テラーノベル
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💚「ここだよ。村上、一人で帰れる?」
まだ22時くらいなのに、阿部先輩は俺を子供扱いする。
阿部先輩のバイト先は、住宅街の中にぽつんと建つ、一軒のコンビニだった。ほとんど街灯もないような場所に、店のネオンだけがぴかぴかと輝いている。まるでここだけ昼間みたいな明るさだ。
🤍「大丈夫です、俺も買い物したら帰ります…あ」
俺は表に貼り紙を見つけた。
🤍「バイト募集してるじゃないですか。俺、ここで働こうかな」
💚「そんな急に」
🤍「今ちょうどバイト探してるんですよ。阿部先輩と働けたら楽しそうじゃないですか」
俺は阿部先輩の制止も聞かず、自動ドアをくぐった。見た感じ、客はいない。ただ1人、飲料売り場の前で店の制服を着た男が腕組みをしていた。
💚「お疲れ様です」
❤️「ああ、お疲れ様」
誰?と目線で合図すると、阿部先輩は小声で店長だよと教えてくれたので
🤍「あ、俺、阿部先輩の後輩で村上真都ラウールといいます。僕をここで雇ってもらえませんか?」
と直球で頼んでみた。
普段は人見知りで知らない人なんかとこんなふうに話すことのない俺だが、少し酒が入っていたのと、阿部先輩をもっと知りたいという一心で出た行動だった。
店長は、一瞬驚いた顔をしたが、俺の申し出を聞くと、優雅にほほ笑んだ。
❤️「裏で話を聞かせてくれる?阿部くん、ここ頼むね」
💚「あ、はい」
❤️「へえ、阿部くんと同じ大学なんだ。頭いいんだね」
🤍「ええ、まあ」
そう答えると、否定しないんだね、と店長は可笑しそうに笑った。
❤️「僕は宮舘といいます。この店の店長です。採用するのは構わないけど、どうしてうちで働こうと思ったのか教えてくれる?」
宮舘さんは、柔和な表情を浮かべてはいるが、やはり店長を任されているだけあってその目の奥には鋭さを隠し持っているように感じられた。なんだか自分がとても子供じみた真似をしたように感じて恥ずかしくなる。酔いもだんだんと醒めてきていた。
🤍「ちょうどアルバイトを探しているんです」
❤️「うちは特別時給がいいわけでもないし、他にもいくらでもいいバイト先はあると思うよ?」
🤍「でも、俺は」
❤️「でも?」
🤍「どうしてもここで働きたいんです。雇ってくれませんか?」
❤️「うーん。どうしようかなあ」
🤍「あのっ、阿部先輩と一緒なら安心だし」
たった一度コンパで会っただけで、大好きになる予感がしている人の名を言うのに勇気がいった。しかし、宮舘さんは俺のその言葉を聞くと、急に態度が変わった。
❤️「採用」
🤍「えっ?」
❤️「いいね。俺、そういうの大好き」
🤍「何がですか?」
❤️「君たちは良いコンビだと思ってね」
🤍「……ありがとうございます」
それからは事務的な話をした。シフトにはどれぐらい入れそうか、とか、夜勤はできるか、とか。履歴書は初出勤の日に持ってくる約束をし、俺は店を後にした。
コメント
6件
舘様が店長のコンビニ 行ってみたいな😊
酔っ払い大学生をその場で面接してくれる店長、好きすぎるwww
こりゃやっぱ惚れとるなラウ