テラーノベル
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頑張んなきゃ。
頑張んなきゃ。
頑張んなきゃ。
みんなと差がひらけている分、せめてもの抵抗で頑張んなきゃ。
とにかく無我夢中、闇雲、なりふり構わず……。
とにかく走り続けて行かないきゃ、いつか早い内に見放される。
疲れていても、足が潰れても、四肢がもぎれたって………付いていかなきゃいけないんだよ。
「おはよ…」
悪夢で飛び起き、満足するほど寝れなかったフラフラの体を叩き起こし、会社に出勤する。
床がバランスボールの様にユラユラ揺れ、真っ直ぐ立っていられない程の目眩。
それでも、ベッドで寝ている暇などない。
流石に熱とか出たら休むけど、頭痛とか腹痛とか目眩とかは、言わなきゃ何とも無いのだから。
「おはようございます、ぼんさん。顔色悪いですよ、頭痛ですか?」
何コイツ、怖。
なんて言葉を飲み込んで、笑顔を向ける。
「ん〜?寝不足よ、寝不足。気にしないで」
「寝不足……?体フラフラしてるじゃないですか。どれだけ寝てないんですか」
「いやいや…老体だからね。昨日一日だけよ。まぁ、それでもホラ………4時間は寝れたからさ」
本当は寝てなどいない。
寝てる暇なんてない。
もっとゲーム上手くなんなきゃ、足を引っ張ってしまうから。
痛む目を押さえ、目薬で誤魔化し、温かいタオルを当てて、また練習。
こめかみが痛くなってきたら、鎮痛剤を飲み、グリグリ押さえ誤魔化して、痛みを無視してまた練習。
練習、練習、練習。
とにかく練習。
昨日はTジャンを30%くらいで成功出来るようになった。
後は100%にするだけ……。
その後は、4マスジャンプ……。
なんてグルグル考える前に、今はミーティング。
会議室の椅子に座り、ホワイトボードの前に立つドズさんを見据える。
「さて、今日は───」
「ぼ───」
ユラユラユラユラ揺すられてる……
「ぼ─さ─」
心地良い。
「ぼんさ─」
このまま、消えてしまえれば────
「うわっ!?」
バッと顔を上げれば、眉をつり上げたドズさんと目が合った。
「はぁ〜…寝不足なのは分かりますが、会議中は少し耐えて下さい」
寝落ちしてしまったのか、と辺りを見渡すと、おんりーとおらふくんとMENが苦笑いしていた。
「ぼんさん、ドズルさんが話し始めた瞬間寝てましたもんね」
「ホンマにw 驚いたで、もー突っ伏しとるわ!ってw」
「ぼんさん、年々寝落ち増えとりますね?」
ワヤワヤと盛り上がる中、俺だけ寝そびれたと前髪をかき上げ、肩を落とす。
いや、そもそもここで寝るのが悪いのだが、唯一俺なんかが彼らの空間にいる事を許される時間。
そんな眠気を誘うほど安心する空間で、しばらく寝てない俺に寝るな、とは鬼畜ではなかろうか。
そんな鬼畜を選んだのは、紛れもなく俺自身だけど。
今日もバレずにちょっぴりここで寝ようと思っていたが、流石にバレた。
やっぱ、会議中も寝ちゃダメよな。うん。
「ははっ…ゴメンゴメン、最近寝れてなくってさ〜w」
ケラケラ笑い、霧の中へと葬るべく、会議続けよ?とドズさんに言う。
「あなたのせいで中断なったんですよw」と大きな口を開け笑うドズさんに乗っかり、大爆笑の渦に包まる。
『最近寝れてない』けど『言い訳の為であり心配して欲しいわけではない』
そんな俺の発言を無事、有耶無耶にする事ができ、ホッと胸を撫で下ろす。
チクリ、と痛む心を無視し、また落ちる瞼に抗うことも出来ず、音を立てることなくただ一人、また夢の中へと旅立った。
暗闇から目を開ければ、天井が目を入る。
「……あー……」
やらかした、と頭を抱える。
モゾ、と起き上がれば、かけてあった俺のパーカーが落ちる。
「ふー…ま……悪夢で飛び起きなかった事は喜ぶとするか…」
また横になり、目を瞑る。
悲しぃなぁ、俺なんか居なくても支障ないのだろうなぁ…。
また、迷惑かけちゃった。
ドズルさんは、サボらないでねって軽く笑って、許してくれるだろうけど、それに甘えてばかりの俺が情けない。
