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第6話『静かなる異変』
魔法学園の朝は、いつも通り騒がしい。
中庭では新入生たちが魔法の練習に励み、上級生はそれを横目に余裕の笑みを浮かべている。
――その中心を、レオンは一人、無表情で歩いていた。
(……空気が、少し変だ)
理由は分からない。
だが、肌に触れる魔力の流れが、わずかに歪んでいる。
「ねえレオン!」
後ろから声をかけてきたのは、いつものクラスメイト。
だが、彼女の声も、どこか落ち着きがない。
「今日の実技授業、特別らしいよ!
なんか“結界区域”を使うんだって!」
「……結界区域?」
レオンの足が止まる。
結界区域――
学園内でも限られた者しか立ち入れない、実戦用の訓練場。
暴走事故を防ぐため、強力な結界が張られているはずの場所だ。
(わざわざ、今のタイミングで?)
嫌な予感が、胸の奥で小さく鳴った。
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実技授業が始まり、生徒たちは結界区域へと移動する。
教師が淡々と説明を始めた。
「今回は“模擬戦形式”だ。
ただし――今日は観測魔法を重視する」
ざわ、と生徒たちがざわめく。
「観測?」「攻撃しないの?」
そんな声が飛び交う中、レオンだけが黙って結界の外縁を見つめていた。
――そこに、ほんの一瞬。
結界が、脈打った。
(……今、ズレた)
普通の生徒なら気づかない。
教師でさえ、見逃すほどの微細な異変。
だがレオンは、確信していた。
(この結界……誰かが“内側から”触ってる)
次の瞬間。
結界区域の中心で、魔力が暴発した。
「きゃあっ!?」
悲鳴。
魔力の渦が生まれ、制御を失ったエネルギーが暴れ出す。
教師が叫ぶ。
「全員、下がれ!!」
しかし――間に合わない。
渦は拡大し、結界そのものを侵食し始めていた。
(やっぱり、来たか)
レオンは静かに一歩、前へ出る。
誰にも気づかれないように。
誰にも知られないように。
彼は小さく、言葉を紡いだ。
「――“上書き”」
次の瞬間、暴走していた魔力は、
まるで最初から存在しなかったかのように消え去った。
静寂。
生徒たちは呆然と立ち尽くし、教師は目を見開く。
「……な、何が起きた?」
レオンはすでに列の最後尾へ戻り、何事もなかった顔をしていた。
(隠してるのは、生徒だけじゃないな……)
この学園には、
明らかに何かが潜んでいる。
そしてそれは――
レオンの存在に、近づきつつあった。
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今日もじゃんじゃん10話まで行きますよ〜!!