テラーノベル
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翌日、戦いで亡くなったナロウの葬儀が行われた。森の一角を墓地にして、遺体を土に埋葬する。その前で、エルフたちは一族に伝わる祈りを捧げていた。
「……死んだら、ああするのですか?」
「ええ。シオンは初めてだったわね」
思い返せば、オルトゥスで誰かが死んだのはこれが初めてだ。集まる人々には長命種も多く、移住してきたのも若者が多かった。幸いなことに、ここで生まれた子供も死産になったことはない。
「僕が今まで殺してきた人間は、どうなのでしょう」
「気にしないでいいわ。あいつらは、別物だから」
「……僕が死んだら、リディア様はああしてくれますか?」
「考えたくはないわね。でも……もちろん、見送るわよ」
この場に集まっているのは、エルフと古参の移住者が多かった。ドワーフもそれなりの人数、集まってくれている。
「……それじゃ、そろそろ戻りましょうか」
「はい」
リディアはシオンの手をそっと握り、彼女たちの家に歩き始めた。シオンもこの3年で身長が伸び、身体もしっかりしてきた。そんな時間を感じながら、リディアはいろいろな考えを巡らせていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
家に着き、食事をとったあと――リディアは庭仕事をしていた。死霊術でスケルトンを呼び出し、草むしりをする。そのスケルトンを見ながら、さすがにナロウは蘇らせたくないな……と考えていた。そんな中、一緒に草むしりをしていたシオンが、庭に入ってきた人影に反応する。
「あ、レンザン先生」
「やぁ、シオン。……草むしりかい。スケルトンは――やはり、慣れぬものだな」
「あら、可愛い子たちですわよ? ……この子たちは、元々この地に眠っていたんです」
「見知らぬ骸は、完全に他人だからな。使うことに躊躇はなかろう」
「いざとなれば、私は全てを使いますよ?」
リディアの言葉に、レンザンは少しだけ笑った。
「今日はな、昨日の礼に来たんだ。おかげで、右腕の調子も以前より良いんだよ」
「え? そうなんですか?」
「ああ。我の右腕は……昔、見せただろう? 古傷があって、上手く動かせなかったんだ」
「その割に、お強かったですけど……」
「まぁ、そこそこはな。今はもう、昔のように動かせるようになったぞ」
「それは何とも、不幸中の幸いですね……」
レンザンは懐から、美しい青色の宝石を取り出した。それをそっとリディアに渡す。
「そんなわけで、これは礼だ。シオンの武器を作っているんだろう? そいつに使ってやると良い」
「……これは、氷の魔石ですか?」
「今後は少しでも、戦力があった方が良いからな。お嬢ちゃんの判断で、他のことに使っても構わないぞ?」
リディアはシオンを見た。彼の髪は薄紫色であり……何か属性をイメージするなら、氷や水が自然と浮かぶ。
「そうですね。こんな貴重なものを、ありがとうございます」
「何の何の。……さて、それでは我はエルフたちのところに行くかな。訓練をしたいと言って、聞かんのだよ」
そう言うと、レンザンは去っていった。リディアの手元では、氷の魔石がひとつ……静かに煌めいていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌日、リディアの家にジジとゾゾがやって来た。
「リディア姐さん、こんにちは。お邪魔しますよ」
「ヘイヘイ! リディアちゃん、元気ぃ~?」
「ジジさん、こんにちは。ゾゾさんは……相変わらず、ですね……」
「ウェ~イ!」
ゾゾはドワーフの兄弟の中で、一番最後にオルトゥスに移住してきた人物だ。他の兄弟よりも肌の色が黒く、断トツでおかしなノリを出している。
「まったく、南方の変な文化に影響されおって……」
「ふふっ。もう、何かを作ってくださっているんですよね?」
「もっちのロンロン! これがワッチィの新発明――蚊取り閃光!!」
「……は?」
「蚊に刺されるのは嫌だろう? 蚊が近付くと、こいつが光を放つんだ。それで撃退するって寸法よォ!!」
試しに外に出て、しばらく待つ。蚊が近くまで飛んでくると、そのまま――眩い閃光が周囲を照らした。しかし、蚊はそのままどこかに飛んでいく。