いつか、きっと、捨てられるのだろう。
いつかきっと……。
「…めんどくさいなぁ…生きてくの…」
産まれて、生きてくだけでもなぜこんなに我慢しないといけないのか。
なぜこんなに精神を擦り減らして、暮らさなきゃいけないのか。
「……長期休暇欲しいなぁ…」
でも、迷惑かなぁ。
あ〜…いや、居ないほうが皆嬉しいんだろうけど、俺が居ない方が盛り上がってたら悲しいからなぁ。
第一、休んだらズルズル戻りづらくなって、結局…………。
「あ〜……もぅ……」
たすけて、と言おうとして口を閉じる。
ここは会社。
そんな暗い言葉など吐いてはダメ。
寝返りを打ち、膝を抱え、背中を丸める。
心配してほしいけど、そんなに病んでるわけではない。
楽しい事の方が多いし、泣くほど悲しいことはない。
ただ、ちょっとした自分の劣等感と
周りの有能差に置いていかれている気持ち
軽いイジリ、悪口が積み重なって、 疲れが出てるだけ。
一時的な気の沈み。
時間が解決してくれる。
“んなわけないだろ”と悲鳴を上げる身体と精神を無視し、また眠ろうと身体をもっと縮こまらせた。
また寝こけているぼんさんにため息をつきながら、これは話聞く気ねぇな、と会議を中止する。
さっき、寝落ちして起こされたはずのぼんさんはもう夢の中。
静かな寝息を立て、ゆっくり肩を上下させている。
「んー…これは起きないねぇ…w」
なんて彼の顔を覗き込みながら、笑う。
昔より、少し痩せて目の下の隈が濃くなったぼんさんは頑張り過ぎているのだろう。
昨日4時間寝た、とか言っておきながら、深夜から朝日が昇るまでパソコンを立ち上げていたことくらい、履歴で見れますよ。
まぁ彼の事だから起動させながら寝落ちしてたのかもしれないが。
それはそれで問題だけど。
どんだけ疲れが溜まってるのか、触っても起きる気配の無い彼を抱え、休憩室のソファーに運ぶ。
「よし、ぼんさん起きるまで撮影でもして待ってるか」
休憩室を背に、会議室へと足を運んだ。
「うわァ゙ッ!!」
ガバっと起き上がり、周りを見渡す。
荒い息で上手く頭がまわらない。
「あ、ぁあ……や、やだッ…やだぁ……行かないで…。寂しいよ…あ、ぁ…誰か、誰か…助けてッ…… 」
誰もいない、薄暗い部屋。
一人で涙を流して、手を伸ばす。
頭を抱え、唸る事しかできないほど混乱している俺の頭は使い物にならない。
扉の方から音がした気がする。
いや、気の所為だ。
だって誰も居ないから。
「ぅ゙、うぅ……う…」
「ぼんさん?」
幻聴だ、幻聴が聞こえた。
俺はもう駄目かもしれない…。
おもむろに顔を上げれば、おんりーがいた。
(遂に幻覚まで……)
目があったおんりーは、目を丸くし、俺の隣に座ってきた。
「どうしたんです…?泣いちゃって…」
優しいなぁ。
都合の良い幻覚だなぁ。
でも、コレ、甘えないと本人達の前で取り繕えなくなっちゃうよなぁ。
「…おんりぃ…胸貸してぇ…」
返事も聞かずに胸の中へと潜り込む。
肩を少し上げたおんりーは緊張してるのか。
それとも、拒絶か。
どちらにしろ、嫌がってるのは確か。
「…嫌?」
そう聞けば、首を横に振った。
「……そう、じゃあ、このまま良い?」
柄にもなく泣きながら、幻覚の後輩に抱きつく。
コクッ、と頷き手を後ろに回してくれたおんりーの胸にもっと顔を埋める。
「どうしたんです…?なにか怖い夢でも見ましたか?」
そんな優しい言葉を吐いてくれる彼。
みんなツンデレ男の子とか言うけど、俺はただ嫌われてるようにしか思えない。
2人っきりで外食したことないし、家に遊び行ったりも来たりもしない。
彼は最年少でPSが高くて登録者数が多くて、誰からも愛される男の子。
俺は最年長でPSが低くて登録者数が少なくて、足手まといなおっさん。
正反対、真反対。
だけど、そんな彼に慰められるのはとても嬉しい。
………だけど、苦しい。
相談せずにいれば周りからの攻撃で傷が増えて。
相談すれば引け目を感じて傷が増えて。
抱え込んで抱え込んで抱え込んで。
でも、溢れ出ちゃう心を彼にぶつけてしまう。
