そう。それは確かに「初恋」だった。
枯れた花に水を与え、花に色を戻したのは彼だった。
でも、貴方には別の女がいた。
だから、だから、言ってやったんだ。
その人と付き合うまでなら、夢に浸って見たかったから。
これは、私”花”(はな)の好きな”翠祈”(すいき)という人間に好きな女が出来るまでの短い短編のようなものである。
突然ですが、私は振られた男から告白をされました。
「事実は小説よりも奇なり」なんてよく言いますが、こんなこと小説でも奇なりですよ。
ですが、私も馬鹿な女でした。惚れた弱み…ですかね。それに希望を見出してしまったのです。ですが、条件を出しました。
それが「君に好きな女が出来るまで」という条件です。
彼のことなので、どうせなにかの罰ゲームかなにかでしょう。なら、条件を付けてしまえばいつだって別れられるので彼にとってはメリットがたくさんあったはずです。
彼はその条件を飲みました。
私の気持ちなんて、捨ててもらって構わない。
「付き合った」と言っても特段なにも変わりませんでした。強いて言えば話しかけてくる友人が少し減ったくらいです。
「は〜なちゃん♡」
「…なに?」
よく知らない他人Aが話しかけてきましたが当然塩対応。人を警戒するのは当然でしょう?
「聞いたよ〜?翠祈と付き合ったんだって?」
「まぁ……うん」
この人…なんの話しがしたいんでしょうか?
「翠祈と何か話した?」
「あの日以降一言も喋ってないけど」
「え?」
……?何か変なことでも言ったでしょうか?ただ事実を述べただけなのですが…。
「え?ほんとに言ってる?それ」
「嘘付くならもっとマシな嘘を言うよ」
「……えぇ?うそ……」
…?何この人。
「いや…いきなりごめんね?それじゃ!」
……あの人、何がしたかったのでしょうか?
あの日以降、翠祈の話を聞きに来る人が増えました。理由は分かりませんが全員驚いて帰ります。流石に対応している内に慣れてきてだんだん喋るのが適当になっていましたが今となってはあれが正解です。
そんな日が続き流石にうんざりしていた時の話です。
「ねぇ、花さん。少し時間いいかな?」
あーあ。来て欲しくない人が、ついに来てしまいました。
翠祈の幼なじみの、私から見た「別の女になる予定」の人が来たのです。