「トラゾーって結構くっつきたがりだよね」
「え」
クロノアさんにそう言われて、ハッと自分の距離感に気付く。
確かにすごいくっついていた。
人によっては不快に思われるレベルで。
「ぁ…す、すみません」
1人分くらいの空間をあけて離れる。
「(いくら恋人だからって近すぎた…。嫌だったのかな……もし、そうだとしたら、悲しいかも…)」
きっとさりげなく言った言葉なのにそれをいちいち気にしてしまうくらいに、小さく傷付いていた。
「いつもこんな近かったっけ?」
「ど、どうなんでしょう…?」
離れた空間はあいたまま。
クロノアさんはそういう嫌いなんだと悟る。
恋人になって日が浅くそれらしい触れ合いもしていない。
「(そもそも、ホントに恋人と言えるのだろうか?)」
告白もされたし、付き合ってほしいとも言われた。
そういう触れ合いをするのが恋人というわけではないけど。
恋人の距離感って?
俺のは違う?
照れ隠しとか、そんな感じには見えなくて。
単純に俺との距離が近すぎることが嫌だったように見えた。
それからは、なんとなくクロノアさんに近付き過ぎないよう気を付けていた。
そんなこと気にしてない感じのクロノアさんにやっぱりなと悲しくなりつつ、嫌われるよりマシかと我慢してた。
「……」
クロノアさんにじゃれ合うぺいんととしにがみさんを見て、自分のはやんわり拒否したのに、と大事な友達に嫉妬して。
俺は最低だ。
弟たちに絡まれる兄、みたいな感じだけどその表情は嬉しそうだった。
「(しにがみさんとか、ぺいんとはいいんだ)」
2人にそんな感情を抱く俺自身が嫌で、見てられなくてそこから目を逸らす。
これなら前のほうがよかった。
友達として、配信仲間としての距離感のままのほうが。
「なんにも、変わらないじゃん」
そう呟いたところで離れてるクロノアさんに届くこともなく。
物理的にも心理的にも離れていく感じがした。
そして3人の仲のいい姿を見て、俺いらないじゃんと。
そう疎外感まで感じていた。
「……」
1人溜息をついていると後ろから抱きつかれる勢いで肩に手を置かれた。
「うわっ」
「なーに悩んでんの?」
「らっ、だぁさん!……ちょっとっ、心臓飛び出るかと思ったじゃないですか…!」
横を見れば驚くほど近いところにらっだぁさんの整った顔があった。
「いや、1人寂しく溜息ついてるトラが見えたからさ」
にこっと笑うのを見て、周りに気付かれるくらいの顔をしていたのだと察した。
本来、気付いてほしい人は向こうでじゃれ合いをまだしていた。
気付いて欲しいなんてのも烏滸がましいか。
「…気を遣わせちゃったんですね…すみません」
ぺいんとを挟む格好でスマホを覗き込む2人。
画面を指差したぺいんとに言われてクロノアさんが画面に顔を近付けている。
「(俺がした時はあんな近くないのに)」
なんなら離れられる。
それにあんな楽しそうな顔もしない。
モヤモヤする気持ちが出ていたのか、むにっとほっぺを摘まれた。
「変なこと考えてる顔になってんぞ」
「……変な顔は元からです。ほっといてください。というか、俺の表情見えんでしょう」
横を向くと顔を隠すようにしていた袋をらっだぁさんに取られる。
「ちょっ…⁈」
「可愛い顔だと思うけど?」
「…俺のどこが可愛いんですか。…可愛いっていうのはしにがみさんみたいなのを言うんですよ」
じぃっと至近距離で見つめられ、負けじとらっだぁさんを見つめ返す。
「な?トラってたまに距離感バグってるって言われねぇ?」
つい先日、恋人(?)に同じようなこと言われました。
「…くっつきたがりと言われましたけど」
「人肌恋しいのかな?」
「そんな歳じゃないです」
肩を抱かれたままらっだぁさんは俺にそう言う。
「もう離してくださいってば」
クロノアさんに見られて説明するのめんどくさい…とそこまで考えてあの人は俺が誰と近くても気にしてなかったわと心の中で落ち込んだ。
「トラっていい匂いするし、抱き心地丁度いいな」