「俺、俺は……何もッできない、なのに、期待されるのが怖い…!」
“いつか失望されるかも”
“いつか捨てられるかも”
“何もできないくせにみんなのお陰で、みんなの努力で、生きれている寄生虫になっている”
“怖い、苦しい、寂しい、楽になりたい ”
溜め込んだ重くて聞かせられないような俺なんかの本音を吐き出す。
吐き出しても吐き出しても、彼に聞かせて言い言葉じゃない、なんで言ってしまうんだと、またネガティブになる。
「ッ…おれ、は……どうしようもないくらい、クズで最低な男なのにッ、なんでみんな優しくしてくれるの…嫌なの、嫌……俺なんかに期待しないでくれ、俺なんかに時間をかけないでくれ、俺、なんか…俺なんかッ…!」
言っちゃいけないとわかっていても止まらない。
溜めた水は少し零しただけでも止めどなく流れていく。
俺の汚い思いは、長年隠してきた思いは、1日にして崩壊した。
「俺なんかッ…!死んじゃえば良いのに…!」
おんりーの胸板を拳で叩きながら叫ぶ。
「どうして!?どうして俺は生きてんの!?誰も喜ばないのに!俺が死んだほうがみんな嬉しいのに!そう思いながらどうして酸素を食べてるの!?息をしなくなっただけで喜んでくれるのを分かっていながら、どうしてそんな簡単な事をしないの!?」
乾ききった目から涙が一つこぼれる。
「………俺なんかが人を喜ばせるには、俺が死ぬしかないのに…どうして体は拒んでしまうの…」
そこまで喋り、初めておんりーが言葉を発した。
「俺は、ぼんさんに死なれちゃ悲しいです」
じんわり耳に溶け込む柔らかい声。
否定しようと顔を上げる。
「……そりゃ、そうよね、まだメンバーだもん…。死なれちゃ後始末めんどくさいよね… 」
ははっ…と自嘲気味に言えば、おんりーが食い気味に否定した。
「メンバーじゃなくたって、あなたには生きてて欲しいですよ」
ゆっくりとこちらに納得させるように話す彼。
「……でも俺は足手まといで…「足手まといなんかじゃない。あなたがいるから俺がいる」
いつも冷たい言葉ばかり吐く彼が温かい言葉を喋る。まるで、本心だと言いたげな顔で。
「ぼんさんが本音を話してくれるのなら、俺だって本音を話します。信じて、ぼんさん」
一呼吸おいて、俺の目を見て、彼が口を開く。
「……生きてよ、ぼんさん」
頭を撫でられる手が優しさに満ちている。
生きて。
そう彼の言葉を空いた心にピッタリはめる。
俺は誰かに生きてほしいと言われたかったのかもしれない。
目を瞑り、久しぶりの安心感に身を委ねた。
目を開ければメンバーみんなが俺の顔を覗き込んでいた。
気恥ずかしくて身を捩り、起き上がろうとすれば総出で抑え込まれた。
「なになになになに、なによ…!」
そう言えば、捲し立てるように四方八方から言われる。
「生きて下さい…!ぼんさん!」
「生きて下さいよ、お願いっすから…!」
「お願い…!死なんといてや…!」
「死んじゃ俺泣きますよ!?」
「生きろ、ぼんさん」
ドズルさんに至ってはもう命令じゃねぇか。
聞けば、おんりーに泣きついていた俺の話を扉の向こうで聞いていたらしい。
おんりーも相当焦ったようだが、冷静に本音を話そうとした……との事。
俺が幻覚だと思っていた彼は本人だった様で…。
やらかしたと思いつつ、話してよかったと心が軽くなる。
猫おじ、MEN、おらふくん、おんりー、ドズルさん。
少なくとも6人は俺の生存を望んでいる。
なら、彼らが俺を“どうでも良い”と思うまで足を引きずって生きていこうと思った。
「だぁ〜〜!なぁんでついてくんの!?」
「だって、だって…!」
「だってじゃないの!ドズルさん!」
「だってぼんさん一人にしたら死んじゃうでしょ!?」
「俺はうさぎか!?」
「死んでほしくないからずっと見守らないと!」
「見守らないとってさァ゙!」
ここトイレ!!
と、俺の家から大声が響いた。
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まっさかのトイレ…ッ!?笑
トイレッ!!??