私は何故か深夜に起きた。
「おはよ、星螺!」
起きると海月が下ろした髪を櫛でといていた。海月の目はきゅるきゅると潤んでいる。人間のものにだんだんと慣れてきた海月は私に抱きついてきた。
「せぇーらぁ!あのさ?引っ張り出してきたんだよね~!!僕ね!お洒落してみたい!」
「海月…?」
急なカミングアウトに驚いた私はつい、にやけてしまった。
「せぇーらぁ?僕ね!僕ね!星螺と同じはーふあっぷ!してみたい!!」
おそろが好きな海月が好きだな。
「はいはい…海月はハーフアップ出来る髪(触手)を持ってるからね。きっと可愛いよ。」
褒める度に海月は海中を舞うときのようにくるくると回った。その姿を見ることができるだけで幸福と言えるのだ。
「星螺!今からお散歩行こーよぉー!」
ほんとに犬系男子だなぁ。かまちょの仕方に不快感を感じない。人間だったら迷わず女子ウケは良好だろうな。いまは夏祭りの会場は前夜祭の片付けで忙しいだろうし、朝はあまり屋台を出している店も少ない。いつも来てくれるキッチンカーも私が外に出る時間から出ているわけが無い。
前夜祭はダンスパフォーマーが主催していた「代官市夏のダンス祭り」が行われていた。今から散歩するにしても、少し寄るところもある。私はすぐに連絡を入れた。
「はぁ…支度して?」
「うんっ!」
そう言うと、海月は真っ先に洗面所に向かった。とたとたと、足音を鳴らしつつ髪を纏める美少女。その無邪気さに癒され堕ちることでしょう。
私はハーフアップにするために髪ゴムを探していた。白いゴムは気品さと清潔感に溢れている。これを着けさせてあげよう。そう心に誓いつつ海月の元に向かった。
「はい、これ。良かったら使ってね」
海月は貸してもらったゴムで丁寧に髪を束ね始めた。
「どー?僕、ちょっとまだ、人間の手に慣れてなくて…下手かも!」
少しはみ出たりしているがちょうどいい具合にふわっとしていて、後れ毛のようにも見える。
「かわいいよ、ほんと…。」
「へ…!?」
褒められると思わなかったのか海月は頬を赤らめた。ちょっと意地悪したくなった。
「でも、似合ってはないね笑」
「んぅ!?なんでそんなことゆーのー!!」
バブみを消さずに生まれてきた。海月は小さな幸せの蕾を膨らませた。心底、そのピュアさには腹が立つ。
「もぉ…今から行くよ?」
「うんっ!」
私と海月は手を握って散歩に出かけた。きっと、海月と今から立ち会う人は歓喜することだろう。二人の反応が楽しみだな。
続く。.:*・゜
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