そんな俺の心情を察したのか否か、らっだぁさんがそう言ってきた。
「ん…?、えっと、ありがとうございます…?」
全く離そうとしたないらっだぁさんのことは諦めて、本人が満足いくまでもう放っておくことにした。
どのみち、クロノアさんは気にしてないようだし。
いやこうなってることに気付いてすらいないし。
「らっだぁさんは俺なんかに構って楽しんですか。ぺいんととかといる方が楽しいでしょ」
「んー?楽しいよ。俺、トラのこと好きだし」
「⁇、俺もらっだぁさん好きですよ?面白いし」
「いやそこは優しくて真面目でかっこいいって言わんと」
「え?らっだぁさんが優しくて真面目でかっこいいのは言わなくても当たり前のことじゃ…⁇」
クロノアさんとはまた違った感じのイケメンだと思う。
爽やかというより、穏やか?な感じ。
「そう言ってくれんのはお前だけだよ…俺のこと誰も褒めてくれねぇもん」
しみじみ言うらっだぁさんの目は遠い。
「らっだぁさんすごいとこいっぱいありますよ」
「ほう、例えば?」
「へ⁈」
「俺のすごいとこって何?」
「え、ぇ…、ゲームが上手なとことか、真面目なとことか、面白いし優しいし、かっこいいし…」
「他は?」
「えぇ…」
肩を掴まれてじっと見つめられる。
今度は居心地が悪くて目を逸らした。
「らっだぁさんの声、穏やかな感じがして好きですし…ひとつひとつの行動に思いやり?みたいなの感じてますし…ほら、らっだぁさんのリスナーが言ってる育ちがいいっていう」
「それで?」
「ぅえッ⁈えっと、その…、うぁ…っ」
「………じょーだんだよ。もう充分だって」
肩から手を離されたものの、至近距離は変わらない。
「うう…びっくりした…」
「ははっ、…俺はねぇ、トラの超真面目で頭いいのに変なとこ抜けてて、素ですげぇ天然発言するとかとか、噛んで迷言するとかとか、ホラゲ苦手なとことか可愛いとことか、声も好きだし、…」
「は、ちょっ…何ですか…⁈」
褒められてるような貶されてるような、絶妙にコメントしづらいことを挙げられていく。
「俺がトラの好きなとこ言ってる。でも実は寂しがり屋で自分のこと後回しにして我慢ばっかで他人のこと優先して、体調悪くても誰にも言わないとこ。そういうのは直してほしいかな?」
「ぐっ…」
「ノアにそういうの素直にちゃんと言ってみたら?弱ってることとかは特に」
「…鬱陶しいだけですよ。俺が頼ったり甘えたりしても気持ち悪いだけでしょ」
「そんなことねぇけど。寧ろ俺は嬉しいよ」
「俺だって複雑なんです」
「乙女心?」
「いや俺乙女とはだいぶ程遠いですけど…」
ちらりと3人を見るとクロノアさんとぱちりと目が合った。
あまりくっつかれるのが嫌なクロノアさんにとって、俺と目が合うのもきっと嫌だろうと思って咄嗟に顔を逸らした。
そう言えば恋人になってから視線が合わなくなった気がする。
「(くっつくのも嫌、顔も見たくないのになんで俺なんかと恋人になろうと………罰ゲームとか?ぺいんとたちと企んで、俺を面白がってる?…いや、そういう人が傷付くようなことはみんなしないだろうから……単純にクロノアさんの気まぐれ?…あの人猫みたいだし、)」
「……クロノアさんは俺のそういうの、迷惑だと思ってるでしょうから言えません」
「迷惑な奴があんな顔するかよ」
「え?」
うまく聞き取れなくて聞き返すもはぐらかされた。
「ノアになんか言われた?」
「……くっつきたがりだよねって」
「あー…さっきのやつ…。それノアが言ったんか」
あの時の困った顔。
迷惑とまではいかなくても、どうしようかという表情。
「照れてたんじゃね?」
「それはないと思います…。あのクロノアさんですよ?俺如きに照れるわけ…」
ふにっと口の端に柔らかい感触。
「……ぇ?」
「奪っちゃった」
過去、某緑茶のCMで有名になったフレーズ。
「まぁ、完全じゃないけど」
「?…⁇…、…!…⁈、っ!〜〜ッッ///!?」
口の端に触れたもの。
