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「いやですよもう。俺みたいな矮小者が、王族に間違えられるなんて恐れ多いですって!」
そうキールは答えた。
ゲティア「…ええ。確かに、髪色も瞳の色も何もかも違います。」
キール「そうですよ、もう!兵士さん疲れてんじゃないです?んじゃ、俺は目的は果たしたんでトンズラさせてもらいますね〜。」
ゲティア「…クリウス殿下、貴方の目的はローズ殿下に再会することだったのでしょう?髪色も、瞳の色も違う。ですが、殿下の行動は、殿下の想いは誤魔化せません。」
キール「兵士さまって頑固なんすね。そんな非現実的なこと言われましても…俺が心配するのもなんですけど、取り違えちゃったりしたらどうするんです?」
ゲティア「…そうですね。確かに頑固なのは認めます。」
(このままじゃ埒が明かないな。…人質か。)
数分前、ゲティアはある知らせを受け取っていた。それは人質の確保に成功したという知らせ。あちこち巡回してる兵士にとって、口だけの連絡は大して時間の要らない作業だった。
ゲティア(最初は見失って…一か八かで来てみればビンゴ…。だからこそ…)
この方法を使いたくはない。ゲティアはそう考える。
ゲティア(…殿下が譲らないのも分かってる。)
ゲティアは大きく息を吸う。
ゲティア「…クリフ陛下がお待ちです。人質が無事でいて欲しくあれば、クリフ陛下に従うのが懸命かと。」
キール「…人質?なんの話…」
ゲティア「名前までは私は聞いてませんが、銀髪に薄青の瞳の少年を人質にしています。お仲間であれば、クリフ殿下の要求に従った方がいいかと。」
キール「…別にもう未練はないし…」
そう言い、キールは腰に携えた剣を抜く。そして、自分の首に当てる。流れ出る血が生きていることを主張する。
ゲティア「おやめ下さいクリウス殿下!!」
(今ここで下手に動いたら殿下の首が…)
ゲティアは青ざめ、言葉で止めようとする。
ゲティア「クリフ陛下の要求はクリウス殿下の首などではありません!ただ、殿下との再会を、会話を望んでいるんです…!!」
そう必死に、悲鳴のように声を上げた。やがてその声は小さくなる。それは、誰にも聞こえないような声で。声はやがて悲痛な懇願へと変貌する。
ゲティア「…もう私の前でそのようなことを…しないで下さい。不躾だとは分かっています…。ですが…私が殿下をどのような思いで…」
キール「…分かった。」
(銀髪に薄青の瞳…間違いなくジーク君だろう。作戦の都合上一番人質にしやすいだろうし、なにより銀髪というのはそう多くない。あの子が、そう簡単に捕まる気はしないが…万が一…。)
キール「…出来れば二度と再会はしたくなかった。父上はどこに?」
ゲティアは喜ぶでも、悲しむでもなく、ただ唇を噛み、
ゲティア「こちらです。」
ただ一言そう告げ、案内を始めた。
ツアィ「名前は?」
ジーク「だから教えませんって!」
ツアィ「えー!どうしても言いたくねぇの?」
ジーク「だからそう言ってるでしょう!」
ツアィ「呼ぶ時困るだろー?」
ジーク「じゃあジャム。」
ツアィ「食べ物じゃねぇか!」
ジーク(たとえ、命を握られてるとしても、王国そのものに名前は教えられねぇよ!!セヌス国と、後から協力することになったらまずい…俺はともかく…アリィが芋づる式に見つかっちまう…。くそっ…本名さえ知られてなければな…。)
ツアィ「俺にだけこっそり…!」
ジーク「ちょこれ、しつこいんでどうにかしてください!!」
ウェシア「めんどくさいから嫌。というか作戦のメンバーには名前を教えてるんでしょ?」
ジーク「それは…まぁ…」
ウェシア「多分、名前を教えるのは嫌なのは王国そのものだからでしょ?私も同じ立場なら教えたくないし。でもメンバーには教えてるなら、クリウス殿下も知っちゃってるんじゃない?」
ジーク「あ。」
ツアィ「なら俺にも教えて大丈夫だろー?」
ジーク「嫌です。あとで誰かわかったら口止めするんで。」
ツアィ「堂々だねー。いいじゃんかよぉ。クリフ陛下とお話してたらうっかりポロっちゃうかもだぜ?」
ジーク「そんなに口の軽いヒトは知り合いにいません。」
ツアィ「手強い…弟がこの前死んじゃった可哀想な俺のために、な?」
ジーク「それは知ってますけど、言いません。俺は貴方の弟じゃないので。」
ウェシア「それ知ってるの超怖いよね。」
ツアィ「それ。普通知るはずのない範囲なのにな。調査したとはいえ、調査しすぎじゃない?」
ジーク「趣味です。趣味。」
(ああもうほんとにしつこい…!これじゃあアリィにだけ連絡ができない…!わざと話しかけてきてるのか…?いや多分違う気がするな…。ウェシアは黙ってるし…。仕方ない…あんまりやりたくなかったが…)
ジークはさりげなく弓に手を触れる。そうして、弓に巻かれた黒いボロ布を千切る。それは酷く簡単だった。そしてそのまま千切れたボロ布をズボンのポケットにしまう。
ジーク(よし…。誤解を生まなきゃいいけど…。)
アノ「これだけ離れていれば大丈夫だろう。」
アマラ「すっげぇ遠くまで来たな…。それで?言いたいことってのは?」
アノ「…確実性のある悪い知らせと、確実性の無い悪い知らせ。どちらから聞きたい?」
アマラ「じゃあその確実性のない話からで。」
アノ「承知した。銀の童の反応が途絶えた。」
アマラ「ジークのことか?」
アノは頷く。
アマラ「お前、それ…なにで感知してるんだ…?アタシが渡した石ではないよな。いや聞いてたかは分かんないけど…」
アノ「石については心得ている。なにか緊急事態が発生した場合に砕き、仲間に知らせる物だろう?石を砕けば、残りの石は砕いた石に引き寄せられる。この娘から聞いている。」
アマラ「知ってるんだな。これは便宜上石と呼んではいるが、生物だからな。再生と分裂を繰り返すだけの感情のない生き物…。これが未だに反応していないのに、そう言った理由は?」
アノ「…銀の童は片時もあの弓を手放さない。故にそれを逆手にとり、この娘はある細工を弓に施している。それ以上は秘密だ。我はこれに一切関与していない。この娘から聞いただけだ。」
アマラ「つまり…弓に異常が生じた…と。」
アノ「このような事が起きたのだ。銀の童は危ないと考えた方がよいかもしれぬ。」
アマラ「でも。確実性のないって言ったってことは…ただじゃ転ばないってことだな?」
アノ「ああ。恐らくこの娘にだけ、分かるようにされたのは…助ける必要はない、恐らく動きを変えるなということだろう。」
アマラ「…分かった。ジークの判断に任せる。最悪、どうしようもなくなったら、石を砕くだろう。それで?確実性のある悪い知らせって?」
アノ「ああ。こっちは至って単純だ。大型の悪魔がこちらに迫ってきている。」
アマラ「……は?」