っ掛かっていたなにか外れ、無差別に解放されていた力が1つに集まり、形をつくる。 現れたのは白く美しく輝く神々しい1本の剣だった。
その事に一番反応を示したのはミコットだった。剣を睨むように見つめている。
「あの剣は……っ!?」
その瞬間、直樹は何かが一度に大量に失う感覚がして体に脱力感がする。恐らく、この力の元となる何かだ。
直樹はその浮ぶ剣を握り構える。しかし体力もこの力も、剣を発生させたせいで意識を保つのも限界だった。
(あと3分だな……)
今の体力を考えて計算した直樹があと動ける時間だ。それまでに決着をつけなければならない。 直樹は走り出した。
「お前に使いこなせるのかよその力! 」
藤本から4つの尾が現れ、更に攻撃が激しくなる。直樹が剣で防ごうとするとバリアが出現し攻撃が弾かれる。直樹にとって予期せぬ反撃だった。
(バリア……!この剣の力か!ならこのまま突っ切る!!)
全ての攻撃はバリアに任せて猪突猛進する。しかし、バリアが攻撃を受ける度に力が減っていきバリアが薄くなる。長くバリアし続けるのは危険だ。だが、今はこれが最善の行動。直樹はバリアを張ったまま暗黒の嵐の中を進む。
「はああああああっ!!」
「ちいっ……!」
剣を振り下ろすが、フェイントもにもない真正面からの攻撃なんて簡単に避けられる。
「くっ、まだだ!!」
もう一度剣を振る。横一直線に発する斬撃。
「はっ、バカが!そんな攻撃何回しても当たるわけ──!?」
その瞬間、その剣の刃から蒼い斬撃が飛び出し、油断した藤本に直撃した。
「がはっ!?」
たった一振りで想定外の大ダメージを食らい、藤本は胸を手で押さえよろける。
(一撃でこの威力!?一体どうなんってんだよ……!?)
(畳み掛けるなら今しかない!!)
力を込め剣を振り降ろそうとした瞬間、体から力が抜け、バランスを崩す。
(まさか、今ので力を使い切ったのか!?)
「……チャンスッ!!」
藤本はその隙を見逃さず体勢を立て直し、オーラを拳に集めて直樹に乱打を繰り出す。藤本は前に、直樹は後ろに下がる。
「おらぁぁぁぁ!!」
「ぐあああああっ!?」
直樹は剣を前にかざして防御しようとするがバリアは出なく、乱打をもろに受ける。
二人は地面に倒れ込み、藤本は直樹の首を掴み、直樹は左手で首を絞める藤本の手を掴み引き剥がそうとする。しかし、直樹は体に力が入らず、抵抗することも出来なかった。
「死ね死ねぇ!!」
「ぎい゛っ゛!がぁ゛はっ゛!!」
直樹は首を押さえられているせいで下を向けない。上を見ると逆さになった地面が見える。その先にあったのは直樹の鞄。藤本は興奮しているせいでその事に気づかない。
「終わりだあぁぁ!!!!」
その瞬間、「パァン!」と鼓膜を破りそうなほどの大きな乾いた音が鳴り響いた。
「……かはっ……なん、で……?」
藤本の服から血が円のように広がっていく。そして、直樹の右手には銃口から煙が立ちのぼる拳銃が握られていた。その場に火薬と鉄の匂いが広がった。