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#ファンタジー
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#ファンタジー
ジジの助力もあり、シオンの剣には氷属性が宿った。普通に振るえば刃に冷気が伴うだけだが、使い方次第では特殊な技が使えるようになるという。シオンは早速レンザンの元へ向かい、教えを受けていた。そんな彼らを、リディアは少し離れた場所から見守っている。
「――うん? また、何か来たな」
ふと、レンザンがそんなことを言った。先日の天使種族の件もあり、リディアはついつい身構えてしまう。
「また、敵でしょうか」
「ふむ……。おそらく、敵ではなかろうな。もし敵にまわったら……厄介な者ではありそうだ」
そう言って、レンザンはシオンとの稽古を再開した。リディアの心中は穏やかではなかったが、レンザンがそう言うのであれば、ひとりで慌てても仕方がない。できるだけ気配を察知しようとしたが、リディアには何も感じなかった。
その後、時間は過ぎていき――2時間ほどの稽古が終わる頃、野太い声が聞こえてきた。
「おーい!」
「……あ。ザザさんじゃないですか!」
「リディアの嬢ちゃん、久し振りだな。レンザンの旦那もシオンも、元気なようで何よりだ」
ザザはこの場の全員と挨拶を交わした。彼が戻ってくるのは1年ぶりのことで、リディアもずっと心配していたのだ。
「この前、ゾゾさんも移住してきたんですよ。あとで、ぜひ会ってくださいね」
「ああ、ようやく来たんだな。迷惑は掛けていないか?」
「大丈夫ですよ。この前は、素敵な発明品を頂きましたし」
「それは何よりだ。それで、嬢ちゃん。念願の人材を見つけてきたぞ!」
「え? 本当ですか!?」
ザザが外の世界を旅するに当たって、リディアはこの街への移住者を募っていた。それと同時に、転移魔法の使い手を特に探していたのだ。
元々は鉱山の街ベルデとの往復を考えていたのだが、今では近場に鉱山が見つかり、そちらを主に使用している。ただ、今後オルトゥスから離れた場所を行き来するには、やはりそういった特殊な力が必要なのだ。
「今は森の外で待ってもらっているんだ。呼んじまってもいいか?」
「せっかく来て頂いたのに、森の外だなんて……。早く呼んでください!」
「承知したぜ!」
ザザは胸元から笛を出すと、それを力強く吹いた。空気が抜けるようなその音は、遥か彼方へ消えていく。
「……え? 今の、合図ですか?」
「ああ。まぁ、5分くらいで着くだろう」
ザザの言葉の通り、しばらくすると宙から巨大なものが降りてきた。大きな翼と尾を持つ、四足歩行の……5メートルはあろうかというドラゴン。翼を広げれば、さらに大きく見える。リディアも直接見るのは初めてだった。
「――ほう。火竜か」
「ふん、貴様は……火トカゲか」
レンザンの言葉に、ドラゴンはすぐに反応した。最初の挨拶としては不穏なものだ。
「初めまして。私はこの場所――オルトゥスの主、リディアと申します」
「吾輩はファイアドラゴンのヴェルガである。今後、よしなにな」
「はい、お願いします。……それで、ザザさん? ヴェルガさんとはどういう経緯で?」
聞きたいことは山ほどあるが、まずは出会いを聞いてみる。
「ああ。北の山脈の方で、道に迷ってしまってな。それで、深い霧に覆われた場所をずっと歩き続けて、偶然に出会ったんだよ」
「人里離れた場所で……って感じですね。北というと、天使種族の里があったと思いますが――」
「それよりも、もっと北だ。吾輩の巣は、あいつらでも近寄らなかったからな」
「それはそれは、遠いところから……。ちなみに、ここまで来て頂けた理由をお伺いしても?」
ドラゴンは稀少であり、生物の格としては高位に君臨する。そのため、オルトゥスまで来た理由は当然のように気になる。
「ザザがな、酒を持っていたのだ。吾輩、それをとても気に入ってな!」
「……ただの酔っ払いか」
「何だと……!?」
レンザンの言葉に、ヴェルガが苛立った。これは恐らく――エルフとドワーフのように、種族間での問題があるのだろう。
「レンザンさん!?」
「おっと、すまんな。しばらく黙っておくとしよう」
「この場からいなくなっても良いのだがな……ッ!」
しかしその言葉は受け流し、レンザンは近くの地面に腰を下ろした。
「えぇっと……それで、お酒、でしたっけ?」
「うむ。あの甘さに、あのコク……。ザザと別れて、それっきり飲めぬのは寂しかったからな。だから、この街に来ることにしたのだ」
「あー……。転移魔法を持っているから勧誘した、のではなくて、お酒で話が進んじゃいましたか……」
「そうなんだよ……。世の中、わからないものだよなぁ」
ザザはお茶目な笑顔を見せた。しかし理由はともかく、実際に連れてきてもらえたのはありがたい。
