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アリィ「……。」
アマラ「無事か?アリィ。」
アリィ「…この愚か者が。どこをどう見て無事だと思うんだ。」
アマラ「…アノか?」
アノ「それくらいは分かるようでなにより。この娘は今とても外に出られるような状況ではない。お前という雇用主の意向を守るために、制約を破った。」
アマラ「…制約を破るとどうなるんだ…?」
アノ「…知的好奇心ではなく、情の念から聞こうとしたことは褒めよう。契約とそう変わるものでは無い。同じだ。罰が、ペナルティが発生する。ただ、制約の場合は心臓…いや魂と言った方がいいな。魂に直接、激痛が与えられる。我にその痛みが入りはしない。」
アマラ「だから、魂…って表現したのか。どうして出てきたんだ?」
アノ「この娘に任されたのだ。無論、我としては体に出ることなく、この娘を支えるのに徹したい。故に最低限しかやらない。最も、本気を出せば、この体が壊れるのもある。」
アマラ「了解。」
アノ「しっかり正気は保っておけ。落ち着いて、話がしたい。あちらの方に避難をしよう。」
アマラ「正気は頑張って保つし、避難も別にいいが…お前アタシに担がれたままでいいのか?」
アノ「任せた。」
アマラ「はいよ。行きながら、教えてはくれねぇのか?」
アノ「走りながら喋るのは体力の消耗につながる。それにここは危険地帯だ。」
アノがそう言った直後、アマラの頭上を瓦礫が飛んでいく。
アマラ「うひぃ!?」
アロン「少しは自分で瓦礫の処理もしてくれませんかね。ザックス隊長。」
飛び交う止まない瓦礫を、民間人に被害の及ばぬよう打ち砕き、ほんの隙をついてアロンは斬撃を繰り出す。
アマラ「こんなの国全体危ないだろ!?」
アノ「故に我が案内してるのだ。」
アマラ「信じさせてくれよ…!」
アノ「問題ない。」
一方その頃。
クリフ「この茶葉は貰い物なんだが、口にあっただろうか?」
ジーク「…美味しいです。」
(味なんて緊張で分からねぇよ!!なんでこんなことに!?)
ジークは恒陽の国の王、クリフとお茶会をしていた。
クリフ「あまり、いいものが出せなくてすまない。」
ジーク「い、いやそんな…。」
(一応兵士が待機してはいるけれど…扉前に居るだけ…。拘束はされてないし、お茶も…毒では無い…。というか毒だったら、目の前で自分で入れてがぶがぶ飲んでる人もヤバいか…。)
そう思いながら、クリフを見上げる。
クリフ「私だけ聞きたいことを聞くのは、不公平だ。君の質問にも答えよう。」
ジーク「…なら、アレは偽物ですか?」
ジークはおずおずと、クリフに質問する。
クリフ「ああ、偽物だ。」
ジーク「…あの、拘束しなくていいんですか…?自分が言うのもなんですけど…」
クリフ「必要ないよ。私からも質問しても?」
ジーク「答えられることであれば…」
(胃が痛い…助けてくれ……)
クリフ「君は、私の息子。クリウスを知っているか?」
ジーク「…え?」
それは予想外の質問で、思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、慌ててジークは口を塞ぐ。
クリフ「知らないみたいだね。…やはり、本名で活動してる訳では無さそうだ。では、私と同じ白髪の青年を見たことは?まぁ私のは年によるただの白髪だけどね。」
そう言いながら、クリフは苦笑いをする。
ジーク(どう反応しろと!?)
「い、いや見てないです…」
ジークがそう答えると、クリフは顎に手をあて考え込む。
クリフ「…城内の警備の強化を。」
扉前に待機していた兵士「はっ。」
クリフ「ジーク君と言ったね。少しお願いがあるんだが…。」
ジーク「は、はぁ…。」
クリフ「もう少しここで、好きなことをしてていいから、しばらく居てくれないか?人質になって欲しい。」
ジーク「それって拒否出来るものじゃないですよね…?」
クリフ「子供に人質になれと強制するのは私の趣味じゃないんだ。だからお願いをする。息子と会うには、人質が必要なんだ。頼む。」
ジーク「…あのせめて一連の流れを…」
クリフ「…そうだな。君が停止させようとしていた装置。アレ自体は偽物だ。しかし、その停止方法は本物だ。…あの停止方法は本来、王族だけが知っているはずだった。」
ジーク「…はず…?」
クリフ「アレを作ったのは、私の娘。第1王女であるローズ・アルド・トーチアスだ。娘が一から設計から作成まで行った世界で一つだけの研究作品だった。君はどうやってアレの停止方法を手に入れたか覚えているか?」
ジーク「…あの装置はもう1台あって…それで…」
クリフ「そうだ。本来門外不出になるはずだった設計図。それを私の息子、クリウスが外に持ち出した。だから、全く同じ装置が2つこの世に存在する。しかし、こちらの装置が門外不出なのは変わらない。」
ジーク「…なら、全く同じってことを知ってるのは…王族しかいない…?」
クリフ「ああ。どこかで君が、クリウスと関わってるのは間違いないだろう。君を責めているわけじゃない。あの子は賢い。本当に、私よりも。見抜く方が難しいだろうな。これで納得出来ただろうか。話したいことが有り余るほどにあるのだ。どうか頼まれてくれ。…必ずクリウスはここに戻ってくる。」
ジーク「…仲間に連絡は…」
(いや…誰か分からないから連絡は出来ないか…。せめて、アリィだけにでも…)
クリフ「協力してもらえるなら、できる限り連絡は控えてもらいたい。本当に賢い子だから勘づかれる可能性が高い。」
ジーク「…分かりました。」
(いいえなんて言えば、あそこの兵士に首を飛ばされそうだし…。さて…どう気づかれず連絡したものか。)
クリフ「感謝する。あまりいいものは出せないが、これも食べてくれ。」
そう言って更にクリフはテーブルの上に、お菓子を追加する。
ジーク「…あの、自分大人しく出来るので…お菓子とかは別に…」
クリフ「いやこれ私が食べてもらいたいだけ。皆恐れ多いだとさ。この老いぼれを慰めると思って。」
ジーク「…はぁ…。」
追加されたお菓子をジークは口に運ぶ。
ジーク「…美味しいです。ご自身で作ったんですよね…?」
クリフ「ああ。確かに君の疑問通り、私は自分で作らなくても作ってもらえるんだけどね。王妃が、自分で色んなものを作るのが好きだったんだ。その影響で私も好きでね。美味しいと言って貰えて嬉しいよ。」
ジーク「…最後に一つだけ…失礼を承知の上で、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
クリフ「答えられる範囲であれば。」
ジーク「…ローズ殿下は…その…」
クリフ「…既に亡くなっている。だから、おおよそクリウスの目的は掴めている。先程警備を強めた。見つかるのも時間の問題…いや彼らは優秀だから、もう見つけているかもしれないな。」
ゲティア「クリウス殿下、貴方様の帰城を心よりお待ちしていました。」
ゲティアは冷たい床に右膝をつき、心臓に右手を当てた。