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第3章. 双眸の前に


───嫌あぁああああぁ!!」

この教会に金切り声が響き渡る。

あたしは体をビクッと跳ねさせ耳を塞ぐ。

嫌な予感がする。

そう、直感した。

明らかな女性の絶叫。

ミラはあたしを起こしに行くと言ったっきりで1度も出くわしていない。そしてあたしの部屋の真下にあるトレイから聞こえる絶叫。


───ソニア……!!


月明かりに照らされて

薄暗く青い光が廊下に漂う。

冷めた空気にピリピリとした

殺伐とした空気がそこにはあった。

そこには、廊下に座り込み、涙を浮かべながら何かを凝視している。絶望した表情のソニアがいた。

「ソ……ニア…?」

ソニアは放心したまま動かない。

あたしは1歩1歩。ソニアに近づく。空気がピリつき、険悪な雰囲気の中。ソニアの前に立つ。

「大…丈夫、?」

心配の声をかけるも、”何か”を見つめ動かない。

ふと、ソニアが見ている”何か”を見た。

「…えっ……」

その瞬間。

きゃあああああ、!!とあたしの悲鳴が壁に反響した。

そこには顔以外の皮膚を真っ直ぐ切り裂かれ、苦痛に顔を歪めているミラがいた。

あたしは驚きと悲しみと惨さに耐えられず、目を手で覆い、そのまま尻もちをついた。

死んでいる。何が起こったのか分からない。でも、死んでいる。

それだけは分かった。

喉からはみ出しそうな心の絶叫と、目から流れ出てくる絶望の涙が、交互に押し寄せてくる。

「なん……でよ……。」

ソニアが絶望の眼でミラの死体を見つめる。

「一緒に……やり遂げようって言ったばかりじゃない……!」

下を向き絶望に暮れているソニアがイザベルを睨みつけ襟元を掴んで自分に引き寄せた。

「イザベル……!!何でミラは死ななきゃいけなかったの!?

何で……!!」

あたしは泣きながら黙っている事しか出来なかった。

ここで言い返したら、もしかしたら傷つけてしまう。そう、直感したからだ。この状況でも尚、

ソニアの気持ちを汲むことは出来た。泣きじゃくりながら絶望しているソニアを見て、ただ、抱き締めることしか出来なかった。


「なんだよ……うっせぇなぁ……」


気だるそうな声が聞こえた。

その声の主は、階段を下ると、

こちらに向かってきた。

カイルだった。

カイルはこちらの異変に気がつくと、どうした?と慌てて近寄ってきた。その背後に、に、たどたどしく歩いてくる、マティスもいた。

「嘘……だろ……。何でだよ。

なんで死んでるんだよ。」

独り言のようにミラの死体

に呟いた。

それと同時に、マティスが死体を覗き込み、「……!?」と後ずさり驚きながらも疑問を語った。

「い、いやそれよりも、

死体の形……異常…じゃない、?」

「……」

カイルは無言で答えた。

当然だ。四肢、上半身の中心線を、真っ直ぐ切り裂かれた服を着ていない同胞。

誰が見ても明らかに異常だ。

誰かにやられたとしか考えられなかった。

「……俺は神父様を呼びに行く。……マティス。イザベルとソニアを部屋まで送り届けてやってくれ。頼む。」

……カイルらしくない言葉遣いだった。彼なりに気を使ってくれたようだった。その信念を察し、その指示にマティスは小さく頷いた。マティスはあたしとソニアの肩を持ち、階段へと向かった。

マティスの肩にかけている自分の右腕が、反対のソニアの手に触れる。その手は、震えていた。弱々しい左手で手摺を掴み、一段一段上る。足にあまり力が入らなかったが、マティスがサポートしてくれている為、ふらつきながらもなんとか姿勢を保っていた。

階段を上り、マティスは先に症状が重そうなソニアを部屋のベッドに寝かせ、あたしも同じくベッドに附させてくれた。

ソニアは嫌だ嫌だと悲しみに暮れていたが、ベッドに横になった瞬間、すっ───と涙を浮かべていた目を閉じ、静かになった。マティスはあたしを寝かせた後、足早に部屋を出ていった。

その時のマティスの印象が、強く頭に残っている。

歯を噛み締め、悔しそうな顔をしていた。

その光景を最後に、泣いて疲れ切っていたあたしは意識を閉じた。

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