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雪月❄️
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yuka @43日間男体化
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💚視点
俺が探偵事務所に入ると、ぺしょぺしょに泣いている康二さんが嫌がる宮舘さんに無理やり抱きついているところだった。
「……何やってんですか」
「あぁ! 阿部ちゃん!!(泣)」
今度はその泣き顔のまま俺に向かって走ってくるから、思わず体を仰け反らせる。
「だてから話は聞いたでぇ。目黒さんのこと守ってくれてありがとうなぁ(泣)」
俺が違うとこ行ってたばかりに危険な目に合わせてもうて……と1人ぶつぶつ言いながら、俺の頬にすりすりと顔を寄せる康二さん。
涙でほんのり湿っぽくてなんとも言えない気持ちになる。そんな状態を宮舘さんが察してくれたのか、
「そういえば康二、これ。ちゃんと撮っといたよ」
「あ、ほんまや忘れるとこやった! おおきにな!」
さっと話題を変えてくれて俺は解放される。
宮舘さんが康二さんに渡していたものはチェキのようなサイズ感で、鏡から出てきた目黒くん……いや、目黒くんに見えて目黒くんではない何者かを激写している。
「いつの間にそんなもの……」
「まあ、俺にかかればね」
少し得意げにそう言うと、宮舘さんはコーヒーメーカーに向かって歩く。
「あの、その写真いったい何なんですか? 康二さん集めてるみたいですけど……」
たまらず俺がそう聞くと、康二さんはバツが悪そうに頭をかき、宮舘さんは驚いた表情を浮かべ振り返る。
「え、康二まだ説明してなかったの?」
「……この案件が終わったら、言おうとしてたんよ。阿部ちゃん、もうちょっとだけ堪忍な」
結局、この日も康二さんは俺に写真のことを説明してはくれなかった。
あれから数日。
危険な目に合わせたから、と康二さんから半ば無理やり休暇をもらっていた俺は久しぶりに探偵事務所に出勤する。そして、目黒くんの案件の真相が語られる日でもあった。
俺が探偵事務所の前に着くと、背の高い男の人——きっと目黒くんが、カフェの前を掃除する宮舘さんと話しているところだった。
「宮舘さん、目黒さん、おはようございます」
「おお、阿部。おはよう」
「久しぶりだね、阿部ちゃん」
「目黒さんあれから大丈夫ですか? どこか不調が出たりとか……」
「全然問題ないよ。変な噂も聞かなくなったし、3人が俺を守ってくれたおかげ」
俺に向けて放たれる爽やかな笑顔の破壊力に、だいぶ耐えられるようになってきたな……と思いながら、目黒くんの言葉に安堵する。
あの時俺が目黒くんと一緒に居なかったら、どうなっていたことか。
「目黒が無事で本当に良かったよ。ところで、2人は時間大丈夫なの? 康二と約束してるって聞いたんだけど」
「あ、ほんとだ」
「時間ギリギリですね、宮舘さんありがとうございます。行きましょ、目黒さん」
俺たちは掃除を続ける宮舘さんを後に、事務所へ続く外階段を登った。
「お、やっと来たな。待っとったで」
今朝もコーヒーカップを片手に康二さんは机に腰掛けていた。俺たちを応接用ソファーに招くと、あらかじめ用意してくれていたのだろう若干冷め気味のコーヒーを置いてくれた。
「ごめんな、はよ淹れすぎてちょっと冷めてもうてるんやけど……」
「いえ、少し冷めてるくらいの方が飲みやすいですよ」
「俺猫舌なんで助かります……」
「ほんなら良かった!」
そして康二さんはいくつかの資料を持って俺たちの向かいに座ると、まずは目黒くんと今回の契約に関するお金を諸々処理し出す。それが終わると、いよいよ本題だ。
「じゃあ、依頼完了のお金も受け取る準備ができたところで、説明を始めよかな」
まず今回の事件は、紛れもない“怪異”の仕業であったことを報告するわ。
鏡の中に潜伏して、対象となる人物と入れ替わりその人格を壊してしまおうとする厄介で最低な“怪異”。
鏡があればどこにでも現れてどこにでも消えていけるから、この業界でもずっと足跡を掴めずにおったヤツなんや。
仕事帰りに阿部ちゃんが嫌な気配を感じとったことあったって、前に言うてたやん? 現場検証に行ったら、誰かの落とし物であろう割れた手鏡が落ちとった。
きっとその破片から“怪異”は移動して、目黒さんを狙ってたんやろな。あの時帰る判断をしてくれてありがとう阿部ちゃん。
……そんなヤツが、目黒さんに取り憑いてた。
名前も無いようなヤツやけど、最近になってその被害が目立って拡大しつつあったから、今回の依頼でその姿を写真に収められたことが貴重な資料となる。
こちらとしてもかなり有益な情報を手にすることができて感謝しとる。ありがとうな。
目黒さんに取り憑いてたこいつは、だてがお祓いしてくれたからもうこの世におらん。安心して仕事に集中すればええわ。
けど、目黒さんみたいな芸能人は人間からも注目を浴びるように、またすぐに何らかの“怪異”が目をつける可能性があることは頭に入れとって。
もしまた何かあったら気軽に連絡してくれてええからな。
「……ざっとはこんな感じやな。多分疑問に思ってたことは大体言えたと思うんやけど」
「俺の仕事の手伝いをしてくれていたのは?」
「あー、それな。鏡の中にいるヤツらは、鏡に映る対象を通してその対象の思考や気持ちも映し取る。入れ替わるための準備みたいなもんやな。その準備の中で、いかにして対象の信頼を得るかが大事になるんや」
「……味方だと思わせて油断させたところを、襲うってわけですか」
「その通りや阿部ちゃん。人格を壊すことが目的やからな、非道なことも平気でやってのけるんや」
思っていたよりも残酷で非道な“怪異”の存在に、俺は体を震わせる。
妖怪と呼ばれるような王道の“怪異”なんて、まだまだ可愛いものだったんだと思わされる。……きっと、名前のないモノの方が何倍も恐ろしい。
「……ありがとうございます。ここに来てなかったら、多分俺は壊されてました」
「だての判断と目黒さんの決断、阿部ちゃんの勇気に乾杯やな」
こうして、目黒くんからの依頼は無事に解決した。
「阿部ちゃんまた遊びにおいでね。いつでも待ってるから」
と、目黒くんは俺の連絡先を消すことなく笑顔でそう言うと、足取りも軽く自宅へと帰っていった。
「……こ、こんなことって!」
「良かったなぁ阿部ちゃん。目黒さんから認知されたやん」
「っ!? いつから俺が推してることを!」
「始めっからや。探偵の目を舐めたあかんで」
……康二さんに隠し事はできないようです。
何はともあれ、推しの存在を守れて良かったと心の底から思った案件だった。
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面白かったです! あべちゃん、頑張ったね そして連絡先良かったね♡