テラーノベル
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公爵邸の寝室は、私の実家の広間ほどもあった。
天蓋付きの巨大なベッドが、まるで獲物を待つ顎のように部屋の中央に鎮座している。
契約を結んだその日のうちに、私は着の身着のままこの屋敷へと連れてこられた。
「準備を整えておけ」というシャーロット様の言葉通り、用意されたのは肌が透けるほど薄いシルクのネグリジェ。
鏡に映る自分の姿は、まるで供え物のようで、惨めさに胸が締め付けられる。
(今日は……顔を合わせるだけよね? 契約したばかりだし、心の準備だって……)
自分に言い聞かせ、シーツの端を握りしめて震えていた、その時。
音もなく重厚な扉が開いた。
「っ……!」
入ってきたのは、軍服のボタンを外し、寛いだ姿のシャーロット様だった。
昼間の冷徹な正装とは違い、はだけた胸元から覗く鍛え上げられた肌が
嫌でも彼が「男」であることを突きつけてくる。
「まだ起きていたのか。殊勝なことだ」
「あ、あの……! シャーロット様、今夜は、その……ご挨拶だけに……」
「挨拶?」
彼は鼻で笑い、ゆっくりと歩み寄ってくる。
一歩、また一歩と距離が縮まるたび、彼の放つ圧倒的な熱量に気圧され、私はベッドの上で後ずさった。
だが、すぐに背中がヘッドボードに当たる。
逃げ場はない。
「エルサ、勘違いするな。俺はお前を観賞用に買ったわけじゃない」
長い脚がベッドにかけられ、彼が私に覆いかぶさる。
腕の中に閉じ込められ、彼の吐息が耳元にかかった。
「無理です……! こんなの、心の準備が……」
「無理?」
シャーロット様の手が、私の細い首筋をなぞり
そのまま強引にネグリジェの肩紐を指で弾いた。
剥き出しになった肩に、ゾクリと冷たい戦慄が走る。
「駄々を捏ねるな。お前は俺が買った」
「そ、それは……っ」
「拒否権は無い、わかるだろ?」
冷酷な宣告と共に、彼は私の両手首を片手で軽々と頭上へ押さえつけた。
抗おうと身を捩れば捩るほど、彼の体温がダイレクトに伝わってきて、頭が真っ白になる。
「……っ、んぅ!」
昼間よりも深く、激しい口づけ。
舌先が強引に割り込み、私の不器用な拒絶を蹂躙していく。
「愛のない形式的な関係」なんて、私の甘い幻想だった。
彼の瞳にあるのは、冷徹な独占欲と容赦のない嗜虐性。
「……お前が誰のものか、その体に分からせてやろうか?」
耳たぶを甘噛みされ、熱い舌が鎖骨を這う。
恐怖で涙が溢れるのに、彼の指先が触れる場所から、裏切り者のように熱が灯っていく。
「……っ、ん、は……っ!」
心臓が早鐘を打ち、頭の芯が痺れるような感覚。
鎖骨に這わされる彼の舌の感触が、あまりに生々しく熱い。
このまま、なし崩し的にすべてを奪われる。
そう直感した瞬間、私の体は思考よりも先に動いていた。
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