らっだぁさんの、唇で。
ぼやける視界で見えたのはらっだぁさんの目を閉じた顔だった。
何をされたのか理解したところで、目の前の人物を見る。
「…おー、ほらほら来たぜ?お前の恋人が」
「え、っ、うわっ⁈」
誰のこと、と思ったら、らっだぁさんから強引に引き剥がされるようにして後ろに腕を引かれた。
「……」
「く、クロノアさん…⁈」
とてつもなく不機嫌で見たことないくらい怒った顔のクロノアさんが俺の腕を掴んでいた。
「何してんの」
「、…!」
驚くくらいド低音の声にびくりと肩が跳ねた。
「俺以外の男とそんなくっついてどういうつもり。しかもキスさせたろ」
「男ってらっだぁさんは……それに、キスと言っても海外とかでよくある軽い…っ」
「言い訳?」
確かに避けられなかった俺にも非があるけど、ここまで責められる筋合いもない。
「言い訳って、大体あなたが…」
「俺が、なに?」
こんな怒ったクロノアさん初めて見て段々と言葉が出なくなってきて声が萎んでいく。
「いや…あの、…っ…だ、から…」
泣きそうになって俯く。
こうやって言いたいことも言わせてくれない。
なら、俺といる意味なんてない。
「そんな怒ってやんなよ」
俯く俺を見てらっだぁさんが場を制すようにクロノアさんに声をかけた。
「…は?……あなたは黙っててくれますか。俺はトラゾーと話をしてるんです」
「大事な恋人放置してるノアこそ黙ってろよ」
「はい?」
「らっだぁさんっ!」
らっだぁさんの手を掴んでそれ以上は言わなくていいと首を横に振る。
「い、いいですから!!俺が悪いんです!全部っ!だから、っ」
「ほら、我慢させてこんな泣きそうな顔させてさ。お前、トラの恋人失格だぜ?」
そう言われてぼろっと溜まっていた涙が落ちる。
慌ててクロノアさんに掴まれていたほうの腕を振り払って涙を拭う。
「ごめ、なさ…ッ」
確かにこんなことで泣いて。
俺はクロノアさんの恋人失格だ。
「泣くなって」
泣いてる俺の涙を拭おうとしたらっだぁさんの手が大きな音を立てて振り払われた。
「えっ…」
バシッという大きな音に目を見開く。
あのクロノアさんがらっだぁさんの手を叩き落としたのだ。
「触らないでください」
底冷えする、とはこういうのを言うのだろう。
場が凍りつきそうなほどの声に自分が言われたわけではないのに固まる。
「……その顔、絶対にトラには見せないほうがいいぞ」
「見せるわけないでしょう」
「こんな激重な奴に好かれてトラは大変だな」
振り向こうとしたら、クロノアさんに後ろから目を覆い隠され抱き寄せられる。
「クロ、ノアさ、ん…?」
「トラゾーは帰って俺と話しようか」
「!、な、んの、話をするん、ですか…嫌です…俺…っ」
別れ話?
付き合ってるなんて言えないこの関係で?
「拒否権なんてないよ」
有無を言わさない声色。
振り払った腕を再び掴まれ、2人分の荷物を手に取ったクロノアさんは挨拶も早々に済ませ、俺を引っ張りながら足早に部屋から出て行った。
──────────────
ふと、ぺいんとのスマホから顔を上げた時に飛び込んできた光景は自分の恋人と、仲のいい人のそれこそ俺なんかよりよっぽど恋人同士のような距離の近さでくっついてる2人の姿だった。
「……」
素顔を晒して、困った顔しながらもそのバグった近さに疑問を抱いていないトラゾーとそんなことは関係ないというらっだぁさんに苛立ちを感じた。
「クロノアさん?」
俺の視線を辿るぺいんとがあ、と小さく声を上げる。
しにがみくんも同じ反応をしていた。
ぱっと視線がトラゾーと合ったのにすぐに逸らされた。
それに対してもイラッとする、心の狭い自分がいる。
「え、クロノアさんトラゾーと喧嘩でもしたんすか」
「してないよ」
「トラゾーさん、今思いっきりクロノアさんから視線逸らしてましたけど…」
「そうだね」
苛立ちと嫉妬とで、溢れ出しそうになる怒りをどうにか理性で抑え込む。
