「よっ!ったく…また資料集鞄に入れてやがる。」
隣から聞こえた声に振り返ると,森山悠斗がニヤリと笑いながら私の鞄をひょいとつかんでいる。彼は相変わらず,私の”重そうな”資料集を狙ってくるのだ。
(悠斗はこの問題の重大さ,まったく分かってないな…)
心の中でため息をつく。
「悠斗は全然事の重要さ理解していないね」と
思わず呆れ混じりに言った。
「何言ってんだよ、そんな堅苦しい話、夏休みくらい忘れたいっての。ニュースなんて面倒だし、宿題もほとんどやってないぜ、俺」と悠斗は軽い調子で返す。
彼のその明るさは嫌いじゃないけど、問題の本質から目をそらしているのは間違いない。
(本当に…どうしてこんなに無関心なんだろう。私がどれだけ危機感持ってるか、伝わらないのかな)
声には出さなかったけれど、胸の奥で強いもどかしさが膨らむ。
「でも、このままだと、日本の農家はもっと苦しくなる。私たちの食べ物が、いつか普通に手に入らなくなるかもしれないんだよ?」
声のトーンは静かだけど、真剣さは隠せなかった。
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