神々廻さんに昨日のお礼としてお菓子を渡した後に仕事へと行く。
マンションを出ると目の前に私の引っ越しの原因となった男性が立っていた。
「あれ〜?君ここに住んでたっけ?」
「引っ越しましたので、今はここです」
私がそう言うと彼は
「僕のせい?」
確かにそうだがそれをそのまま“はい、あなたのせいです”と言うも感じ悪い。言葉選びを悩んでいると
「じゃ今度飲みに行こうよ!お詫びとしてさ
もちろん僕が奢るよ〜」
と予想外の言葉が飛んできた。
「え?遠慮しておきます」
「しなくていいよ〜笑これ僕の連絡先だから、空いてる日送っておいてね〜」
といつの間にか私のスマホを取って、LI〇Eを繋いでいた。唖然としてる私を置いてどこかへ彼は行ってしまった。1度入れてしまった連絡先は消せれないし、このまま無視するのも良くないと思い1回だけ彼と飲みに行くことを決めた。LI〇Eに表示されてる彼の名前は南雲。
『そーゆ』仕事だから偽名かもしれないが知ったとこでメリットは無さそう。
「予定見て夜にでも送るかぁ〜」
時計を見ると8:34。
「やっばい、遅刻する!」
私は走って仕事場に行った。
ギリギリで遅刻ではなかった。
「黒田さんがギリギリで来るの珍しいね」
と同僚の齋藤に話しかけられた。
「あーマンションの前で人と喋ってたら遅れそうになっちゃって」
そうなんだ〜と言って齋藤さんは患者さんの所に行った。
仕事を終えると予定を見て南雲さんに日にちを送る。数秒で既読がついて帰ってきた
〝僕もその日空いてる!お店も僕が選ぶね〟
とやけに乗る気だな〜と思いながら帰る。
待ち合わせ場所に着くと人集りが出来ていて、その中に周りより頭1つ分ぐらい高い南雲さんが居た。南雲さんはこちらに気づくと周りの女性たちを振り切ってこちらに近づく。
「すみません、待たせてしまって」
「時間通りだよ〜ほらお店行こ!」
そう南雲さんに連れていかれた場所は見るからに高そうなお店だった。
お店に入ると店員が1番奥の個室を用意してくれた。メニューを見ると全部値段が書いていなかった。南雲さんに“好き物頼んでいいよ!”と言われたが値段が分からない以上好き勝手飲み食いするのは申し訳ない。
「南雲さんは何にするんですか?」
「僕はね〜これとこれにする」
「じゃ私も同じので 」
わかった、と言って南雲さんは注文を始めた。
数分後、豪華な食事と共に見るからに高いワインが来た。
「食べて、食べて」
と急かされたので1口食べてみると
「おいしい…」
テレビでよく見る“口に入れた瞬間に溶けた!”
とはまさにこれのことか、と納得した。
「口にあったみたいで良かった〜ここは僕の
イチオシのお店なんだ〜、このワインも美味しいよ!飲んでみて」
そう言われ彼からワイングラスをもらう。
飲んでみると思ったより度数が低いようだった
「どれも美味しいですね」
「でしょ、でしょ!」と言い南雲さんも食べ始めた。南雲さんは追加注文で色んなお酒を頼んだ。南雲さんってやっぱ結構飲めるタイプなんだな〜と思っていたら…
「ほら、もっと飲んで〜〜〜」とすぐに酔ってしまった。
1時間後
南雲さんは完全に潰れてしまった。私はお酒に強いからまだいけるが明日にことを考えるとここら辺で切り上げるのがいいと思い会計をする為に店員を呼ぼうとしたら南雲さんが急に頭をあげた。
「あれ?僕潰れてた?」
さっきまでヨロヨロしていた人が急にスッキリとしたのでびっくりした。
「潰れてまし た」
「未来ちゃんすごい飲むね〜お酒強いの?」
「強い方ではあると思います」
「そうなんだ、あっ会計は僕が既にしてるからもう帰ろ!」
「申し訳ないですよ、私の方が南雲さんよりも飲み食いしたのに奢って貰っちゃって 」
「じゃぁ、次僕に奢ってよ!」
「次回は私が奢りますね」
と言ってお店を出た。
【翌日】
朝になって南雲さんのずる賢さを理解した。