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玲央は全力で森の中を駆け抜けた。
だが、背後からは確実にスタンリーが追ってきている気配がする。
(……ヤベぇなぁ。どこかで巻かねぇと、このままじゃ……。)
冷静に周囲を見渡しながら、玲央は次の行動を考える。
暗い森の中では、視界が限られている。
それはスタンリーにとっても同じこと。
(なら、使わせてもらうよ……この暗闇を。)
玲央は木々の間をすり抜けながら、わざと左右にジグザグと走った。
スタンリーの射線をずらすためだ。
パァン!
銃声が響く。玲央は地面に飛び込み、すんでのところで弾丸をかわした。
そのまま転がるようにして起き上がると、すぐに走り出す。
(クソ……心臓に悪いねぇ……!)
スタンリーの精密な狙撃は、ほんの一瞬のミスすら許されない。
(でも、確実に狙いはズレてきてる……!)
玲央は、足元に落ちていた石を拾い、わざと別の方向に投げつけた。
カサッ……!
音に反応して、スタンリーの銃口が一瞬そちらへ向く。
(今だ!)
玲央はその隙に木の陰へ飛び込み、息を潜めた。
***
スタンリーは銃を構えたまま、静かに周囲を見渡す。
(……動きが止まった? それとも、囮か。)
慎重に一歩ずつ前進しながら、周囲の気配を探る。
——玲央の呼吸すら聞こえない。
(なるほど、なかなかやるな。)
スタンリーはわずかに口元を歪める。
次の瞬間——
彼はすっと銃を構え直し、玲央の隠れている木の少し横へ向けた。
パァン!
銃声とともに、木の幹が大きく削られる。
玲央は反射的に飛び出した。
「……バレてたかぁ!!」
「ハハ、さすがにね。」
スタンリーは余裕の笑みを浮かべたまま、玲央の動きを追いながら銃を向ける。
玲央はすぐに体勢を立て直しながら、考えを巡らせた。
(……くそ、どうする!? このままじゃ……。)
次の瞬間——
バチィッ!!
雷が空を裂き、轟音が夜の森に響いた。
その一瞬、スタンリーの注意がわずかに逸れる。
(……助かった!)
玲央はその隙を逃さず、一気に加速した。
(もう少し……もう少しで、完全に視界から消える……!)
スタンリーは一瞬遅れて銃を構え直したが、玲央の姿はすでに暗闇に溶け込んでいた。
「……ふぅん、やるじゃないか。」
スタンリーは銃を肩に担ぎながら、小さく笑った。
「まぁ、すぐに見つけるさ。」
そして、夜の闇の中へと再び歩き出した——。
***
一方、森の奥へ逃げ込んだ玲央は、太い木の幹にもたれかかりながら息を整えていた。
(……危なかったねぇ……。)
全身が汗でびっしょりだ。
(スタンリーの視線は……もう、こっちだろう。)
玲央は薄く笑った。
(これで、千空たちは安全だ。)
だが、ここからどうするか——。
(このままじゃ、俺が捕まるだけだねぇ。)
玲央は夜空を見上げた。
(……さて、どう動こうか。)
嵐の余韻が残る夜の中で、玲央は新たな策を考え始めた——。