「オルトゥスの人口は、ようやく1000人を超えたところなんです。ぜひ、ヴェルガさんも手伝って頂けませんか?」
「良かろう! 但し、酒とツマミは用意するのだぞ!」
「それがあれば、無制限に手伝って頂けますか?」
「……善処はする」
一気にトーンダウンするヴェルガ。よくよく考えれば当然のことで、やるべき仕事が何も伝わっていないのだ。
「私も、話を急ぎ過ぎてしまいましたね。しばらくはこの街に滞在して、少しずつ馴染んでください」
「おう、そうしよう。それでは今日は、吾輩の歓迎会だな。酒を大量に用意するといい」
「そうは言っても、私がひとりで造っていますからね……。ほどほどのところで、お願いしますよ?」
「それも然り。突然にすまないな!」
「あと、歓迎会は明日に行いましょう。ヴェルガさんの身体は大きいから――ここの住人にちゃんとお披露目しないと、驚いてしまいますから」
「うむうむ、そうであろう!!」
「ですので、今日のところはお姿を隠しておいてもらえますか? ちなみに、人の姿になるということは……?」
「はっはっはっ! 吾輩はこの姿が誇りなのだ。そんな魔法、覚えておらぬ!」
「あ――……そうなんですね?」
ドラゴンともなれば、変化の魔法は覚えているもの……と、リディアは考えていた。しかしそれができないとなると、さて今晩はどうしたものか。
「そうは言っても、既にここまで飛んできたからな。そろそろ、噂にはなっているんじゃないか?」
「……確かに。ザザさんも、ドラゴンを連れてきた――って、最初に言ってくれれば良かったのに……」
「すまない……。少しくらい、格好を付けたかったんだ……」
「まぁ、過ぎてしまったものは仕方がなかろう! 吾輩は……そうだな、今日はザザの家に泊まろう。そこまでの道中で、街の連中に挨拶をしてくれるわ!」
「はぁ……。ヴェルガさんって、案外コミュニケーションが上手そうですね……」
そう言うリディアに、ザザがそっと耳打ちをする。
「ヴェルガの旦那は、ずっとひとりだったんだよ。だから、どこか人がたくさんいる場所に行きたかったそうでな……」
「あら、可愛いところがあるんですね。それなら大切にしてあげましょう♪」
「お嬢ちゃん……。旦那のことを、キングみたいな感じだと思ってないか?」
確かに――とリディアは思ったが、人外の姿をしていれば、それはある種の宿命だ。逆に言えば、マスコットの立場を得て、すんなりと受け入れられるかもしれない。
「ただ……立派な身体、すぎるんですよね……」
「おう? 吾輩の魅力が早速伝わっているのか?」
その言葉に、一番微妙な顔をしたのはレンザンだった。リディアは肩透かしを食らった感じになってしまい、すぐに言葉を続けることができなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
リディアの家の、入り口の前。そこの地面が突然光り始め、その一瞬後、多くの人影がそこに現れた。短い距離ではあるが、ヴェルガが転移魔法を使ったのだ。
「へぇ……。これが転移魔法なんですね」
「ふわっとした浮遊感があって、一瞬で移動……。ヴェルガさん、凄いです!」
リディアとシオンが感心する中、ヴェルガはとても上機嫌だった。それを見て、リディアはついつい笑ってしまう。
「さて、それではお酒を持ってきますね。とりあえず、あるだけ持ってきましょう」
「お嬢ちゃん、申し訳ないなぁ」
「いえいえ! ザザさんもたくさん飲んでくださいね。ヴェルガさんを連れてきたこと、感謝していますので。……あとは、ゾゾさんの歓迎会もやっちゃってください」
「ああ、そうさせてもらうよ」
大量の酒を渡すと、ザザたちは転移魔法で消えていった。転移する直前、ドワーフの家の方角に光が見えた。転移元と転移先は、一時的に両方が光るのだろう――と、リディアはそんなことを考えていた。
「……はぁ。何とも能天気な火竜がいたものよ」
「ふふっ、私は嫌いではないですよ? レンザンさんも……ヴェルガさん本人のことは、知らないんですよね?」
「そうだな……。我らは、エルフとドワーフのようなものなんだが――向こうが何も考えていないとなれば、張り合う気にもなれんわい」
「張り合わないで、仲良くしましょう?」
「ははっ、分かった分かった。仲違いの姿なんぞ、子供に見せるものではないからな」
そう言うと、レンザンはすぐ側のシオンの頭を撫でた。シオンは珍しく、文句を言いたそうな顔をしていた。
コメント
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あっ、第22話読んだわ!新キャラのヴェルガ、最初は「火トカゲ」とか言い合っててレンザンとどうなるかと思ったけど、実は寂しがりやで酒に弱い可愛いとこあるじゃんw 転移魔法使えるのめっちゃ助かるし、リディアが「キングみたいに思ってない?」ってツッコまれるの笑った。シオンがレンザンに頭撫でられて微妙な顔してたのも可愛かったな〜。オルトゥス、どんどん賑やかになるね!