「…トラゾーなんか最近元気なかったけど、大丈夫なんかな」
「あー…確かに、ちょっと活気がないというか…」
「……」
トラゾーがある日突然、俺から距離を取るようになった。
理由は分かる。
俺の軽はずみな発言が原因だ。
くっつきたがり、という言葉をマイナスの意味で解釈したのかトラゾーはあれ以降くっついてくることをやめた。
無意識に近付いた距離にはハッとしてすぐに離れるようになってしまったのだ。
意地の悪い俺はそれに対して、トラゾーのほうが折れて前みたいにくっついてくるだろうと放っておくことにした。
いや、トラゾーのほうから我慢ができないとくっついていたいと言って欲しかった。
まさか、離れようとするなんて思ってもなかったから若干の焦りもあった。
一旦自分の中で決めたことはトラゾーはなかなか曲げない。
どれだけ、諭してもそれを本心だと受け取らないから。
自分が悪い、そう押し殺して我慢する直して欲しいところのせいで。
「「あっ⁈」」
考えに耽っていると2人が同時に声を上げる。
その声に顔を上げると、トラゾーにキスをしているらっだぁさんの姿が目に入った。
すぐに離れたけど。
「あ…?」
俺の声にぺいんともしにがみくんもびくりと大きく肩を跳ねさせた。
トラゾーの顔は見えないけど、多分ぽかんとして何をされたか分からず、徐々にキスをされたことを理解してきて焦り始めているのだろう。
嫌がる素振りより、恥ずかしい。
そんな風に俺には見えた。
「……、」
俺の、なのに。
気付けばトラゾーの腕を掴んで責め立てていた。
トラゾーは悪いことなんてないのに、矛先は全てそちらに向く。
らっだぁさんに、放置してとか我慢させてとか恋人失格だなんて言われて苛立ちはとうに通り越して完全に怒りに変わっていた。
泣きそうになるトラゾーは自分が悪いと言い出し、らっだぁさんを庇うように手を掴む。
優しい声で声をかけるらっだぁさん。
泣き始めたトラゾーは、俺の手を振り払った。
その瞬間、ギリギリで保っていた”優しい俺”は消えた。
涙を拭おうとしたらっだぁさんの手を振り払われた手で叩き落とす。
「触らないでください」
叩き落とした音と俺の声にびくっと固まったトラゾー。
らっだぁさんは若干肩を竦めて、今の顔のことを指摘してきた。
振り向こうとしたトラゾーの目を塞いで抱き寄せる。
随分、久し振りな距離。
何も変わらないトラゾーの匂いや体温。
隠していたかった悪い部分が表に出てきている。
だから、この場じゃダメだと思って嫌がるトラゾーを強制的に連れて帰った。
自分の行いがどれだけ、愚かなものだったかを教えるために。
────────────────
クロノアさんは合鍵を使って俺の部屋のドアを開けた。
話をする上、確かに俺の部屋のほうが都合がいい。
「……っ」
立ち竦もうとする俺を引っ張ってクロノアさんはリビングの方に進む。
「……座って話をしようか」
「……はい」
あの時みたいに1人分空間は空けられず、逃がさないと言わんばかりの距離だった。
「…俺、今冷静じゃないから素直に答えてね」
押し殺したような声に体が強張る。
「トラゾーは俺と離れて、らっだぁさんのところに行こうとしてるの」
「そ、そんなわけ…ッ」
「じゃあ、なんであんな距離でくっついてキスなんてさせたの」
「だからあれは…!」
らっだぁさんにも距離感バグってると言われた。
けど、友達同士なら別に普通の近さだと思っていたし、相手もそんな風に思ってなんて。
口の端に軽く触れられただけでこんなに怒るなんて思わなかったし。
「……言ったよね?俺、冷静じゃないって」
らっだぁさんが触れた場所を指で拭われる。
「俺に許しもなく、他人に触らせていいとでも思ってんの」
「い゛ッ…⁈」
そのまま口の中に指を突っ込まれた。
「くおおあひゃ…、」
「……トラゾーの為に我慢してたのに、…そっちがその気なら俺、もう抑えないけど?」
「おはえう…?」
抑えるって何を。
俺と離れるってことをか?