「……ありゃ? 作ってるときは、上手くいったんだけどなぁ?」
「はぁ……。こんなの、ずっと外に置いてたら光りっ放しじゃねぇか……。しかも殺せてないって、どんなオチだよ……」
「確かに、エネルギーが無駄に使われるだけですね……。これって、魔導具の一種なんですよね?」
「もちろんだ! ただ、エネルギーは魔石の粉でもいけるから、エコなこと半端ないぜぇ?」
「まぁ、粉で良いのであれば、安くは済むんですけど――」
……ただ、しっかり殺せないのであれば、使いどころがない。それこそ、蚊なんてそこら中にいるのだし……。
「ちなみに、他の虫には反応するんですか?」
「ああ、対象にするものを入れるスペースがあってな……。蚊を殺したいなら、そこに蚊を入れれば良いんだ。でもよぉ、ひとつにつき1種類しか登録はできないんだな、これが!」
「つまり、蚊なら蚊にしか反応しない。ハエならハエにしか反応しない……ということですね?」
「おうとも!」
ゾゾは特に悪びれもせず、自信たっぷりに言い放った。ジジは呆れ顔で見ていたが、リディアは――もしかして、ヒルの魔物に転用できないか……と考え始めていた。
「少し使いどころがありそうなので、これは譲って頂けますか?」
「お、リディアちゃんはお目が高いね! ワッチィの兄どもとは全然違うッ!!」
「あはは……」
「まぁ、そんな兄からはこれだ。シオンの剣が完成したぞ」
「わぁ……。素晴らしいですね!」
シオンは剣を受け取ると、ジジに感謝を伝えた。受け取った剣は、短剣よりも少し長く、長剣ほどではない……そんな感じだった。
「良かったわね、シオン」
「はい! ……この剣に、レンザン先生からもらったものを組み合わせるのですか?」
シオンがリディアに聞くと、ジジがそこに割って入る。
「うん? このあと、何かするんですか?」
「レンザンさんから氷の魔石をもらったんです。だから、この剣に使ってはどうかと言われまして」
「うはぁー、それだったら先に言ってもらいたかったですね! ただまぁ、柄の方を細工すれば終わりますからね、ワシの方でやっちまいますよ」
「ありがとうございます。すぐにできますか?」
「ええ、もちろんです。それじゃ、シオン。鍛冶場まで付き合ってくれるか?」
「シオン、行ってきなさい」
「はい!」
シオンはジジと一緒に、鍛冶場に向かった。リディアは一息ついてから……ゾゾが残っていることにようやく気付く。
「……ゾゾさんは、一緒に行かなくても良いんですか?」
「ああ、リディアちゃんともう少し話したくてさ! ワッチィの魔導具のこと、理解してくれたしィ!」
「あはは……。ものは使いようですので、まわりを気にせず、いろいろなものを作ってください」
「嬉しいねぇ! というわけで、何か珍しい素材をもらえないかな!?」
魔導具というものは、金属以外にも様々なものを使用する。だからこそ、素材次第では無限の可能性を秘めているのだ。
「そうですねぇ……。最近は少し余裕があったので、ブラガたちからいろいろ買っていたのですが――」
「全部くれんかなぁ?」
「さすがに、それはダメですよ!」
他のドワーフとは違い、ゾゾはぐいぐいと話を続けていく。いろいろな個性が集まるオルトゥスではあったが、ゾゾはかなり異質な存在――……それが不安でもあり、頼もしくもあり。リディアは程々に貴重で、自分で使わなそうなものをゾゾに渡すことにした。
コメント
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うーん、今日の話はちょっと切なかったな…ナロウの葬儀から始まって、リディアが「蘇らせたくない」って言うところ、すごくグッときた。死を受け入れる強さみたいなものを感じたよ。 それでもレンザンが魔石をくれたり、ドワーフたちが魔導具と剣を持ってきてくれて、前を向いてる感じが良かった。ゾゾの「蚊取り閃光」は全然役に立たないのに、リディアが「ヒルの魔物に応用できるかも」って考えるところ、彼女の柔軟さが好きだな。 シオンが自分の剣を持つって、成長を感じるね。これからが楽しみ🥀
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comi
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