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俺は人免疫グロブリンG。今この身体に注射輸入され、病気の原因となる物を除去するはたらきを担った。
勿論俺以外にも人免疫グロブリンGやlgAなどが同時に注射された。何が原因かはまだよく分かっていないため、これからその源を探し出す。
「そっちは?」
「なにもないっす。」
俺は静脈の血管の中に点滴で点滴静注された。というより俺らが投与される時は大体血管にされる。ということは血管から派生して捜索するという事だろうか。
俺は他のlgG、人免疫グロブリンGと近況を交信しながらも地道に捜索を続けた。
幾つか当たった後、足に違和感が入った。
なんだこれ。腕か?
いや違う。俺はその腕が繋がっている方向を確認した。そこには小さな女の子が傷だらけで息絶えていた。
…俺は気づいてなかったので、急な発展にビビり散らかした。
俺はその女の子が被っていた帽子を見た。
血小板。
傷を治すために血漿と協力してはたらく小さな細胞。
血小板の寿命は8〜12日と言われているので、俺は最初寿命で息絶えた血小板かと思った。だが明らかに傷の量が可笑しい。まるで何かに切り刻まれたようだ。
すると、更に脚を掴まれた感覚を感じた。
俺は下を向いた。いや、元々下を向いていたので首の方向を変えたと言った方が正しい。
目線の先には下半身が切られてなくなったこの血小板の仲間が俺の脚を乱暴に掴んでいた。
俺はこの為に送られてきたのか。このか弱い血小板が危篤状態だから送られたのか。
俺は血小板を帽子越しに撫でた。血小板の表情は変わる事はなかったが、最後くらい温もりを与えた方がいい。
「任せな。兄ちゃん達がやっつけてやるからよ。」
「…」
血小板の目からは徐々に生気が抜けて、口角は少し上がっていた。
「やだ!!!」
奥から急に絶叫が聞こえた。俺は思いっきりその方向に首を向け、仲間に大声で呼びかけた。
「お前ら!!集まれ!!!」
仲間はゾロゾロと集まって、殲滅用の武器を持ち合わせた。
その騒ぎに気づいたのか、俺らが探している根源が自ら姿を現してきた。血小板の腕を掴みながら。
「…なんだぁお前ら。」
「俺らは人免疫グロブリンG、lgGだ!!お前はなんだ!!」
「…おらは抗血小板抗体だ。」
「抗血小板抗体?」
「おらは血小板の数を制御する役割を担ってんだよ。」
「じゃあ血小板を破壊しているのは…」
「この身体の持ち主に害が出ないためだ。」
こいつ、悪いやつじゃないのか?確かに生命活動をやっていくにつれ、血小板は増加しすぎると脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす。
「お兄さん…!こいつ、悪いやつなの…!!」
掴まれていた血小板が叫ぶ。俺は我に返った。
なるほど、俺がここに投与された理由はこの抗血小板抗体のはたらきを弱めることだ。
確かにここには血小板の密度が少なすぎる気がする。抗血小板抗体が数を減少させていったんだ。
「お前うるせえなぁ。ぶっ壊してやるよ。」
「やっ…!やだ!!やだ!!!」
血小板は抗血小板抗体に全身で抵抗する。血小板が破壊される。目の前で尊い一つの細胞が無くなる。俺はそんな事を考えたら耐えられなくなり、抗血小板抗体の腕を無言でぶった斬った。
「…お前よくやってくれたなあああ!!」
抗血小板抗体は血小板を投げ捨て、完全に俺にヘイトが向いた。
細胞には数がある。無論相手もそうだ。俺らは俺ら分の細胞、相手には相手分の細胞がある。
今この状況を把握するのはほぼ不可能と言えるほど、抗血小板抗体と人免疫グロブリンGとの勢力が狭間見える。
俺の仲間が、血小板達を連れていく。安全な所まで。
きっとこいつらは抗血小板抗体と言っているが、やはり自己抗体の一種だろう。過剰に血小板に反応する。自分の仲間であるはずの血小板を破壊する。
ここは総力戦と化した。俺らは抗血小板抗体に特攻した。所詮俺らも一つの成分。果てれば役割は無くなる。
無我夢中で斬り倒した気がする。その間はこの人体に頑張って副作用を耐えて貰わぬ他ない。
俺らは抗血小板抗体のはたらきを弱めて血小板の数を一時的に増やす役割がある。一方で副作用は頭痛、発熱という軽量のものから、アナフィラキシーショック、アレルギーなど、重篤なものもある。やはりメリットデメリットはどの細胞にもある。
俺たちは気づいたら数が激減していて、もちろん相手の抗血小板抗体の体力も底を尽きていた。
これでいいんだ。一時的にこいつらの興奮を抑えるだけ。これからはピロリ菌療法などが使われるだろう。
落ち着いて周りを見てみたが、そこら中に血小板の破壊痕がある事に気付いた。
俺らは任務を終えた。避難させた血小板の方を向くと、様々な個体が様々な様態をとって俺たちを見ていた。
俺らはその後、免疫センチネル細胞のマクロファージに食べられる為、つまり身体に害がないように分解されに、列を成した。
特発性血小板減少性紫斑病、2010年から免疫性血小板減少症。ITP。それは血小板の数が減ることで出血しやすくなる病気。主に血小板が無くなる理由は自己抗体によるものと考えられている。その自己抗体が血小板を脾臓で破壊し、それが続く事で血小板の量が減る。だが何故自己抗体が出来るのかのメカニズムはまだ分かっていない。
指定難病63に指定されている。