そう思った時には強い力でソファーに倒されていた。
「ぇ…」
「トラゾーが一体誰のモノか、教えてあげるよ」
「あ…」
「ひ、っ!ぃ゛だッ、ゃめ…いや、だぁ…!」
「嫌?嫌なのに、俺のこんな深くまで受け入れてんの?」
「ちが、ぁ゛あ…やだ、くろのあッ、さ、ゔぁッ!」
「あれ、俺が初めてじゃない?…ふぅん?やっぱりらっだぁさんとそういうことしてたんだ」
「してな、してないですッ、…おれ、っ」
ソファーに押し倒され、抵抗できないよう動きも封じられた。
たいして慣らされてないソコを無理矢理貫かれる。
痛みでどうにかなりそうなのにクロノアさんはただ歪んだ笑みを浮かべるだけで。
「俺の軽はずみな発言のことは謝るよ。けど、だからって他の人んとこに行くのはどうなんだろうね?」
「ん゛ぁっ!、ゃ、やら゛…いたい、ぃ゛…」
やめてほしくて縛られた両手でどうにか押し返そうとする度に弱いとこを突かれて身体が仰け反る。
「トラゾードMでしょ?痛いの好きじゃん」
「す、きじゃな゛いッ、ひ、ゃぁあ…」
繋がったとこも深い奥も痛いのに。
「らっだぁさんにも触らせたの?どこまで触らせた?」
「さわ、ら゛せ、でないっ、です、ぉれはッ、くろの゛、あさん…いがぃ…!」
「じゃあキスさせたのはなんでだよ」
事故みたいなもの、だなんて言ったらもっと酷い目にあいそうで。
不意打ちとしか言えない。
「ぁんな、ふいうちっ、…よけれ…あ゛ぁあぁぁ゛ッ⁈」
「避けれない?避けなかったの間違いじゃない?」
何を言っても屁理屈で押し負かされる。
「も゛ぅ、やめ…ッ、いゃだぁ…っ!」
拒絶するように声を出した瞬間、右頬を叩かれた。
「ぁ、ぇ……?」
じんじんする右頬。
叩かれた?
クロノアさんに?
「俺のは嫌がるんだ?へぇ?全然、分かってないみたいだからまだやめてあげない」
「ひっ…!」
頬を叩いたことなんて、もう終わったことだというように片脚を持ち上げられもう片方は押さえ付けられた。
「こうするとね、もう少しだけ奥に入っちゃうんだよ」
「!!?、ぃ、だいっ!や、だやだッ、!!ゃ、や゛ぁあ゛あぁ…」
絶対に入っちゃダメな場所に、クロノアさんが入ってしまった。
「っ、づ…ぁ、ゔ…あ゛ぁ…ッ」
入られたことより叩かれたことで涙は止まらないし、頭は深いとこに入られたことで混乱してるし。
無意識に逃げようとした身体は、脚を掴まれ押さえられてることで逃げさせてもらえない。
「俺から離れたり逃げようとしたらこうなるんだよ。いや、近付き過ぎたりくっつき過ぎても結果は同じだけど。多分、優しいか優しくないかの違いかな?」
「ひゃぁ゛ぁあっ」
「ねぇ俺のこと嫌いになった?トラゾーのこと滅茶苦茶にしてやりたいって思ってた俺のこと、引く?」
揺さぶられて、涙がボロボロ落ちる。
「やっぱり離れたい?…でも、そんなの許さないよ。絶対に離してなんかやらない。トラゾーは俺のモノで、誰にも渡さない」
「ゔ、ぁッ⁈」
クロノアさんの上に座らされて、下から突き上げられる。
その度に自重で深く咥え込み、奥までいったらまた突かれて。
「ぁ、も、こ、われる゛ッ、お、れじゃ、なくなぅ゛う!!」
「壊れても俺がずっとトラゾーのこと愛してあげる」
「しぬ゛ッ、それ、いじょっ…され゛たら、ころさ、れる…っ!」
「死なないし、殺しもしないよ。……あぁ、いや…」
ぎゅぅうっと息ができなくなるくらい抱き締められて耳元で囁かれる。
俺が正気を保っていた最後の記憶の中で囁かれた言葉。
その後は、この人の言うことだけを一生聞くと本能から塗り替えられ、何もかもクロノアさんがいなければ何もできない俺になってしまった。
何を、どこから、間違えてしまったのか。
今の俺では理解はできない。
クロノアさんの言っていた結果は変わらない、という発言。
こうなることは既に彼の中では決定事項だったらしい。
「俺がトラゾーのこと一生余すことなく……」
─────壊(あい)して殺(こわ)して愛(ころ)してあげるよ
コメント
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愛重めヤンデレ攻め彼氏を勘違いさせるとあんな目に…! trさん、ご愁傷さまです(他人事) この後誤解が解けて今度はめちゃくちゃべったりであまっあまなプレイをしてたら嬉しい…♡