テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
#恋愛
#大人のロマンス
#イケメン
冬馬先生の執着は、ついに隠しきれないレベルに達していた。
私が少しでも医局を離れれば、彼の鋭い視線が飛んでくる。
他科のスタッフが私に事務的な用事で話しかけることさえ、彼は露骨な不機嫌さで遮ってしまう。
「……海老名さん、ちょっといいかな?」
声をかけてきたのは、医局長のベテラン医師だった。
「最近、君と冬馬先生の距離が近すぎると指摘が入っている。公私混同は、冬馬先生の輝かしいキャリアに傷をつけることになるよ。分かっているね?」
心臓が冷たくなる。
私が彼の傍にいたいと願うことが、彼の「外科医としての正義」を汚している。
その事実は、どんなお仕置きよりも私を打ちのめした。
その日の夜
誰もいない診察室で、私は冬馬先生に別れを
「専属を解いてほしい」と申し出た。
「……先生。もう、お傍にはいられません。私のせいで、先生の評価が下がるのは嫌なんです」
私の言葉を聞いた瞬間、冬馬先生が持っていた万年筆が、パキリと音を立てて折れた。
ゆっくりと顔を上げた彼の瞳には、かつてないほどの漆黒の怒りが宿っている。
「……誰に言われた。あの無能な医局長か?」
「そうじゃありません! 私が、先生の邪魔になりたくないだけです!」
「邪魔……?笑わせるな」
先生はデスクを蹴るようにして立ち上がり、逃げようとする私の腕を掴んで、診察台の上へと押し倒した。
背中に走る硬い感触と、彼から放たれる圧倒的な威圧感。
「お前がいない世界で、俺がまともな執刀ができると思っているのか?」
「……っ、先生は天才です。私がいなくても……」
「お前は何も分かっていない」
吠えるような叫び。
ドSで、常に冷静だった彼の仮面が、今度こそ完全に粉砕された。
彼は私の肩に顔を埋め、まるで壊れ物を抱きしめるように、痛いくらいの力で私を縛り付けた。
「…海老名……俺の許可なく、俺の視界から消えることなど、絶対に許さない」
その声は震えていた。
冷徹な独裁者の顔をした、ただの「愛に飢えた男」の姿。
私は、彼を拒絶することなどできなかった。
彼を狂わせているのは私で、そして彼を救えるのも、私しかいないのだと悟ってしまったから。
「……いいな?」
念を押すように囁き、彼は私の首筋に、今までで一番深く、重い『刻印』を残した。
それは、二人が破滅へ向かっているとしても、もう引き返せないという誓いの儀式だった。